シンセミア(下) の商品レビュー
いろんな突拍子もない出来事が起こりまくり、この話は一体どこへ到着するのかと思いながら読み進めていたが、見事に着地。人間の汚い部分がこれでもかとばかりにあらわにされていた。滑稽さにくすっと笑ってしまうこともしばしば。ホラばかり吹いていると思っていた星谷影生が特に印象深い。
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最後の方はほとんどの関係者が死んでしまったか、懲役か警察を退職などであった。残ったのは夫婦、子どものせわをする女性、整形でもどった金森、タヌキと星谷の年配者の面々であった。おどろおどろしい小説である。ただ、山形という場面がどころどころ出てきただけでそれほど山形の小説か、といわれる...
最後の方はほとんどの関係者が死んでしまったか、懲役か警察を退職などであった。残ったのは夫婦、子どものせわをする女性、整形でもどった金森、タヌキと星谷の年配者の面々であった。おどろおどろしい小説である。ただ、山形という場面がどころどころ出てきただけでそれほど山形の小説か、といわれると戸惑う部分もある。
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2004年に、第15回伊藤整文学賞小説部門、第58回毎日出版文化賞第1部門を受賞。 どこかからのラジオと洪水が繋がった時に不穏はさらに広がり,やがて様々な装置により物語は一気に沈む。爆発に始まり爆発に終わる,そんなくだらない神話が楽しくてしょうがないのだ。 現代は監視されてい...
2004年に、第15回伊藤整文学賞小説部門、第58回毎日出版文化賞第1部門を受賞。 どこかからのラジオと洪水が繋がった時に不穏はさらに広がり,やがて様々な装置により物語は一気に沈む。爆発に始まり爆発に終わる,そんなくだらない神話が楽しくてしょうがないのだ。 現代は監視されていない人など存在しないほどの情報社会,本書の「ビデオ撮影サークル」の末路は示唆に飛んでいる。戦後日本の落とし子は今なお脅威を保ち続けている。
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※このレビューにはネタバレを含みます
なんだこれは。神の力か。 でも討ち漏らしてる。 やるならしっかり殲滅してください…。 でもこの終わり方は逃避なような気もするよ。 終わらせようがなかったから全滅エンドみたいな。
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阿部和重のシンセミアは良いらしいという評判は耳にしていたし、いざ読めば「なぜもっと早く読んでおかなかったのだろう」という感想を持つ予感はしていた。読んでみて、まさにその通りの感想を持ったのだが、予感していた水準を超えていた。 たとえば独裁社会を舞台にせずともここまで息苦しい状況...
阿部和重のシンセミアは良いらしいという評判は耳にしていたし、いざ読めば「なぜもっと早く読んでおかなかったのだろう」という感想を持つ予感はしていた。読んでみて、まさにその通りの感想を持ったのだが、予感していた水準を超えていた。 たとえば独裁社会を舞台にせずともここまで息苦しい状況を描くことが出来、幻想の力を借りなくともここまで魔的状況を現出させることができる。それらを、ごくニッポン的な、街角のスーパーマーケットやスナックなどのありふれた風景のなかで描き切る、そのことに何ゆえか感動してしまう。
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この突飛さはひとつ間違えばついていけない作り話になりそうだが、緻密などろどろしたもうひとつの一つの現実を作り出してしまったのがこの作品。 幾種もの狂気が重層をなし東根市神町を包んでいる。
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すごく完成された物語だった。上巻は寝る前とかにちょこちょこ読んでたが、下巻は一気に読んでしまった。 田舎特有の閉塞感がものの見事に滲んできて、嫌な感じがするものの、話の中に引き込まれていってしまうというか、目が釘付けになってしまうというか。 荒唐無稽といってしまえばそこまでだけど...
すごく完成された物語だった。上巻は寝る前とかにちょこちょこ読んでたが、下巻は一気に読んでしまった。 田舎特有の閉塞感がものの見事に滲んできて、嫌な感じがするものの、話の中に引き込まれていってしまうというか、目が釘付けになってしまうというか。 荒唐無稽といってしまえばそこまでだけど、村山弁の会話とともに進む、神町の話にはなんとなく説得力があった。なまじっか知っている土地の知らない話だった分、おもしろさもひとしおだった。 でも、この閉塞感は神町じゃなくても田舎ならどこにでもあるような、そんな気がしてしまう。 のどかな田園風景の中に異物があるというか、だからこそ利権に食らいつく人々がいるというか。目立つということなのかもしれない。麻薬とか、暴力とか田舎に似つかわしくないイメージがあるものの、その違和感が逆にリアルだった。 田舎で事件が起きるのは、やはり着火点に外部からの来訪者があるのだなと再認識。
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上下巻、1か月以上かけてやっと読了。たいそうカロリーの高い作品ではあったし、ストーリーテリングは巧みではあるが、世界観が好きになれなかった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
少しずつ読もうと思っていたけれど、7時間一気読みしてしまった。 洪水で発見される死体、パン屋の受難から終盤、主要人物ほとんどが同じ運命を迎えることによって神町に安定が訪れる。 女に殺される男がやけに多いのは、何かの示唆だろうか。 隈元のおばあさんの話がむごい。熊女→隈元という連想か。
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なん年かまえの夏休みに山形県を縦断するように温泉地巡りをしたのだが、山形市から国道13号を北上する途上、突如ナビ上に「神町」が現れ、「おぉッ」と嗚咽に近い感嘆をもらしたのを思い出す。『シンセミア』は架空の「神町」を舞台として繰り広げられる群像劇だと位置づけられる。また、ガルシア=...
なん年かまえの夏休みに山形県を縦断するように温泉地巡りをしたのだが、山形市から国道13号を北上する途上、突如ナビ上に「神町」が現れ、「おぉッ」と嗚咽に近い感嘆をもらしたのを思い出す。『シンセミア』は架空の「神町」を舞台として繰り広げられる群像劇だと位置づけられる。また、ガルシア=マルケス『百年の孤独』などの世界的名著とも対比される「民俗学的視点」なるもので評価される向きもあるようだが、ソポクレス『オイディプス王』に見られるような「犯してしまった禁忌」の根源を手繰り寄せるミステリー的手法も援用されており、劣情を煽る性描写が渾然一体となって、壮大な物語は「小さな復讐」へと収束していく。登場人物が多いことが特徴として語られる本書だが、彼らが「神の意志」なるものに従順なようでいて好き勝手に動くさまは痛快で、結局のところ、「観念論」などというものを振りかざさずともひとは良く生きれるのではないか、と思えてしまう。それでいて、阿部和重は突飛かつ奇異な状況下でも平常心を保つように情景描写に逃げず、ひたすら論理的に登場人物の感情を積み上げる。それは情報の溢れ返る「いま」という時代を所与として置き、好悪の評価を定めず、(「立身出世」や「自分探し」をはじめとする)奸智に富んだ他者の言に惑わされず、自発的に生きてゆこうという提案にも映る。「先が見えない」という現状認識は、90年代後半に青年期に入った阿部和重をはじめとした僕らの世代に共通だと思うが、「刹那」に訴えて単純消費的な行動に逃げるという構造は間違いなく破綻している。最小限の「スコッド(Squad)」として家族を守ることが本書のラストなのだが、僕らはさらに歩みを進めるべきではないだろうか。
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