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漂流記の魅力 の商品レビュー

3.8

16件のお客様レビュー

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2023/09/28

江戸時代の漂流船・若宮丸の記録。漂流記と言えば大黒屋光太夫の話が有名だが、それ以外にも多くの漂流民がいた。運よく日本に帰還できた人がその様子を伝えているが、これもその一つ。苛酷な旅の中で、自分の今後を悲観的に見る者、現地に順応する者、帰国への希望を捨てない者等様々な人生が語られる...

江戸時代の漂流船・若宮丸の記録。漂流記と言えば大黒屋光太夫の話が有名だが、それ以外にも多くの漂流民がいた。運よく日本に帰還できた人がその様子を伝えているが、これもその一つ。苛酷な旅の中で、自分の今後を悲観的に見る者、現地に順応する者、帰国への希望を捨てない者等様々な人生が語られる。 当時の状況は、現代とは比べ物にならない位厳しかった。江戸時代の漂流記を読むと、自分が同じ立場だったらどうするかという事をいつも考えさせられる。

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2022/10/06

吉村昭氏の作品が好きなのは、徹底した取材と調査に基づくドキュメンタリーだから。 野村長平のサバイバルを描いた「漂流」から本書に繋がって、飛行機移動中に読了。 鎖国時代に漂流し、予期せぬ異国暮らしと世界一周をした若宮丸のそれぞれの人生。それを吉村昭氏の作品から知る21世紀の我々。ド...

吉村昭氏の作品が好きなのは、徹底した取材と調査に基づくドキュメンタリーだから。 野村長平のサバイバルを描いた「漂流」から本書に繋がって、飛行機移動中に読了。 鎖国時代に漂流し、予期せぬ異国暮らしと世界一周をした若宮丸のそれぞれの人生。それを吉村昭氏の作品から知る21世紀の我々。ドイツのホテルの窓から海に繋がる川を眺めて、不思議な心持ちがする。それが吉村昭氏の後世に書き残したかった事なのかもしれない。

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2021/12/08

日本の難破漂流船についての作品が何作もある著者の新書ノンフィクション。 仙台から江戸に米を輸送する船が難破漂流し半年後にロシアに漂着し、多くの苦難の末、十数人の乗組員のうち4名がロシア大陸を横断し、さらにロシア船で大西洋・太平洋を巡り長崎から仙台に帰りつくまでの記録。 仙台藩...

日本の難破漂流船についての作品が何作もある著者の新書ノンフィクション。 仙台から江戸に米を輸送する船が難破漂流し半年後にロシアに漂着し、多くの苦難の末、十数人の乗組員のうち4名がロシア大陸を横断し、さらにロシア船で大西洋・太平洋を巡り長崎から仙台に帰りつくまでの記録。 仙台藩の蘭学者が詳細な聞き取り記録を残していてそれをもとにしている。 ロシア皇帝はこの少し前に有名な大黒屋光太夫を日本に送り返して幕府に感謝されたので、次はこれを交易のきっかけにしようと漂流民を送りとどける。 長崎でこれに対応したのがなんと江戸から送られてきた遠山の金さん! この漂流民4人は日本人で初めて世界一周した人たちということになる。 著者の漂流小説も読んでみたくなった。

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2021/07/03

半歩遅れの読書術漂流記の不思議な磁力 町田康 俺もおまえも漂民だ、と思う 2021/7/3付日本経済新聞 朝刊 若いときから今にいたるまで流されるまま漂うように生きてきた。その時々の目標がなかったわけではなかったが、その都度、予期しないアクシデントに見舞われ、あらぬ方向に漂い出す...

半歩遅れの読書術漂流記の不思議な磁力 町田康 俺もおまえも漂民だ、と思う 2021/7/3付日本経済新聞 朝刊 若いときから今にいたるまで流されるまま漂うように生きてきた。その時々の目標がなかったわけではなかったが、その都度、予期しないアクシデントに見舞われ、あらぬ方向に漂い出すということを繰り返してきたのである。 そのせいか昔から漂流記が好きでいろんな漂流記を読んだが、なかでも井伏鱒二の『漂民宇三郎』(講談社)は、どえらい非運と極度に乾いた筆致が対照的でおもしろかった。普通、これほどの運命の転変があれば、多少なりとも体温や脈拍が上がるし、逆に冷徹なカメラに徹すれば、その冷たさ・無人情ぶりが際だって、戦慄することはあっても笑うことは少ない。 しかるにこれにあっては、乾いていながら暖かみがあり、絶妙に歪(ゆが)んで仄暗(ほのぐら)いレンズによって切り取られた風景や人情には悲しさとおかしさが同時にあって哄笑(こうしょう)を誘い、その人間の有様(ありさま)をいつまでも忘れられない。 ただ問題があるのは、下手くそな小説を書いている自分にとっては、これが面白すぎて、「こんなのが既にあるのだから今更、小説など書く必要はない。俺は今後は覆面を被って押し入れに入って震えていよう」と思ってしまう点で、だからこれはあまり読み返さない。 それに比べると吉村昭『漂流記の魅力』(新潮新書)はよくて、これを読んで押し入れに閉じこもるということはない。というのはでもこの本が劣っているからではなく、これは長い間、漂流記を題材にして小説を書いてきた作者が、そもそも漂流記とはどういうものかを、西洋の海洋文学との対比や当時の世界情勢に照らして説明、また、寛政5年11月石巻から江戸に向けて出港、時化(しけ)に巻き込まれてアリューシャン列島に漂着した「若宮丸」遭難のあらましを、より一歩引いた、というのは小説的な肉付けをすべてなくした、さらに乾ききった文章で綴(つづ)ってあるからである。 でありながら無味乾燥にならず、不思議な磁力を以(もっ)て、読者を惹(ひ)きつけるのは、ことさら受けを狙うでなく、というか、そういうものから距離を置こうとする強い意志が作者の文章にあるからである。 先の見通せない昨今、不安にかられ過度に悲観的になる人が多いようだが、このような人の振る舞いを読むと、人の一生はいつでもどんなときでも先行きが見えないものだということを再び確認できる。俺もおまえも漂民だ、と野坂昭如的に思うのである。 (作家)

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2021/06/26

少し前BSで鳥島に漂着した江戸時代の漁民の話を追って、鳥島に行く番組をみて、漂流に興味が湧き読んでみた。おもしろい。吉村氏の漂流ものの小説を読んでみたくなった。 この本では、1793(寛政5)に石巻を出航した「若宮丸」が漂流の末、カムチャッカ列島に流れ着き、ロシアの役人によって...

少し前BSで鳥島に漂着した江戸時代の漁民の話を追って、鳥島に行く番組をみて、漂流に興味が湧き読んでみた。おもしろい。吉村氏の漂流ものの小説を読んでみたくなった。 この本では、1793(寛政5)に石巻を出航した「若宮丸」が漂流の末、カムチャッカ列島に流れ着き、ロシアの役人によって保護されロシアのポーツマス、ヤクーツク、イルクーツクに行き、果ては時の皇帝アレクサンドル一世に謁見し、レザノフの日本行きに合わせて同乗し、日本に戻ってきた経過を述べている。 日本では漂流民が帰ってくると、キリスト教に改宗していないかなど厳しく取り調べ、聞き取りをして報告書を著すことになっていた。この「若宮丸」については「環海異聞」という題で大槻玄沢が著している。また口述筆記についても「北辺探事」がある。 若宮丸に関しては乗組員16人中、帰還したのは4人。漂漂着してから病気などで亡くなったり、またロシアで日本語を教える教師として残り、ロシア人女性と結婚した人もいた。 海流に関して、若宮丸は石巻から江戸へ米を運んでいたが、日本の船は沿岸を航行するようにできており、嵐に合うと沈まないために、荷物を海に捨て船体を軽くし、マストを折る、そして太平洋の黒潮に乗って漂うことになる。すると北上するとアリューシャン列島あたりに流れ着く。多くの船が流れ着くが、島の人に殺されたりする場合もあり、日本に帰還できるのはごくまれな事だったとある。 また若宮丸が遭難した寛政、1700年代、ロシアは日本と交易をしたいと思っていて、そのために漂流民を日本語教師にし、イルクーツクには日本語学校を作った。また交易交渉の際に、漂流民も手厚く扱ったことを日本に示すため、漂流民に対しては保護政策をとっていたとあった。 この若宮丸で戻った4人も、なかなか石巻に帰れず、長崎での調べの時に自殺を図った者などがいて、なかなか厳しい人生だった。 この時点までに吉村氏は漂流を題材にした小説を6冊書いたとあった。 〇1976刊「漂流」1785遭難・土佐の松屋儀七船(五人乗)、太平洋の無人島鳥島に漂着 長平一人が12年目に江戸に帰還 〇1982刊「破船」 難破船を岸で待ち受けその船から略奪する村。 〇1999刊「アメリカ彦蔵」1850遭難・摂津国「水力丸」アメリカ船に救助され彦蔵がアメリカで教育を受け戻る。 〇2000刊「島抜け」1845種子島に罪人として流されていた講釈師瑞竜ほか3人が島抜けして漂流し清に漂着。 〇2003刊「大黒屋光太夫」1782遭難・伊勢国「神昌丸」アリューシャン列島に漂着。光太夫ほか2名が遣日使節ラクスマンとともに蝦夷に帰還。      あと1冊がわからない   1982刊「脱出」? 第二次世界大戦終末、突然のソ連参戦で宗谷海峡を封鎖された南樺太の一漁村の村人の、危険な脱出行を描く とあるが。 2003.4.10発行 図書館

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2020/01/01

記録文学・小説ではなく新書として著者の作品を読むのは新鮮。同じ島国であるにも関わらず、イギリスに多く日本にはない海洋小説の背景分析と、自らの力ではないが日本最古の世界一周録を紹介する内容。漂流に至るプロセスやその対処法、その後の顛末などに触れており、海や異国の地の過酷さを追体験で...

記録文学・小説ではなく新書として著者の作品を読むのは新鮮。同じ島国であるにも関わらず、イギリスに多く日本にはない海洋小説の背景分析と、自らの力ではないが日本最古の世界一周録を紹介する内容。漂流に至るプロセスやその対処法、その後の顛末などに触れており、海や異国の地の過酷さを追体験できる。他の漂流小説を読んでから手に取るべき作品。

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2016/10/31

1793年、仙台から江戸へ向かった帆船、若宮号は途中で暴風雨により遭難。オホーツク海を北へ流され、たどり着いたのはロシアの東端。船員たちは極寒地で凍傷に倒れる者もいれば、ロシアへの永住を決意する者もいたが、それでも4人が帰国を訴え、ロシア皇帝と面会する。 そして、彼らは陸路で西...

1793年、仙台から江戸へ向かった帆船、若宮号は途中で暴風雨により遭難。オホーツク海を北へ流され、たどり着いたのはロシアの東端。船員たちは極寒地で凍傷に倒れる者もいれば、ロシアへの永住を決意する者もいたが、それでも4人が帰国を訴え、ロシア皇帝と面会する。 そして、彼らは陸路で西へ向かう。モスクワを経由し、ロシア西端から船で地中海、大西洋、太平洋を横断して、日本の長崎へ到着。その間10年。おそらく、初めて世界を1周した日本人だろう。 そんな奇跡のような冒険を4人の帰国者から聞き取った文書が残されていたことを著者は紹介。日本にも「ロビンソン・クルーソー」に匹敵する漂流記があったのだ。

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2016/06/12

吉村昭氏は、子どもの頃から、漂流記に興味を持っていたとあとがきに記している。私も、これまでに、漂流、破船、大黒屋光太夫、アメリカ彦蔵などの小説を読んできた。そして今回、漂流記の魅力を読むことができた。漂流記の魅力は、日本に限らず、ロビンソンクルーや白鯨など欧米の海洋小説はベストセ...

吉村昭氏は、子どもの頃から、漂流記に興味を持っていたとあとがきに記している。私も、これまでに、漂流、破船、大黒屋光太夫、アメリカ彦蔵などの小説を読んできた。そして今回、漂流記の魅力を読むことができた。漂流記の魅力は、日本に限らず、ロビンソンクルーや白鯨など欧米の海洋小説はベストセラーとなって、人々に読まれてきた。その魅力は、ほとんど助かることがない境遇のなかで、いかに人間が闘い、生き抜ける力を持っているかが試される世界が描かれるからなのだと思う。そこには、不屈の精神や体力が大きくものを言うが、それだけでなく、鎖国政策にあった日本にとって、心の支えとなる宗教(キリスト教)に委ねることは、2度と故国の地を踏めないことを意味すること(発覚すれば斬首)となるからだ。こうした時代に翻弄されることがたまらないのかもしれない。

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2015/01/06

日本は島国だから昔から多くの人が船で海に出たり、海から外国人が漂流してきたりした。 漂流記はまさに文学なのである。

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2013/08/31

古本で購入。 漂流を題材にした小説を6篇書いてきた吉村昭が、「日本独自の海洋文学」である漂流記について語る。 新書創刊のラインナップにこれを入れてくる新潮社はなかなか渋い。 イギリスには多くの海洋文学としての小説・詩が生まれた。 しかし同じ島国の日本には存在しない。それはなぜ...

古本で購入。 漂流を題材にした小説を6篇書いてきた吉村昭が、「日本独自の海洋文学」である漂流記について語る。 新書創刊のラインナップにこれを入れてくる新潮社はなかなか渋い。 イギリスには多くの海洋文学としての小説・詩が生まれた。 しかし同じ島国の日本には存在しない。それはなぜか。 理由は船の構造・性格の違いによると、吉村は言う。 西洋の外洋航海用の大型帆船と違い、日本の船は主に内海航海用だった。一般に「幕府が鎖国を守るために外洋航海のできる船の建造を禁じた」と言われるが、実際はそのような禁令はなかったらしい。日本に外洋航海用船がなかったのは、「必要なかったから」だそうだ。 物産豊富な日本は国内の流通で事足りた。外洋に飛び出す必要がなかった。 このあたり、物産・労働力ともに豊かだった宋代中国が、ついに産業革命に至らなかった(必要がなかった)という話に少し似ている。 ちなみに、イギリスでコークス製鉄法が発明される700年以上前に、中国ではコークスによる製鉄が行われていたのだとか。 閑話休題。 陸地を視認しながらの航海とは言え、太平洋は恐ろしい海だった。それは南から北へ列島沿いを流れる黒潮のせい。急変する天候により遭難し黒潮に乗った船は漂う。運よく異国の地に流れ着いたとしても、病などで次々に船乗りが死ぬ。 奇跡的に帰国を果たした彼らの体験を、選りすぐりの学者が聞き取った記録こそ、日本の誇る「海洋文学」なのだ。 『北槎聞略』『時規物語』『蕃談』『東海紀聞』『船長日記』… 数ある漂流記の中で著者が紹介するのが、寛政5年(1793)に石巻を出港して江戸へ向かった若宮丸乗組員の体験を記録した『環海異聞』。 若宮丸は天候の激変で遭難、アリューシャン列島にたどり着く。ロシア人に保護された船乗りたちのその後はドラマチックの一言。 オホーツクからシベリアを越え、帝都ペテルブルグに至る。漂流民を送り届けることで江戸幕府の心証を良くし、交易に繋げたいと目論む皇帝を始め政府高官に手厚く遇され、帰国の途へ。大西洋を渡り南アメリカ大陸の南端を過ぎ、太平洋を横断、ついに日本の土を踏む。この間、約10年。 ロシアでの長きにわたる生活の中である者は死に、ある者はキリスト教に改宗してロシアに留まり、ある者は日本人として初めて世界一周を果たした。帰国を望む者とロシアで日本語教師となり裕福な暮らしをしようと願う者の確執、各地で見聞した貴重な体験など、『環海異聞』は特異な記録文学として光を放つ。 吉村作品、次は漂流モノを読んでみようか。

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