あ・うん 新装版 の商品レビュー
年齢を重ねた時に読み返したくなる一冊。 年齢や立場によって、夫婦だったり、その子どもであったりと、魅力的な登場人物に重なる心が変化するのを実感できる。 電子ではなく、紙で持っておきたい作品です。
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「~なのに~」という矛盾を静謐に表現した恋愛小説だと感じました。嬉しいのに悲しい、好きなのに嫌い、またその逆もしかりで、テーマは少女漫画のようでもありますが、それらと違う明確なポイントは未完結な恋愛関係の中で描いていないことに尽きるかと思います。 具体的にかくと「最後、誰と誰が...
「~なのに~」という矛盾を静謐に表現した恋愛小説だと感じました。嬉しいのに悲しい、好きなのに嫌い、またその逆もしかりで、テーマは少女漫画のようでもありますが、それらと違う明確なポイントは未完結な恋愛関係の中で描いていないことに尽きるかと思います。 具体的にかくと「最後、誰と誰がくっつくんだ?」というテーマはありません。仙吉、門倉、たみの中心人物三人は、皆が皆それぞれの内に秘めた好意に気づいた上で、大人の三角関係を粛々と続けます。この小説のすごい所はまさにここで、そんなガラス細工のような関係性を崩すことなく、いじらしくも焦れったく表現しきったところかなと思いました。 個人的には今まで読んできた小説でトップ5に入るくらいに面白いです。というのも、こんなにキャラクターの生き生きとした姿が想像できた小説は個人的にありません。向田邦子さんはすごいです、一つ一つの短い会話や間、ちょっとしたやり取りだけで、魔法のようにキャラクターを動かし、読み手をぐんぐんこの世界に引き込んでくれます。 この小説の面白さは一章一章のオチの付け方の上手さも一役買っていると思います。章の中で本筋とは違う動きをするキャラがちょくちょく現れるのですが、それがフリになって最後、本筋のオチと絡んで終わる、といった具合で文章の据わりも良いです。 ただ、確かに心情が察しにくいところはあります。大前提、戦前を舞台にした小説なので時代背景が現代とはまるで違います。文中に盧溝橋事件の話が出てくるので1930年、昭和10年台の話でしょうか。 なので、今時の男女の関係性やモラルでこの小説にある会話や心情を紐解こうとすると訳が分かりません。冒頭書いた少女漫画みたいなコンテキストで読もうとすると「なんでたみは仙吉の元を離れないんだ?」とか「なんで仙吉は門倉の気持ちがわかって追及しないんだ」とか気になってしょうがないと思います。(そこに絶妙な面白さがあるわけですが・・・) 当時の背景が全く察しもつかないのであれば、「一家の主は父で一番偉い、男が偉い、女は男を立てる、金持ちで仕事のできる男ほど妾がいた」くらいの時代が想像さえできれば、この小説にあるやり取り理解できるかもしれません。そういう負荷を感じてでも読むべき一冊だと私は思います。
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ちょっとこれは人物設定や価値観がほとんど理解できないな。千吉、たみ、門倉、それぞれの動機や心情が実感できず、何をもってその行動に結びついたのかに共感できず。戦前という時代設定を差し引いてもちょっとありえない設定なのではないかな。 退屈しながらどうにか最後まで読み通した。
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これはたぶん、学生の頃母に買ってもらったかうちにあった本。 読みかけて面白くなくてずっとそのままだった。 おそらく30年以上経って読んだ。 これは今読んで良い本だった。50歳の私。 そう思うと母の本だったのだろうか…。
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テレビだか映画だかで、ちょこちょこ見ていた作品。 今回しっかりと読んだ。 こういう話だったのか。 なんか話が断片的に進むのは、テレビの脚本がベースで書かれているから? 女性(向田邦子)からみた男の友情、または今どきで言えばおっさんずラブに萌えている感じでしょうか。 水田が惚...
テレビだか映画だかで、ちょこちょこ見ていた作品。 今回しっかりと読んだ。 こういう話だったのか。 なんか話が断片的に進むのは、テレビの脚本がベースで書かれているから? 女性(向田邦子)からみた男の友情、または今どきで言えばおっさんずラブに萌えている感じでしょうか。 水田が惚れた女だから好きなんでしょうよ。 水田がいなければ、好きにならないよ。 せっかく向田邦子が素敵な男女の三角関係を描いたというのに冷ややかに読んでしまった。
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きっと今読んで思った感想と、数年後にライフステージが変わって読んだ時と感じ方が全く違うんだろうなって思う。今はむむむって思う内容にびっくりして飲み込むのに時間がかかったって感じ。蓋で閉じ込められた日本の社会を見た気がする。
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現代人ではこうはいかないだろう。 深い思いを持ちながら数十年、ある意味男気があるふたりだと思った。 どの立場にたっても辛いと想像できるが門倉と仙吉の友情を軸にじとっとした重さを感じさせない物語だった
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「向田邦子」の長編作品、『あ・うん』を読みました。 神社の鳥居にいる一対の狛犬のように親密な男の友情と、親友の妻への密かな思慕を描いた作品です。 放送作家出身の「向田邦子」の作品らしく、章立てが連続ドラマの一話一話のようになっていて、読みやすかったですね。 主人公の三人が微...
「向田邦子」の長編作品、『あ・うん』を読みました。 神社の鳥居にいる一対の狛犬のように親密な男の友情と、親友の妻への密かな思慕を描いた作品です。 放送作家出身の「向田邦子」の作品らしく、章立てが連続ドラマの一話一話のようになっていて、読みやすかったですね。 主人公の三人が微妙なバランスを保ちながら生きている姿は、読み手としてはとても楽しめましたが、、、 もし自分が当事者のうちのひとりだったとしたら、きっと、耐え切れないだろうなぁ… と感じました。 太平洋戦争直前という時代背景もあるのでしょうが、複雑な愛情関係があるにも関わらず、三人の関係がドロドロしてなくて素敵な作品に仕上がっていると思いますね。 少し時間を置いてから再読するのも良さそうです。 二匹で一対になっている狛犬ですが、口をあけているのが「阿(あ)」、閉じているのが「吽(うん)」という名前なんだそうです。 本書を読んで初めて知りました。
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文章を読んでいながら、映像がとても鮮明に見えてくる。バタバタと屋敷が立ち上がり、照明や家具、登場人物の動きからニオイまでが分かるよう。 私は平成生まれで、当然物語の時代のような生活は経験していない。それでも自然に生活が見えてくるような、適切で明るい日本語に引っ張られていく感覚で読...
文章を読んでいながら、映像がとても鮮明に見えてくる。バタバタと屋敷が立ち上がり、照明や家具、登場人物の動きからニオイまでが分かるよう。 私は平成生まれで、当然物語の時代のような生活は経験していない。それでも自然に生活が見えてくるような、適切で明るい日本語に引っ張られていく感覚で読み切った。 向田さんの人間観察力が優れているからだろうか。 不思議だが実はどこにでもあるような人間関係、微妙な心をはっきり表現している。 私の(社会の)常識では完ぺきアウトな展開も、なんだか笑い話になって落ちきらず、再び生活が続いていくところが面白い。
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ずーっと気になっていた本。 最近、テレビで見て面白かったのでついに読みました。 他の作品も読んでみたい。
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