イスラーム生誕 の商品レビュー
この作品はイスラーム教とはそもそも何なのかということを幅広い視点から見ていく名著です。 伝統的な部族社会が強固であったアラブにおいて、ムハンマドがいかに革新的なことを行ったかがわかります そして過酷な自然環境や戦闘が日常茶飯事だった生活。それらがいかにアラブの人たちのメンタリティ...
この作品はイスラーム教とはそもそも何なのかということを幅広い視点から見ていく名著です。 伝統的な部族社会が強固であったアラブにおいて、ムハンマドがいかに革新的なことを行ったかがわかります そして過酷な自然環境や戦闘が日常茶飯事だった生活。それらがいかにアラブの人たちのメンタリティーを形成していたのかも知ることができます
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本書で示されていたクルアーンの節の箇所と、実際のクルアーンの一説の箇所が一致していなかったのが気になったが、本当に面白かった!ムスリムの内的状況の分析と、それの表現がとても分かりやすくて素晴らしかったし、イスラームで使われている、アスラマ、タクワ、ジャーヒリーヤなどの言葉がジャーヒリーヤ時代にも使われていて、それがイスラムのどのような違いで使われていたのか知ったのも面白かった。アッラーはジャーヒリーヤ時代にも存在していた神様で、その時代の、それぞれの部族の神々をいわゆる統括するような、最高神のような存在であった。日々の小さなお願い事などは、アッラーの下の部族の中で信仰されている神様に祈るが、命の危機など、重大なときにアラブのベドウィンたちはアッラーに祈っていたみたい。 5行のうちの一つであるイスラームのハッジの巡礼も、ジャーヒリーヤ時代にも存在していて、巡礼月になると、全ての部族がカアバ神殿へ集まっていたそう。当時は、そこにそれぞれの部族の神々が集結していて、巡礼月になると周辺の諸部族が集まり、祈りを捧げ、その時は、普段の戦いも禁止された。そして、人々が集まることによって、メッカはその時も一大商業都市だった。 そしてイスラムが広がる当初、メディナでは、ユダヤ教徒でもありキリスト教徒でもある、または、ユダヤ教徒でもなくキリスト教徒でもない、純正な何も歪曲のないイブラヒームの宗教を辛抱する人もいた。ムハンマドは、このイブラヒームの教え完全なる一神の復活を望んでいた。
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イスラムへの情熱が窺える一冊。 セム的一神教がどのようにしてアラビア民族に浸透していったかを説く。40歳のとき初めて啓示をうけた、預言者ムハンマドは当初はセム的一神教であるユダヤ教・キリスト教に友好的な態度だったとは知らなかった(当初はエルサレムの方向に礼拝しようとしていたんだとか)。しかし神学的理由から、どちらの宗教にも反発にあいイスラムとして独立を歩むようになった。アラビア内部では血統意識や個人意識が強く、多神教であるジャーヒリーヤから反発にあった。元々メディナではユダヤ色が強かったし、周辺はキリスト教文明圏ということもあり、ジャーヒリーヤの伝統である詩歌には唯一神教的な素地が既に存在していた。多神教でありながら沙漠の古い神”アッラー”が天と地の創造主であることを既に信じており、またアッラーの言語用法の変質(部族神 → 唯一神)からジャーヒリーヤはイスラームに染まっていく。イスラムは新しい宗教ではなく、古い宗教であること(アブラハムが永遠の宗教理念の創始者=史上初のムスリム)を主張した。
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井筒俊彦 「 イスラーム生誕 」 ムハンマドの出現=イスラーム生誕 として、ムハンマドは何者か、イスラームとは何か を問うた本。イスラームが世界宗教化した原因を 終末論 としている。コーラン82 裂ける章にある終末論の描写は ダンテ地獄篇より凄い ムハンマドとは何者か *コ...
井筒俊彦 「 イスラーム生誕 」 ムハンマドの出現=イスラーム生誕 として、ムハンマドは何者か、イスラームとは何か を問うた本。イスラームが世界宗教化した原因を 終末論 としている。コーラン82 裂ける章にある終末論の描写は ダンテ地獄篇より凄い ムハンマドとは何者か *コーラン=終末論への警告、導き とした *血統や部族社会からの脱却→信仰の深さを説く *無道時代の無信仰者を変えようとした イスラームとは何か=イスラームの統一性とは何か *自分を神に任せる→神が主人、ムスリムは奴隷 *信仰の対象は アッラー→神への感謝と怖れ→神を信じる=神に感謝する *宗教共同体 ムハンマド出現前の世界(無道時代)も 魅力ある *無常感 *アナファ(鼻を天に向けて 人生を生きる)
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とにかく情熱的!熱のこもった文章は読んでいて楽しい。 イスラーム以前のジャーヒリーヤの世界について、この本で初めて知った。無道時代と言われるが、彼らの素晴らしい詩や美学についても語られている。 学者が好きなムハンマドやイスラームのなりたちについて語っているので、読みやすくてオスス...
とにかく情熱的!熱のこもった文章は読んでいて楽しい。 イスラーム以前のジャーヒリーヤの世界について、この本で初めて知った。無道時代と言われるが、彼らの素晴らしい詩や美学についても語られている。 学者が好きなムハンマドやイスラームのなりたちについて語っているので、読みやすくてオススメです。
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岩波文庫の『イスラーム文化』と並ぶ井筒俊彦による格好のイスラーム入門書。本書はイスラームの宗教が立ち昇る瞬間に焦点を当て、その当事者について情熱的とすら言える口調で描かれる「ムハンマド伝」と、無道時代(ジャーヒリーヤ)と言われる部族社会的、貴族的価値観を反転させるものとして生まれ...
岩波文庫の『イスラーム文化』と並ぶ井筒俊彦による格好のイスラーム入門書。本書はイスラームの宗教が立ち昇る瞬間に焦点を当て、その当事者について情熱的とすら言える口調で描かれる「ムハンマド伝」と、無道時代(ジャーヒリーヤ)と言われる部族社会的、貴族的価値観を反転させるものとして生まれたその宗教性を時代私的に、意味論的に考察していく「イスラームとは何か」の二部構成。日本が誇る知の巨人、井筒俊彦の著作はどれも本当に面白く、所々で引用されるコーランの翻訳文もその重要な要素である詩情性に溢れているのが素晴らしい。
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長い間の積ん読状態だったが、読み始めたら一気だった。ムハンマドが生きていた当時のアラブ社会の状況からいかにイスラム教が生まれてきたか語られておりとても興味深い。
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血筋以上に大きなコミュニティを作るという点で、宗教はある意味凄い発明なのかもしれないなんてことを考えながら読んだ。
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とにかく作者のイスラーム好きがかなり伝わってくる一冊。 入門書と聞いたのだが、自分にとっては少し難しかったので、 他のもっと簡単な本を読んでからもう一度読みたい。
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なんかの良書100選みたいなので、挙げられていたので読んでみました。イスラム教とは?またイスラム教が生まれた社会的背景など、論文調に語られていて、難しかったけど勉強になりました。 ちょっと心に残った詩。 慈雨を喚ぶ春の星座も定まりて 野も丘も生々とよみがえり 空高く春...
なんかの良書100選みたいなので、挙げられていたので読んでみました。イスラム教とは?またイスラム教が生まれた社会的背景など、論文調に語られていて、難しかったけど勉強になりました。 ちょっと心に残った詩。 慈雨を喚ぶ春の星座も定まりて 野も丘も生々とよみがえり 空高く春雷とどろき、はい然と また或時はしめやかに雨ふりそめぬ。 野の草はいっせいに芽をふき 谷のなぞえの彼方には 仔を生む雌羊、 こなたには雛を育てる駝鳥の姿。 つぶらな眼の野牛は、 生れて間もなき仔の傍に長々と横たわり あたりには育ちかけたる仔牛ら 群たちてさまよい歩く。 降る雨脚のはげしさに 旧き宿りの跡までも洗い出されて 新しく書き直されし文字のごとくに 水々しくも輝き出でぬ。 こういう詩をみると人間って変わらないんだなって思います。
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