1,800円以上の注文で送料無料

大本営が震えた日 の商品レビュー

3.8

27件のお客様レビュー

  1. 5つ

    6

  2. 4つ

    11

  3. 3つ

    8

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2019/12/28

「開戦」という、絶対的な時間指定がある巨大プロジェクトを進めるために、広大な領域に広がる巨大な組織の隅々に機密情報を行き渡らせるのは困難な課題だが、いくつか失敗はあったものの我が国がそういった力を持っていたのは、いまだに陰に埋もれたままの無数の英雄がいたからなのだろう。

Posted byブクログ

2019/11/18

太平洋戦争勃発前の数日間を詳細な調査によって描き出した著者得意の記録文学。情報秘匿のためには人の死も厭わない軍部の闇、一握りの軍人により企図された奇襲計画...。 「トラ、トラ、トラ」との高揚感、達成感とは真逆な感情が溢れ出す...。読後の疲労感が半端ない。

Posted byブクログ

2018/05/05

1981年(底本1968年)刊行。  対英米戦は、1941年12月8日に開始された。しかも、この場合、開戦は奇襲と同義であり、奇襲のための艦隊や船団は移動を開始し、その異様な動員・展開は、それだけでも開戦日を推知できる状況を生んでいた。つまり、開戦日に先立つ数日間、開戦命令の伝...

1981年(底本1968年)刊行。  対英米戦は、1941年12月8日に開始された。しかも、この場合、開戦は奇襲と同義であり、奇襲のための艦隊や船団は移動を開始し、その異様な動員・展開は、それだけでも開戦日を推知できる状況を生んでいた。つまり、開戦日に先立つ数日間、開戦命令の伝達、開戦日秘匿のための工作や平常状態の維持に神経を尖らせていた。  その各地の具体的な模様、就中、大本営の命令書(対英米蘭開戦決定と香港攻略命令)を携えた航空機が、台北・広東間の汕頭付近で墜落した「香港攻略命令書喪失事件」に頁を割いている。  ただし、1968年の時点で、戦前アメリカの暗号解読のレベルがどの程度だったか、どこまで公知だったは判然としないが、そのレベルが相当程度あったということが広く知られた現代(南方進出はもとより、ハワイ攻撃も察知していた可能性があり(ただし正確な日時までは不明あたりが落着点?)、フィリピン攻撃は当然に予期)、ここでの緊張感が神の目から見てどう映るかは色々思うところがある。  しかも対英米開戦決定が、政・戦の戦略レベルでまともでないこととも相俟って考えれば、戦術面での奇襲攻撃に拘泥する意味がどれほどかも疑問符が…。  しかしながら、いくつか個人的に新規なネタはある。まず、 ① 本書が主題とする台北・広東間の汕頭付近で命令書を携えた航空機が墜落した「香港攻略命令書喪失事件」の概要。  また、そこでは、敵地内に墜落した航空機の破壊命令の中に、味方生存者の始末も許容した「一物の生物もなからしめよ」という命令が存在した点。実行時の模様に関する生存者の証言。 ② ①に関連して、いわゆる1935年?の「第四艦隊事件」で艦首が折れた駆逐艦の処分にあたり、保秘の名目で生存者が残存しているにも関わらず、当該駆逐艦を砲撃により沈めた事実。 ③ 南遣艦隊。開戦前々日の6日に英軍偵察機に捕捉され、7日午前11時頃、英航空機との空戦が行われた点。 あたりか。  まぁ、日本側からの視点のみなので、例えば、真珠湾攻撃時にハワイに米国空母群がいなかった理由などは判らずじまいだけれど…。

Posted byブクログ

2017/06/29

太平洋戦争開戦に際する、マレー上陸、タイ通過、真珠湾などの奇襲作戦の裏側。様々な要因で何とか発覚しないまま奇襲は成功裏におわると。

Posted byブクログ

2016/02/26

 太平洋戦争開戦前夜の緊張感が伝わる。真珠湾攻撃に際し敵軍の発見を恐れ北上海路を取り進むのだが、敵軍に発見されれば奇襲攻撃は失敗する。同時に東南アジアに展開している日本軍がタイ国に侵攻、同国に協力を求めるが成立しない。はじめから薄氷を踏む作戦であったことが分かる。真珠湾奇襲作戦は...

 太平洋戦争開戦前夜の緊張感が伝わる。真珠湾攻撃に際し敵軍の発見を恐れ北上海路を取り進むのだが、敵軍に発見されれば奇襲攻撃は失敗する。同時に東南アジアに展開している日本軍がタイ国に侵攻、同国に協力を求めるが成立しない。はじめから薄氷を踏む作戦であったことが分かる。真珠湾奇襲作戦は成功するが、この戦争の破綻は目にめいていた。

Posted byブクログ

2016/01/19

この小説は、1941年12月1日の御前会議から12月8日の米英蘭に対する奇襲作戦を行うに至るまでの話である。秘密裏に準備が進められたこの一週間の間に起こった予期せぬ事態に軍部がどのように動いたかを細い取材の元に綴られた史実なのである。それは、墜落する上海号という双発機に暗号書と開...

この小説は、1941年12月1日の御前会議から12月8日の米英蘭に対する奇襲作戦を行うに至るまでの話である。秘密裏に準備が進められたこの一週間の間に起こった予期せぬ事態に軍部がどのように動いたかを細い取材の元に綴られた史実なのである。それは、墜落する上海号という双発機に暗号書と開戦指令書を持ち込んだ兵士の命をかけた逃走と人間を虫ケラのように扱う軍部の動きを対象にして描かれていく。吉村昭が描く戦史小説に一貫して通じるテーマがそこにある。小説の結びには、陸海軍人230万人、一般人80万人のおびただしい死者を飲み込んだ恐るべき太平洋戦争は、こんなふうにしてはじまった。しかも、それは、庶民の知らぬうちに密かに企画され、そして、発生したのだ。と締め括られている。

Posted byブクログ

2015/09/06

開戦直前の1ヶ月。秘密裡に戦争へ突入した。ほんの一握りの人が決断し、大きなリスクを負って奇襲作戦を進めた。成功しても英雄とは言えない。2015.9.6

Posted byブクログ

2015/08/30

youtubeで真珠湾攻撃のラジオを聞いたことがあったのがだ、いかに当時情報が隠され、驚いたかがわかった。 開戦の内容をアメリカに渡すというのが私が見たのとは違う。どっちが本当だろうか。

Posted byブクログ

2015/07/27

難解。でも読み応えのある一冊。 70年も前のことだし、戦争なんて勢いで始まって勢いで終わるものだと思っていた。でも違ったようだ。 衛星中継もインターネットもない時代でも、人と人との化かし合い、情報戦から戦いは始まっている。それがよく分かる。 ミッドウェーを境に転落を続け、貧す...

難解。でも読み応えのある一冊。 70年も前のことだし、戦争なんて勢いで始まって勢いで終わるものだと思っていた。でも違ったようだ。 衛星中継もインターネットもない時代でも、人と人との化かし合い、情報戦から戦いは始まっている。それがよく分かる。 ミッドウェーを境に転落を続け、貧すれば鈍するで精神論が先行して破滅の一途を辿ったことは周知のとおりだが、少なくとも開戦に至るまでの過程は多分に運に依拠する部分もあれど緻密に練り上げた一大作戦が実を結んだ戦史上でも空前の出来事だということは伝わった。 ついでに、解説で引用されていた一文にも妙に納得。 「日本の一般市民はそれまで戦争を特に悪いことと考えていなかった。維新以来日清戦争を始めとして絶えず戦っていたし、負けたことがなかったから」と。 たしかに、戦後に生まれた世代とは置かれた環境が違いすぎる。良い悪いの問題ではなく、価値観の相違も当然なのかもしれない。

Posted byブクログ

2013/09/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 12月8日、太平洋戦争開始時の米英への奇襲攻撃までの日本の苦闘。奇襲を記した作戦命令書を乗せた旅客機が中国国内に墜落したことを背景に、マレー作戦、真珠湾攻撃までの道のりを描く。実際の奇襲当日の描写がほとんどないのが、非常に印象的。  もし、この時、奇襲攻撃が他国に知れていたら、と考えると不思議な感覚を受ける。それにしても、かなり博打的要素で戦争が始まったことがよくわかり、寒くなった。

Posted byブクログ