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山椒魚戦争 の商品レビュー

4.3

30件のお客様レビュー

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2022/09/05

おお、400ページ超えだ〜読むのに時間かかるかも…と思ったら意外にもするっと読めて驚き。 じわじわと面白さがわかってくる・面白さを感じてくる作品だと思う。 最初にヴァン・トフ船長が赤道直下のとある島の魔の入江と呼ばれる場所で、二本足で歩く子どもサイズの真っ黒な生き物を見つけたこ...

おお、400ページ超えだ〜読むのに時間かかるかも…と思ったら意外にもするっと読めて驚き。 じわじわと面白さがわかってくる・面白さを感じてくる作品だと思う。 最初にヴァン・トフ船長が赤道直下のとある島の魔の入江と呼ばれる場所で、二本足で歩く子どもサイズの真っ黒な生き物を見つけたことからこの物語は始まる。 その真っ黒な生き物こそ山椒魚であり、彼らを愛したヴァン・トフ船長は、彼らに道具の使い方を教えてやり、言葉をも教える。 山椒魚をさまざまな真珠の採れる島々に送り込み真珠ビジネスを立ち上げようと、大企業家のG・H・ボンディに話を持ちかける。 最初はそれだけだったのだ。 だが物語は思わぬ方向に向かっていくことになる… 寓話のようかと思いきや、論文調になり、メタファーになり、新聞の切り抜きを掲載している感じにしたりと、様々な趣向の凝らされている作品で、飽きが来ないようになっている。 だから決してすごく読みやすいわけではないのに一気に読めたのかな、と思った。 各方面に、その時代の風刺がきいていてそれもまた興味深い。ナチス・ヒトラーを風刺していると思われる描写もあり、そのせいか本書はナチス政権の頃には発禁になっていたらしい。 中には日本語に見えるけどよく見たら日本語じゃない図もあり、山椒魚を描いていると思われる当時の写真風の絵もあり、いろいろと面白い。 何より話の展開が面白い。 特に第3章(最終章)は畳み掛けてくる。 言語は学べるし科学も理解できている(と思われる)山椒魚たち。しかし文学などは解せず、その点を見ると山椒魚はまるでAIのようだと思った。 そう見るとSFだなと思える。 最後はなかなか、そこまで迫ってきたかという恐ろしさが山椒魚にあるが、それでも彼らが可愛らしく思える節があるのは、第二章までの彼らのエピソードがあったからだろうか。 ポヴォンドラ氏には貴方だけのせいではないよ、と言いたい…。 この物語の行く末は、どうなろうとも山椒魚のせいではなく、人間のせいなのだろう。 最後の 「それから?」 ーそれからのことは、ぼくにも分からないよ。 はなぜだろう、とても印象深い。

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2021/11/18

SFの名作ということで読んでみました。戦前の作品なので少し心配でしたが、読みやすい訳でなにより面白い。2足歩行の山椒魚たちを想像するとちょっとかわいいかも。?

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2021/08/07

エッセイでも有名なチャペックの小説。エッセイを読んでみたかったけど、先に小説を読んでおこうと思い。 結論めちゃくちゃ面白かった!結構分厚いけど読むのが止まらない。 ある船長が入江で山椒魚を発見し魅力に取り憑かれ、ビジネス利用を初めたところ、世界的なビジネスになり、さらに山椒魚の...

エッセイでも有名なチャペックの小説。エッセイを読んでみたかったけど、先に小説を読んでおこうと思い。 結論めちゃくちゃ面白かった!結構分厚いけど読むのが止まらない。 ある船長が入江で山椒魚を発見し魅力に取り憑かれ、ビジネス利用を初めたところ、世界的なビジネスになり、さらに山椒魚の数も増加。夥しく増えた山椒魚が生活場所を確保するためにとった行動とは…。 人間の愚かさ汚さと、山椒魚の純粋に生をもとめる姿が対比になっている。 緻密すぎる設定が、山椒魚戦争は過去本当にあったことなのでは?と思わせる。チャペックはすごい。 山椒魚が実験で脳を刻まれたりひどい環境に置かれたり、はたまた大量虐殺されたとき、本を読んでいる分には「何てひどい…」と思えたが、この世界が現実にあったとして、本当に非人道的だと思えるのだろうか? あとイギリスと中国の扱いが酷いが、チャペックは両国が嫌いだったのか?

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2020/07/20

カレルチャペック の人間観察眼には脱帽。 1938年に没した者とは思えない。 描かれる人間の尽きぬ欲望の行き着く先はいつの時代も同じなのだろう。 SF作家としての技量は疑うべくもない。 山椒魚をAIに置き換えれば現代にも通じるものがある。

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2018/03/13

「RUR」と並ぶチャペックの代表作かつSFの大古典。名前は知っていたがなんとなく機会を逃していたので、ここで。 軽妙洒脱なチャペックの語り口でこのテーマというのが、最初違和感があってなかなか入り込めなかったのだけれど、だんだん調子が出てくると苦笑いみたいなものに変わっていって、...

「RUR」と並ぶチャペックの代表作かつSFの大古典。名前は知っていたがなんとなく機会を逃していたので、ここで。 軽妙洒脱なチャペックの語り口でこのテーマというのが、最初違和感があってなかなか入り込めなかったのだけれど、だんだん調子が出てくると苦笑いみたいなものに変わっていって、面白くなってきた。ちなみにぼくは最初から山椒魚の味方。がんばれ、人間なんかやっつけちまえ! SFとしても、文明批評としても面白い。さすがにちょっと古くさい感じはするけど。 チャペックという人は、気さくで親しみやすそうに見えるけれど、実はシニカルで、一歩引いて物事を眺めているたちなのかもしれないと思った。本書も虐げられた山椒魚のリベンジ戦として書くことはできたはずだし、山椒魚と人間を対比させることで人間の愚かさを強調することもできたろうけれど、チャペックはそれをしなかった。人間ってアホだけど、言っても治んないよね~しょうがないよね~と思っていたのかもしれない。 その分、後半の盛り上がりには欠けて、ちょっと残念。

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2015/01/25

読んで損はしない。 以下内容含む。 『山椒魚戦争』と聞いてまず思い出したのは、映画『猿の惑星』シリーズだ。猿対人間のように、山椒魚対人間という話なのだろうと予測した。それと同時に、『猿の惑星』がそうであったように、『山椒魚戦争』もまた現実の社会への風刺を含んでいるのだろう...

読んで損はしない。 以下内容含む。 『山椒魚戦争』と聞いてまず思い出したのは、映画『猿の惑星』シリーズだ。猿対人間のように、山椒魚対人間という話なのだろうと予測した。それと同時に、『猿の惑星』がそうであったように、『山椒魚戦争』もまた現実の社会への風刺を含んでいるのだろうということだ。実際そうだったし、これは作者が明確に「作者の言葉」のなかで述べている。曰く「私がこの作品で描いたのは、ユートピアではなく、現代なのです。それは未来の事態についての憶測ではなく、現代の世界、いまわれわれが生きている世界を、鏡に映し出したものなのです。私にとって問題なのは、空想ではありませんでした。そんなものなら、私にはいつでも好きなだけ、タダどころか、お添え物をつけてさしあげます。私にとって問題なのは、現実だったのです。」(11-12頁)。ここで作者のチャペックは彼自身が生きている現代を念頭に置いているが、本書で映し出されている「現代」あるいは「現実」は、今生きる私たちの現代や現実の映しともなり得ることは、本書を読めば誰もが身につまされることだろう。  本書は不思議な構成になっている。一貫した主人公や視点があるわけではない。インタビューや新聞・雑誌の記事、学術論文など。ある人物に焦点を当てた物語の短編形式もある(ただしこれも書き方がおかしくて、地の文の語り手が変わったり、とにかく主人公らしきものは立てられない)が、全体的には上記した様々な形式の雑多な資料集といった具合。もっと精確に言えば、山椒魚と人間の出会いから山椒魚戦争で世界が破滅するまでの数十年の歴史を描いた歴史物という印象。それゆえ、一人の主人公から語られるお話よりも、一層リアリティのある読み物になっていて、それはチャペックがこの本をたんなる娯楽作品にとどめたくはなかったという意図から来るのだろう。そのように第三者が著した歴史物という体裁をとっておりながら、しかし人間の心理描写は木目が細かい(例えば第一部6から始まるエイブのお話は青少年の甘酸っぱい様を見事に描いていて、ここだけ読むと別の作品かとおもえるほど。)。これもチャペックの人間に対する関心の深さからくるのだろう。だからこそ、人間という生き物がどうしようもなく行きついてしまう「ユートピア」(今の言葉で言えば「ディストピア」)を描くことができたに違いない。この本は山椒魚の話でもあるわけだが、実のところ人間への深い愛に根ざした人間への遣る瀬ない思いが全体を貫いている。

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2014/08/31

いかにも奇妙な本 ビジネス書ガイドブックにかなりの確率で載っている本書 いつも気になりながら、スルーしていなたのだが、思い切って購入 タイトル通り、本書を読み終える頃には頭から山椒魚が離れないのだが、本書のメインのテーマは決して山椒魚についてではない。 人間のおろかしさ ...

いかにも奇妙な本 ビジネス書ガイドブックにかなりの確率で載っている本書 いつも気になりながら、スルーしていなたのだが、思い切って購入 タイトル通り、本書を読み終える頃には頭から山椒魚が離れないのだが、本書のメインのテーマは決して山椒魚についてではない。 人間のおろかしさ それがいたたまれない程に記されている。 インパクト大

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2014/03/21

日本人には書けないような、独特の作風。当時の各民族の典型的な偏見がまた面白い。SF好きも、歴史好きも楽しめる良作。

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2014/03/10

自分の世界が危うくなるたびに優しい者に甘えつつ理屈を振りかざす私個人のように、社会も弱い労働力や、教育や、法律で、いつも何かをねじ伏せようとするけれど、結局どうにもならない。山椒魚に支配されてゆく現実を前に、哲学者が書き始める人間のエピローグに「そもそも人間には、幸福になる能力が...

自分の世界が危うくなるたびに優しい者に甘えつつ理屈を振りかざす私個人のように、社会も弱い労働力や、教育や、法律で、いつも何かをねじ伏せようとするけれど、結局どうにもならない。山椒魚に支配されてゆく現実を前に、哲学者が書き始める人間のエピローグに「そもそも人間には、幸福になる能力があるのか」(一個の人間ではなく人類には)という一文があり、数年ぶりにその言葉を思い出したような気分になる。架空の新聞記事を辿るような奇妙な構成と、あいまに出てくる市井の人たちの慎ましい生活描写もよかった。

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2013/05/24

京都市水族館で見た山椒魚が気持ち悪くて印象に残ったので検索したのがきっかけ。内容的にはストレートな風刺だけど、創りこみ方が細かくてリアルで面白かった。山椒魚に人間と同じ教育を施そうとするシーンの醜悪さが良い。最近レイ・ブラッドベリの「火星年代記」も読んだんだけど、人外の生き物に善...

京都市水族館で見た山椒魚が気持ち悪くて印象に残ったので検索したのがきっかけ。内容的にはストレートな風刺だけど、創りこみ方が細かくてリアルで面白かった。山椒魚に人間と同じ教育を施そうとするシーンの醜悪さが良い。最近レイ・ブラッドベリの「火星年代記」も読んだんだけど、人外の生き物に善意で人間の基準をおしつけるというネタがこちらにもあって、考えることは同じだなと思った。

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