戦争倫理学 の商品レビュー
911の影響を強く受けて出された本だけど、改憲議論やトランプ政権のことを客観的に考えるガイドが欲しいと思い一読。
Posted by
[非熱狂の道標]時代とともに変化する性質とともに発展してきた戦争に関する倫理や思想。その流れを踏まえた上で、21世紀の国際社会が戦争について考えるために土台とすべき共通見解は何かを紡いだ一冊です。著者は、生命・環境等の倫理学を専門とし、ヘーゲルに関する研究で和辻哲郎賞も受賞されて...
[非熱狂の道標]時代とともに変化する性質とともに発展してきた戦争に関する倫理や思想。その流れを踏まえた上で、21世紀の国際社会が戦争について考えるために土台とすべき共通見解は何かを紡いだ一冊です。著者は、生命・環境等の倫理学を専門とし、ヘーゲルに関する研究で和辻哲郎賞も受賞されている加藤尚武。 戦争をめぐる思想史にも光を当てながら、なんとも重いテーマを前にして縦横無尽に思想を広げていく加藤氏の筆は圧巻。それだけに、執筆に当たっての時間が限られた中で、過去の作品の加筆・修正版を多く取り入れたためか、切り貼り的なつくりになってしまっているのは残念でした。 本書の中で特に興味深かったのは、東京裁判、特にパール判事の無罪論の真意を探ったところ。とかく感情論を避けながら、いわゆる「日本無罪論」とは何かについて論じている箇所は戦争倫理学そのものに興味がなくとも一読の価値があるかと思います。 〜世界中の「世論」が、戦争に向かって走り出したときに、踏みとどまって、世界が狂気に陥っており、自分こそが正気であると言えるために、私たちは自分自身の位置を正確に測定できるような、羅針盤を持たなくてはならない。それが「戦争倫理学」である。〜 なんとも新鮮な角度からの指摘でした☆5つ
Posted by
戦争をテーマに倫理学の立場からの考察をおこなっている本です。 新書なので分量的にやや厳しい制約がありますが、いちおう国家主権の絶対性という思想の来歴を紹介し、ロックからカント、ヘーゲルと、近代の思想家たちの戦争論を踏まえて議論が展開されています。また後半では、東京裁判におけるパ...
戦争をテーマに倫理学の立場からの考察をおこなっている本です。 新書なので分量的にやや厳しい制約がありますが、いちおう国家主権の絶対性という思想の来歴を紹介し、ロックからカント、ヘーゲルと、近代の思想家たちの戦争論を踏まえて議論が展開されています。また後半では、東京裁判におけるパル判決書や憲法9条などをテーマに、戦争と平和についての原理的な観点からの考察が展開されています。 比較的イデオロギー・フリーな立場からの、戦争についての倫理学的な考察の一端に触れることができたという意味で、個人的には有益な読書だったように思います。
Posted by
戦争のルールについて考える、それが戦争倫理学であると著者は説く。 実際戦争にルールなんてあるのか、という疑問が出てきそうだが、本書はそんな根本的な疑問を中心に進む。存在する戦争のルールが何故今まで無視されてきたのか、これからも無視され続けるのか。アメリカのアフガン戦争を発端にした...
戦争のルールについて考える、それが戦争倫理学であると著者は説く。 実際戦争にルールなんてあるのか、という疑問が出てきそうだが、本書はそんな根本的な疑問を中心に進む。存在する戦争のルールが何故今まで無視されてきたのか、これからも無視され続けるのか。アメリカのアフガン戦争を発端にした現代暴力について考える手助けをしてくれる一冊。 ただどうも本書はいくつかの論文を編集したものであるらしく、全体像が掴みづらい印象を受けた。章ごとに別の話をしていると思って読んだほうがいいかもしれない。
Posted by
戦争は無い方がいいですか?との問いに、あなたはどう答えるだろうか?「人がたくさん死ぬから無い方が良いに決まってる!!」と答えたあなた。では「目の前で誘拐されそうな友人を、実力で救い出してはいけないと思いますか?」との問いにはどう答えますか? 戦争に関する既存の「まやかし」の議論...
戦争は無い方がいいですか?との問いに、あなたはどう答えるだろうか?「人がたくさん死ぬから無い方が良いに決まってる!!」と答えたあなた。では「目の前で誘拐されそうな友人を、実力で救い出してはいけないと思いますか?」との問いにはどう答えますか? 戦争に関する既存の「まやかし」の議論に惑わされずに議論するために、知っておくべき論点が提示されている。例えば、戦争をする権利やルール、第二次世界大戦における日本の罪、憲法9条の問題点等々、複数の観点から見ると浮かび上がってくる矛盾も示されている。 以下はメモ 12〜13頁: この章はある引用から始まるが、これを読んで何を思っただろうか。どれほど残虐なものであっても「慣れ」が生まれてしまう。そこで著者は「正気の判断を維持するためには、『慣れ』に抵抗できる仕組みが必要である」という。 102〜123頁: ここは8・9章に相当。カントやヘーゲルの考え方が出てくる。他の章と比べると(個人的には)、読んでもそれほどには興味を持てない部分だった。 183頁: 「改釈」の文化は憲法9条の「改釈」から始まったのではないか、と著者はいう。国産肉、安全な食品、危険な原子炉… 様々な解釈・趣旨に照らしていくと9条の不明な点が見えてくる。特に自衛権。
Posted by
倫理学者が戦争と倫理について語る15章。過去に書いた小文をまとめて出版したものらしく,全体のまとまりには欠ける。 基本的に反戦の立場から,9.11後の米国の対テロ戦争や,小林よしのりの『戦争論』を批判している。 反戦といっても現実を見ていない理想主義的なものではなく,戦争を...
倫理学者が戦争と倫理について語る15章。過去に書いた小文をまとめて出版したものらしく,全体のまとまりには欠ける。 基本的に反戦の立場から,9.11後の米国の対テロ戦争や,小林よしのりの『戦争論』を批判している。 反戦といっても現実を見ていない理想主義的なものではなく,戦争を有効に終結させる平和的手段がないときに,既発の戦闘を停止させるための戦闘行為は正当としている。時代を経るにつれて,平和的手段の選択肢は増えていくと信じたい。楽観的に過ぎるだろうか。
Posted by
各章が示すように、戦争に関する概念及び法的解釈の適用に従い、戦争開始規定と戦争経過規定について、ブッシュ大統領のイラク派遣の是非を始めとして解説している。
Posted by
アメリカの所謂対テロ戦争を契機にまとめられた,著者の戦争に関する短文集といった体裁か.そのため,ところどころ話が行ったり来たりする感じはある.ただ,あるべき反戦・平和の形を考える上では実に参考になる良書.
Posted by
戦争についての論点を見事なまでに整理して目の前に並べられて、僕の「戦争観」の迷妄ぶりをぎゃふーんといわされて、恥じ入るばかりである。 トーマス・モアの処刑、ヒロシマ・ナガサキ原爆投下、湾岸戦争とイラク戦争、民主主義は平和であるという誤解、東京裁判、正当防衛と自衛権、憲法九条な...
戦争についての論点を見事なまでに整理して目の前に並べられて、僕の「戦争観」の迷妄ぶりをぎゃふーんといわされて、恥じ入るばかりである。 トーマス・モアの処刑、ヒロシマ・ナガサキ原爆投下、湾岸戦争とイラク戦争、民主主義は平和であるという誤解、東京裁判、正当防衛と自衛権、憲法九条などなど、当代随一の倫理学者の立場からするどい論評を加えていて、かたよらない論述になっている。 しかし、著者は多くの人が「人間は闘争本能をもつから戦争は永遠になくならない」というあきらめの議論(僕もそう思っていたのだが...)に対しても、4項目を挙げて、これらが不可能なことを証明しなくては「戦争は永遠になくならない」ということの証明はできないし、そのためにはかなり込み入った論議になるという。著者は人間として、「戦争を永遠になくならせることは可能だ」という希望を与えてくれる。 これは無責任な絶対平和主義者の理屈とは違い、僕らが謙虚に傾聴しなければならない主張だ。
Posted by
[ 内容 ] 九・一一以後、世界は戦争に向かって地滑りを起こしているのかもしれない。 こうした状況にあって、ともすると人は、戦争が生み出す悲惨な現実に慣れてしまい、正気を失ってしまう。 まやかしの議論に乗せられないためには、戦争に関する最低限の議論を知っておかなくてはならない。 ...
[ 内容 ] 九・一一以後、世界は戦争に向かって地滑りを起こしているのかもしれない。 こうした状況にあって、ともすると人は、戦争が生み出す悲惨な現実に慣れてしまい、正気を失ってしまう。 まやかしの議論に乗せられないためには、戦争に関する最低限の議論を知っておかなくてはならない。 本書は、そうした重要論点を整理し、戦争抑止への道を探る戦争倫理学の試みだ。 同時多発テロに端を発する米国の軍事行動、ロールズの原爆投下批判、憲法九条問題などが取り上げられており、いま、戦争について冷静に考え、実りある議論をするための、重要な手がかりを与えてくれる。 [ 目次 ] 戦争に関する正気とは何か 戦争の二種類のルール―戦争目的規制(jus ad bellum)と戦闘経過規制(jus in bello) 連続テロに対する報復戦争は正当か―私の第一の反戦メイル 国家という猫には誰も鈴をつけられない―トーマス・モアの処刑とグローティウスの戦争論 アメリカの良心は「ヒロシマ」に「ノー」と言った―ロールズの原爆投下批判 ゲルニカを忘れないで―私の第二の反戦メイル 鉛の兵隊さんはどうして美しい制服を着ているのか―傭兵軍から国民軍への転換 カントの「永久平和論」 人は共和国のために命を捧げる―ヘーゲルの考えた国家と戦争の関係 戦争をした日本は有罪か―「東京裁判史観」と東京裁判の問題点〔ほか〕 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
Posted by
- 1
- 2