未来をつくる図書館 の商品レビュー
ニューヨークの図書館の取り組みを紹介し、図書館の役割を改めて考える。 初版が2003年なので、インターネット普及状況などはいまとは違っていることもあるだろう。しかし図書館がどういうものなのか、という目指すものや考え方は今でも変わらないだろう。 まずは著者が滞在したニューヨークの...
ニューヨークの図書館の取り組みを紹介し、図書館の役割を改めて考える。 初版が2003年なので、インターネット普及状況などはいまとは違っていることもあるだろう。しかし図書館がどういうものなのか、という目指すものや考え方は今でも変わらないだろう。 まずは著者が滞在したニューヨークの図書館の取り組みが紹介される。 「公共図書館の役割は、市民が必要とする情報を誰もが得られるように扱うことだ。人間にとっていちばん大切な命や健康に関わる情報は、図書館が提供するものの中でも最も貴重なもの(P110意訳)」としている。 ●まだインターネットの普及率が低かった頃から図書館のパソコンでの情報提供を行っていた。それは利用者に自由に使ってもらうだけでなく、司書も利用者が必要なものにたどり着くために、様々なアプローチから情報を探し出せるようなルートを用意している。。 ●ニューヨークには様々な図書館がある。 ビジネス図書館、映像資料も充実している舞台芸術の図書館など。なお日本にも「専門図書館」は多数あります。 ●図書館のインターネットで利用者がビジネス展開することも許容している。公共としては、市民が失業したりホームレスになって社会保障のコストを掛けるよりも、自立してもらったほうが良いという考え方だ。 ●講座が充実している。朗読会のような楽しみのための集まりもあるし、法律相談やカウンセリングの講座もあるし、地元アーティストの展示会も行われる。「図書館は市民のために存在する」というあり方のもと、地元団体と交流したり、人口統計を調べたりして市民の必要を見つけて講座を組んでいる。実際に利用者はとても多い。 ●知識を広げ教養を高めくらし全般や地域に関しての実践的な情報を提供し、市民が情報を活用して新しいものを作り出す。 ●利用者に提供する情報は、病気や保険など、利用者自身の知的武装に役立つものもある。 医療情報を提供することにより、患者本人が医者と話し合って治療方法を探ってゆく。医者にとっても、全く無知で医者の言いなりになるよりも、正しい知識の元話し合える関係が築けるので歓迎なのだ。 ●テロのときにはすぐにテロ情報サイトを立ち上げたので、より地域の住民に信頼されるようになった。図書館を地域情報や地域交流の場にしている。引っ越ししたらまずは図書館に行くことも根付いている。 ●NYでは子供の教育を家庭・家庭・地域コミュニティで連携して行っている。地域コミュニティの拠点として公共図書館がある。 ●情報を公開するということは負の面もある。冷戦時代に旧ソ連スパイに使わrたり、同時多発テロメンバーが図書館のインターネットを使用していたことなどが分かっているんだ層だ。しかし「情報は諸刃の刃」ということを自覚しつつ、情報の自由な流れを優先することを選んでいる。 ●「公共」というと、日本でのイメージはお役所だが、アメリカでは市民が担うという考え。そのため図書館運営も市民が主体であり、個人や財団による寄付も多い。 ●インターネットが発達してデジタル社会になった今こそ図書館が必要!図書館は「個人的に読みたい本や資料を借りる」だけでなく、情報発信やコミュニケーションの中心となる。 ●「平和のためには過去の過ちを詳しく知ることが必要」 充実したサービス ・印刷物、電子情報、チラシ、歴史記録、過去に遡って体系的に蓄積 ・膨大な情報の中から適切なものを選び、アクセスしやすい検索システムを構築 ・市民の情報活用能力や情報環境の育成 ・出会いの場所を作り、新しいビジネスや知的活動の場 ・著作権やデジタル化の新しい動きに対して民主的な情報環境づくりを行う
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日本で理解されやすい分館の充実だけでなく、いわゆる芸術支援・ビジネス支援といった専門図書館的な図書館も持ち合わせているニューヨーク公共図書館。日本の図書館を進化させるためのヒントが報告されている。
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素晴らしい図書館だった。本を貸すだけではない、学びの場の提供。そして、その価値を市民がわかってるからこそ寄付が集まる。寄付をとりに行っている。 人と人とを繋ぐ場所 人を呼び込むためのさまざまな講座の開設 今必要な情報をまとめて発信 育児に悩む親の応援 社会貢献の場の提供 真似...
素晴らしい図書館だった。本を貸すだけではない、学びの場の提供。そして、その価値を市民がわかってるからこそ寄付が集まる。寄付をとりに行っている。 人と人とを繋ぐ場所 人を呼び込むためのさまざまな講座の開設 今必要な情報をまとめて発信 育児に悩む親の応援 社会貢献の場の提供 真似したいことが山ほどある 能動的な図書館 ユニバーサルサービスで行政とは独立して運営できてるところが感動的。 図書館だけじゃなく、カフェや畑でも、こういう学び合いの場所をたくさん作っていきたい こういう場所は絶対必要だ! そう言えば自分自身はあまり図書館を利用してこなかったな。 数年前に子どもの読み聞かせイベントがあったので訪れたことがあり、日本でも助け合いの場として頑張ろうとしてるんだろうが、まだあんまり普及してないってことかな。
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2000年代に図書館はここまで進化していた! 日本の図書館ではまだ感じることができない図書館の可能性を問いかけてくれる一冊。
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03年の出版だけれど、全然古臭くない内容。フレデリック・ワイズマンのドキュメンタリー「ニューヨーク公共図書館」も合わせて見ると理解がより深くなる。
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ニューヨーク公共図書館は本の貸し出し以外にも色々な活動をしています。 それも、図書館のミッションが「全市民が知を活用できる事」と思えば 納得です。 日本人は最初に全体の枠を決めると、その中で活動します。 図書館も「本を無料で貸し出すところ」と枠が固定化されると 誰もそれ以外の...
ニューヨーク公共図書館は本の貸し出し以外にも色々な活動をしています。 それも、図書館のミッションが「全市民が知を活用できる事」と思えば 納得です。 日本人は最初に全体の枠を決めると、その中で活動します。 図書館も「本を無料で貸し出すところ」と枠が固定化されると 誰もそれ以外のことをしません。思いつきません。 「図書館がそんなことまでするんですか?」という発言に 全てがあらわれています。 また公共という言葉も、自分たちのという意識が無く お役所の仕事と思っています。 日本人は、公共や自由、平等、知などの概念は知ってはいても、 理解が間違っていると痛感させられる本です。
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※このレビューにはネタバレを含みます
序章 図書館で夢をかなえた人々 第1章 新しいビジネスを芽吹かせる 1 最先端のビジネス図書館 ・科学産業ビジネス図書館(SIBL=シブル) <情報のハンデをなくすこと> 200種類の新聞、雑誌閲覧。 ケーブルテレビの提供 電子情報センターでのインターネット接続 論文集、書評、商業データベースの購読 株式情報端末←ブルームバーグ氏寄贈 日本では新聞・雑誌記事検索のデータベースは有償なんですよね。以前情報は大事と思って契約していた事もあるのですが、月々の金額がバカにならないので解消してしまった。 これが図書館のネットワークで無償で検索出来るシステムは素晴らしいと思う。 ・図書館の情報資源や関連情報を活用する講座 「図書館利用のスキル」「インターネットt・スキル」「ビジネス情報」「行政情報」「科学情報」 司書全員に講師としての役割を義務付け ・専門家を招いた講座 ビジネスに関するもの ・リタイアした元経営者が無料でビジネスカウンセリング ビジネスを進める時、中小企業者、個人事業者は起業の際五里霧中なところがあり、ここで相談出来る相手がいると格段に楽になる。 第2章 芸術を支え、育てる。 芸術専門図書館。リンカーンセンター内の舞台芸術図書館は、図書館というより芸術に関する資料の博物館の様相。 日本では芸術資料の収集、流出や紛失を防ぐ活動、芸術家が死去した後の資料を家族から譲ってもらう、等の活動を一体どこがしているだろうか? 日本伝統芸能については連綿と続く門下で次世代に残しているかもしれないが、芸術となると、巨匠でも死去してしまうとそこで資料等途絶えてしまっていないか、心配。 楽譜のコピーが取れるの!?日本じゃJASRACのせいでたぶん無理。 ・スタッフの多くは、大学院を修了して得た図書館司書の学位を持つか、舞台芸術に関する論文を書き修士号や博士号を持つか、あるいは両方の学位を持つスタッフも多い 日本の図書館が対応スタッフをアウトソーシングしているのとは対照的。 第3章 市民と地域の活力源 ・ニューヨーク州に在住するか、通勤・通学するか、財産税を払っているか、などの条件を満たせば、誰もが無料で、またそれ以外の市民は年間100ドル支払えば貸出しカードを取得することができる。 テロ情報サイトの立ち上げ、児童室、育児教室、教師コーナーなど、日本では役所、児童館、教育委員会の教師の研究会、保健所や病院の母親学級等、行政が担っている所を図書館が行っている。その為、日本では個人の要望は一旦行政窓口を通してトップダウンで要望が伝わり改善されるのをただ待つしかないが、NYでは直接市民と図書館とのディスカッションし易いのだろう 第4章 図書館運営の舞台裏 ・前身は富豪が作った個人図書館(アスター図書館とレノックス図書館)を、政治家ティルディンの遺産をあわせNPOとして1895年にニューヨーク公共図書館設立。 ・1901年、カーネギーが寄付と共にNY市が建設用地と維持・運営費用を永久に負担するという条件をつけた。 ・1911年にボザール様式の大理石建築の新館開館。 第5章 インターネット時代に問われる役割
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調べものがあって、図書館で資料をうまく見つけられなかったとき、それは自分の能力がそこまでなんだと諦めていたが、そもそも資料の探し方を学んでいなかったのだ。ニューヨーク公共図書館のあらゆる分野を網羅しているサービスは衝撃。日本の図書館との差に愕然とした。図書館の可能性をもっと多くの...
調べものがあって、図書館で資料をうまく見つけられなかったとき、それは自分の能力がそこまでなんだと諦めていたが、そもそも資料の探し方を学んでいなかったのだ。ニューヨーク公共図書館のあらゆる分野を網羅しているサービスは衝撃。日本の図書館との差に愕然とした。図書館の可能性をもっと多くの人に知ってもらいたいと思った。
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2003年発刊のため情報が古いが、図書館がこんなこともするのかという驚きがある。コロナ禍で、図書館が閉まり、その重要性が私には痛いほど感じられた。これからも市民の居場所、人生の出発点として、発展し続けて欲しい。 資金集めの点は、アメリカの美術館と同じだなと感じた。 映画も機会...
2003年発刊のため情報が古いが、図書館がこんなこともするのかという驚きがある。コロナ禍で、図書館が閉まり、その重要性が私には痛いほど感じられた。これからも市民の居場所、人生の出発点として、発展し続けて欲しい。 資金集めの点は、アメリカの美術館と同じだなと感じた。 映画も機会があれば見てみたい。
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ニューヨークにある公共図書館は、日本にあり日本人の我々が想像するものと全く違うものである。 図書館は本を借りる場所という認識しかなかったけれど、ニューヨークの公共図書館のことを知ったら、そんな日本の図書館が残念に思えてきた。 ニューヨークの図書館では、本の貸し出しだけではなく様々...
ニューヨークにある公共図書館は、日本にあり日本人の我々が想像するものと全く違うものである。 図書館は本を借りる場所という認識しかなかったけれど、ニューヨークの公共図書館のことを知ったら、そんな日本の図書館が残念に思えてきた。 ニューヨークの図書館では、本の貸し出しだけではなく様々なデータベースを使用でき、調べものをするのにより便利なだけでなく、就職相談、税金の相談、スキルアップ講座など市民の生活に関わる様々な事柄を扱っている。 また、これらの図書館は公共とは言うものの、自治体の運営ではなく寄付により非営利民間団体が運営している。 図書館ごとに揃えられている資料は様々で、演劇に特化したものやビジネスに特化したものなど専門性が高いのも特徴である。 読んでいるだけでワクワクするような、博物館のような図書館もある。 本だけでなく、様々な資料が保管されている。 市民の寄付により成り立つ図書館。 そして、その市民を育てる図書館。 とても素晴らしい。 日本にも是非このようなものを作ってほしい。
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