ラピスラズリ の商品レビュー
3枚の銅版画から導かれる<冬眠者>の話。 短編集だが、連動している。連動してるが、明確な連結はない。<冬眠者>という糸では繋がっているが、では<冬眠者>とは何なのか、ということは明らかにされない。 という訳で、とても読者に不親切な作品。が、昨今の明確すぎる、というかすぐに単...
3枚の銅版画から導かれる<冬眠者>の話。 短編集だが、連動している。連動してるが、明確な連結はない。<冬眠者>という糸では繋がっているが、では<冬眠者>とは何なのか、ということは明らかにされない。 という訳で、とても読者に不親切な作品。が、昨今の明確すぎる、というかすぐに単純化、記号化していこうとする流れにいるとすごく新鮮に映る。つか、のめりこむ。久々に小説世界と現実とをワープするっていうか、そんな別次元に身体をもっていかれる感じを受けた。 おそるべし、山尾悠子。 と、この本はものごっつ美麗本です。 箱入りはあれとしても、今時パラフィン紙で包んでいて、布張りの表紙だよ。完全に、マニアが買うのを見込んでますねww ともあれ、ここまで美しいと意味もなくいつまでもぱらぱらめくっていたいです。と、人には貸せません(苦笑)
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すべてが意味ありげで惹き込まれます。そして文章が綺麗。綺麗、って漢字で書きたくなるような独特の硬い質感がありました。
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冬眠者に降りかかる枯葉の音と、ラバードールを抱いたトビ。そして自分は救われるのか、と問う声で話が昇華する。背後に立つ人形が、唯一彼らの全てを知っている。それが希望になるのか分からないけれども。
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「長い冬の孤独な眠りを基調とした物語は、本書の終盤で聖フランチェスコのもとを訪れる復活の春の兆しによって、少し救われた印象をもたらす。 だが読み終わったあとも心の中に、もう一人の自分が眠る、暗い森の奥の館が築かれたような思いがいつまでも残る。圧倒的な華麗さで語られるこの精緻な異...
「長い冬の孤独な眠りを基調とした物語は、本書の終盤で聖フランチェスコのもとを訪れる復活の春の兆しによって、少し救われた印象をもたらす。 だが読み終わったあとも心の中に、もう一人の自分が眠る、暗い森の奥の館が築かれたような思いがいつまでも残る。圧倒的な華麗さで語られるこの精緻な異世界の存在感は、いったい何なのだろうか。」 >>清水良典 週刊朝日 2003.12.12 ----- まさにそのとおりでした。 単語と単語の継ぎ合わせ、単語の持つ威力にただ呆然としてしまった。ただそれだけです。 世界を構築していく言葉ではなく、その世界を反映するだけの言葉を読み取っていくような感じがしました。 物語が劇的に変化していくわけでも何か大きな事件が起こるでもない、《長い眠りから目覚める話を書きたい/※国書刊行会でのインタビュー》という彼女の心情が分かった気がしました。言葉の噎せ返るほどの強烈な匂いや壮大な言葉のなせる想像力を見せ付けられて、ただただ圧倒させられるばかりです。 (2009.06.08)
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物語を構成するキーワードひとつひとつが美しい、洗練された連作短編集です。 でてくる料理がいちいちおいいしそうで気になります。秋から冬の夜長におすすめ。
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この世のあらゆるものを言葉というもので全て表現しきってしまうような、そんな印象です。とにかく言葉、言葉、言葉。 かといって、決して凝った表現をつかっているわけでもないので不思議です。
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場面場面が心深くに残って、本を読んだというより沢山の写真を見ていたような気がしてくる。 読み終えたあと心に残るのは、冷たい夜気と 玲瓏な早春の空、この美しい装丁を見たときの期待感を結晶したようなチラチラと光る石のイメージ。 気品ある言葉で綴られた物語を読めたことに感謝しま...
場面場面が心深くに残って、本を読んだというより沢山の写真を見ていたような気がしてくる。 読み終えたあと心に残るのは、冷たい夜気と 玲瓏な早春の空、この美しい装丁を見たときの期待感を結晶したようなチラチラと光る石のイメージ。 気品ある言葉で綴られた物語を読めたことに感謝します。 そして作中に出てくるお料理がまた美味しそうで。カテゴリ分けを「幻想文学」とするか「食」とするか、非常に悩ましかった。
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銅版、閑日、竈の秋、トビアス、青金石のイメージが綴る、人形と冬眠者と 聖フランチェスコの物語。「山尾悠子作品集成」から3年、不世出の幻想小説 が再び世に問う書き下ろし連作長篇集。
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小説の挿画に使われたという銅版画から始まる幻想譚。 時間的にも空間的にも重層的な構造を持つ連作集で、銅版画に誘われ、「冬眠者」と「人形」と「天使」が織りなす甘美な物語にたちまちのうちに惹きこまれ、魅せられてしまう。 「閑日」「竃の秋」では、場所も時代も不明で階層世界を髣髴とさせ...
小説の挿画に使われたという銅版画から始まる幻想譚。 時間的にも空間的にも重層的な構造を持つ連作集で、銅版画に誘われ、「冬眠者」と「人形」と「天使」が織りなす甘美な物語にたちまちのうちに惹きこまれ、魅せられてしまう。 「閑日」「竃の秋」では、場所も時代も不明で階層世界を髣髴とさせるようなゴーストが住む広大な屋敷を舞台にし、「青金石」では13世紀アッシジの聖フランチェスコの元へ、「トビアス」では物資が不足した近未来を舞台にする。 様々な時空において硬質な文章で繰り返して描き出されるのは「冬眠者」「人形」「天使」であるが、作品世界全体に、山尾作品の本質にある“死と崩壊の予感”を漂わせながらも、最後で“生(再生)”の明るいイメージに救われる、とても象徴的な物語だった。(最後の物語が、そもそもの始まりの物語で、決して終わりのない物語なのだけど) あたかも連作の作品同士が反響し合っているかのようでつい何度も繰り返し読みたくなる、不思議な魅力をもった連作集。 読んでいる間はパラフィン紙を外し、本体剥き出し状態で読んでいたのだが、表紙絵である《希望》、そのままの連作集だったなあと読み終えて感嘆したものだ。 小説から表紙から函付の装丁までみ〜んなひっくるめて、うっとりするほど美しくて素敵(*^^*)。(表紙の明るい青色、これがラピスラズリの色なのかしら?鮮明で、温かみがあっていいわ〜♪)
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以前「幻想文学」誌のインタビューで「(発表活動をしていない時期も)書きためた作品はあります」との言があった。この作者にとっては書くことは呼吸することとほぼ同じレベルにあるのではなかろうか。単行本としては一体何年ぶりになるのか?「集成」が発売されるまでは、「山尾悠子の新刊」なんて奇...
以前「幻想文学」誌のインタビューで「(発表活動をしていない時期も)書きためた作品はあります」との言があった。この作者にとっては書くことは呼吸することとほぼ同じレベルにあるのではなかろうか。単行本としては一体何年ぶりになるのか?「集成」が発売されるまでは、「山尾悠子の新刊」なんて奇蹟に思えたものだ。それが、こんなに美しい、小さな書物であるなんて!鉱石のような文体も健在。読んでいる間、「夢の棲む街」を読んだ20年前に戻ってしまった。
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