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時間の比較社会学 の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2022/12/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

名著「気流の鳴る音」に続いて、1980年に書かれた本。今年4月に亡くなった東大教授・見田宗介氏がペンネームで書いている。 用語に硬いところがあり、読むのに最初、骨が折れるけれど、それを乗り越えるととても興味深い。原始社会や古代社会、近代社会の時間意識について述べた本は他にもあるけれど、この本では、それらを人類史の総体を見据えた社会システムの変化(=自然からの離脱と、共同体の崩壊)と関連づけて構造的にとらえ、「時間」と「貨幣」の相似性にも触れながら、近代を越える未来の充実した生のあり方まで展望しているところにある。 人類学から聖書や和歌、マルクスやプルーストまでカバーする幅広さと、追求するテーマの愚直なまでの一貫性に感心する。 この長い探究を貫くのは、10代の頃に著者をとらえたという「死の恐怖と虚無感」から解放されたいという問題意識だ。僕自身も子供の頃に「自分が死ぬとどうなるのか、その後も世界は続くのか、人類がいずれ滅びるならなぜ勉強とかするのか」などといった問いに悩まされた時期があった。それを学問の対象にして、そこから人間社会のダイナミズムを総体としてとらえるという離れ業は、著者にしかできない仕事だったと思う。そして結語で著者の熱い思いに触れて感動する。 著者は、生きる意味を未来に先送りし現在を疎外する近代の生き方から、「現在充足的(コンサマトリー)」な生き方へのシフトを提唱する。本書で紹介される人類社会の歩みをみれば、将来そのような生き方が一般的になるとすれば、自然から離脱し共同体を失った近代から、ふたたび新たな形の自然との交感と共同性の獲得がなされるはずで、それは地域分散の循環型社会になると思われる。著者が生きておられたら、そのことを確認しておきたかった。 この本に興味を持った方は、ぜひ著者の他の本にも手を伸ばしてほしい。「気流の鳴る音」や「宮沢賢治 存在の祭りの中へ」「現代社会の理論」あたりはもっと読みやすく、しかも本質的な問題意識は通底していることがわかる。

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2022/01/29

一口に「時間」といっても考え方や捉え方がたくさんあるんだなと思った。私がなんとなく感じている虚無感の原因が見えたような気がした。とにかく難しかったので数年後に再読したい。

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2021/12/08

https://longtime1116.hatenablog.com/entry/2021/12/08/123922

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2021/09/18

真木は厖大な資料を博捜し、古(今)東西の様々な共同体・社会における時間了解の形態を比較、そこでの個人が「共同性と自然」それぞれに対し「超越的であるか内在的であるか」により4つの類型に大別する。すなわち反復(原始共同体)・線分(ヘブライズム)・円環(ヘレニズム)・直線(近代)である...

真木は厖大な資料を博捜し、古(今)東西の様々な共同体・社会における時間了解の形態を比較、そこでの個人が「共同性と自然」それぞれに対し「超越的であるか内在的であるか」により4つの類型に大別する。すなわち反復(原始共同体)・線分(ヘブライズム)・円環(ヘレニズム)・直線(近代)である。直線的な時間感覚は、線分的な時間の「現在を帰無してゆく不可逆性」と、円環的な時間の「数量化・抽象化された無限性」という性質を継承しており、これが近代人を苛む死のニヒリズムを支えている。

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2021/05/27

冒頭、鼻血出るぐらい衝撃。 その事実に唖然。 え、それ、まさに、変えられない真実じゃん ってなる。 一気に読んでその世界に浸っちゃった方が読みやすい

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2018/07/17

当然私たちの寿命は有限だが、私たちの移動に必然的に伴う空間的な制約に比べたとき、寿命のような時間的な制約は過剰なほどに重要視されてきたといえそう。それを思えば一昼夜という標準を設けて時間を計量してきた近代への本書の批判は妥当に思える。終章ではあえてアカデミックな議論から離れたよう...

当然私たちの寿命は有限だが、私たちの移動に必然的に伴う空間的な制約に比べたとき、寿命のような時間的な制約は過剰なほどに重要視されてきたといえそう。それを思えば一昼夜という標準を設けて時間を計量してきた近代への本書の批判は妥当に思える。終章ではあえてアカデミックな議論から離れたような印象を受けたが、時間の問題から自我の問題への橋渡し的な役割を果たしているようだ。同じ著者の『自我の起源』も読もう。

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2018/02/17

表現が難解。内容は興味深いのだが、理解しづらい。 各時代、宗教などによって異なる時間の捉え方を比較している。

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2017/01/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2003(底本1981)年刊行。著者は共立女子大学教授。◆本稿を、社会学の本旨として現実社会を切り取ったということには躊躇を覚える。それほど新味のない(円環性と直線性。不可逆と輪廻など)議論、アフリカの例も子供の時間感覚を見れば簡単に理解できそうなものを小難しく展開するだけ。何のために論じているかも不明。社会と時間の多義的関係性なんて、時計のない社会、時間割のない社会を想像するだけで、あるいは農業や漁業を生業にしている人の話を聞きあるいは想像するだけで感得出来そうなのに…。

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2015/12/07

原始共同体、近代社会、ヘレニズム、へブライズム、それぞれの時間意識の区別と連関という内容は、とても興味深かった。 ただし、用語や言い回しが難解で、表面上しか理解できなかったのが残念。内容がわからなくても頑張って読んでいたが、近代の時間意識に入ったところで断念してしまった。

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2014/11/04

未開社会の時間意識との比較で、当たり前に持っていた「時間」や「未来」という概念について捉えなおすことができた。 時間意識は社会や環境によって異なり、共同体同士の意思疎通のためなど、必要に応じて生成されてきた。未来を思考するようになった私たちは、生の虚無から救われない代わりに、大き...

未開社会の時間意識との比較で、当たり前に持っていた「時間」や「未来」という概念について捉えなおすことができた。 時間意識は社会や環境によって異なり、共同体同士の意思疎通のためなど、必要に応じて生成されてきた。未来を思考するようになった私たちは、生の虚無から救われない代わりに、大きな可能性を手にした。 難しかったが面白かった。読んで良かった。

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