イワン・イリッチの死 の商品レビュー
金持ちで地位の高いイワンイリイッチが死ぬまでの過程を描いた話。 序盤は退屈だったけど、後半からはイワンイリイッチの心理描写にのめり込めて面白かった。 別に心の中では悪い事しようとしてる訳じゃないのに、周りの家族から蔑まれるのが辛いね。最後の力が出なくて「許してくれ」って言えないシ...
金持ちで地位の高いイワンイリイッチが死ぬまでの過程を描いた話。 序盤は退屈だったけど、後半からはイワンイリイッチの心理描写にのめり込めて面白かった。 別に心の中では悪い事しようとしてる訳じゃないのに、周りの家族から蔑まれるのが辛いね。最後の力が出なくて「許してくれ」って言えないシーンが悲しい。 最後は死の恐怖を克服し、幸せな気分で消える事が出来て良かった。 あとイライラとかだんだんとかの単語を、「むらむら」って表現するのがちょっと気になった。 主人公は今までの人生振り返り、歳をとるにつれ、加速度的に辛くなる事に気が付いた。そこそこ楽しいと感じていたこれまでの人生だけど、振り返ってみると、無意味で穢らわしいものに思えて来るらしい。 自分は死ぬ間際に、これまでの人生を振り返ってどう思うのだろうか? 後悔しないように海外行ったり色んなバイトするようにしてるけど、最近はそれがなんなんだ?って気持ちになる。海外行けば目新しい感じになって人間的に成長した気はするけど、結局帰ってこれば特に何も変わってない。変わってた所でも別にそれがなんなんだ?とはなる。
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病気のうちの孤独をおぞましいほど描いている。イワン・イリッチの心うちがよく分かる9章が特に心に残った。 奥さんをあまり大切にしていない以外は順調だった分、なぜ自分が精神的に孤独に死なないといけないのかに煩悶する彼の姿は、今にも私自身もそうなりそうなようで共感できる。そのなかで人間...
病気のうちの孤独をおぞましいほど描いている。イワン・イリッチの心うちがよく分かる9章が特に心に残った。 奥さんをあまり大切にしていない以外は順調だった分、なぜ自分が精神的に孤独に死なないといけないのかに煩悶する彼の姿は、今にも私自身もそうなりそうなようで共感できる。そのなかで人間誰しも死ぬということを隠さないゲラーシムは救いだったろう。
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こんな時だからロシア人の作家の本を。 100ページ程度なので読むのに時間はかからないが、それだけにうっかりするとスルスルと読んで引っ掛かりを逃してしまいそうになる。おそらくアンナカレーニナ、戦争と平和など他の作品の流れの中で読み込むことが必要な作品なのだろう。
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限りなくえげつないです。ですが、今も昔も病気はあるので、現代でもまったく当てはまる物語だと思います。医療人・将来の医療人の方には是非とも読んでいただきたい作品です。
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古典だが現代人に通じる。地位や見栄や表面的な人付き合いは結局、死ぬときには何も意味がないのだとつくづく感じた。自分も人生の折り返し地点にいるが、これからの人生は仕事や用事に忙殺されるのではなく、少しでも自分のため、自分が大切に思うことのために時間を使って死ぬ時に 満足できるような...
古典だが現代人に通じる。地位や見栄や表面的な人付き合いは結局、死ぬときには何も意味がないのだとつくづく感じた。自分も人生の折り返し地点にいるが、これからの人生は仕事や用事に忙殺されるのではなく、少しでも自分のため、自分が大切に思うことのために時間を使って死ぬ時に 満足できるような日々を過ごしたい。
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イワン・イリッチの生涯。小説の登場人物としては平凡。病気にかかって精神的に追い詰められていく描写がリアル。自分の内面、死(?)と対話する場面も印象的。イワン・イリッチとゲラーシムの場面和む。
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【感想】 前半はなかなか読み進めることができなかったが、後半から面白かった。死に対しての恐怖、家族への憎しみなどがリアルだった。 【あらすじ】 イワン・イリッチが亡くなり、葬儀が行われる。 イワンの過去について。妻プラスコーヴィヤとの結婚生活は上手くいかなかったが仕事は順調だった。イワンは家の手入れをしていて転倒して以降、腹痛に襲われるようになった。病気のことばかり考えてしまうので裁判の仕事に身を入れようとするが、痛みによって思い出してしまう。百姓であるゲラーシムに看病してもらうときは気分が良い。 妻や子供たちがイワンの病について気遣うが、偽りであると感じ余計に苛立ってしまう。肉体的苦痛、精神的苦痛を感じるが、最期は死の恐怖から解放され光を感じるのであった。
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思った以上に現代的、というか、通ずるところがやけにリアルに感じた。 死ぬ前まで、いや、死んでまでも、分からないこと、気づかない小尾、たくさんあるんあろなー。いろんな本読んで、少しでもいろんな大事なことに気付きたいと思う。すぐ忘れるけど。
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”なかなかヘビーだったが、最後のさいごに救いがあった。 ーーー すると、とつぜん、はっきりわかったーー今まで彼を悩まして、彼の体から出て行こうとしなかったものが、一時にすっかり出て行くのであった。四方八方、ありとあらゆる方角から。妻子が可哀そうだ。彼らを苦しめないようにしなけ...
”なかなかヘビーだったが、最後のさいごに救いがあった。 ーーー すると、とつぜん、はっきりわかったーー今まで彼を悩まして、彼の体から出て行こうとしなかったものが、一時にすっかり出て行くのであった。四方八方、ありとあらゆる方角から。妻子が可哀そうだ。彼らを苦しめないようにしなければならない。彼らをこの苦痛から救って、自分ものがれねばならない。『なんていい気持だ。なんという造作のないことだ』と彼は考えた。(p.101) ーーー ーーー 古くから馴染みになっている死の恐怖をさがしたが、見つからなかった。いったいどこにいるのだ? 死とはなんだ? 恐怖はまるでなかった。なぜなら、死がなかったからである。 死の代わりに光があった。 「ああ、そうだったのか!」彼は声にたてて言った。「なんという喜びだろう!」(p.102) ーーー <キーフレーズ> <きっかけ> 人間塾の2015年10月の課題図書。”
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『戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』といった大長編で有名なロシアの文豪トルストイだが、もしかすると晩年に書かれた本作こそが彼の最高傑作ではないかと疑いたくなるほどの名作である。 短い作品である。文庫本にして100ページにも満たない。四冊にまたがる『戦争と平和』等の大長編と比較...
『戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』といった大長編で有名なロシアの文豪トルストイだが、もしかすると晩年に書かれた本作こそが彼の最高傑作ではないかと疑いたくなるほどの名作である。 短い作品である。文庫本にして100ページにも満たない。四冊にまたがる『戦争と平和』等の大長編と比較して、見劣りしないと言ったら嘘になるだろう。だがその中身は、トルストイの全キャリアが凝縮されているかのように濃くそして重い。 とはいえ何かドラマチックな事件が起こるわけでもない。主人公イワン・イリイチという一介の役人が死ぬだけの話である。死ぬだけ? なるほど死は、三人称の死は日常茶飯事に過ぎない。しかし一人称の死は? 主人公を三人称にとどめたまま一人称の死を描くトルストイの手腕は秀逸である。 冒頭はイワン・イリイチの葬式から始まる。訃報を聞いた友人たちはみな一様に驚いたような振りをする。驚くわけがない。人が死ぬのは当たり前である。友人たちはみな一様に悲しいような振りをする。悲しいわけがない。死んだのは他人であって自分ではない。喜びの方がむしろ大きい。ハイデッガーの『存在と時間』で明らかにされる頽落が、これほど見事に描かれている場面はほかにない。 死の直前イワン・イリイチの病に関し、医者がさまざまな議論をする。イワン本人は何を言われているのか全く分からない。自分の生死という存在にかかわる問題と、身体の疾患という事物にかかわる問題が同列に扱われていることの矛盾。哲学における死と医学における死の絶対的な断絶は永遠に解決不可能であろう。 最後のシーン、死におけるイワン・イリイチの幸福感は、しかし読者を慰めることはない。そんなものがフィクションに過ぎないことくらい読者には分かっている。しかし私の死はフィクションではない。本書によってそれに気づかされてしまった読者は眠れぬ夜に悩まされることになる。他人に薦めるのもはばかられるほどの恐るべき傑作である。
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