秘密のファイル(下) の商品レビュー
本書の内容は、「CIAの対日工作」以外も、山本五十六死亡や日本軍暗号解読など、いろいろなことが書かれていて著述もしっかりしている。過去に論争になっていたことや、定説を覆すことを著者は特に書いているから、大部ではあるが、興味がある部分だけでも読むことをお薦めしたい。 以下、字下...
本書の内容は、「CIAの対日工作」以外も、山本五十六死亡や日本軍暗号解読など、いろいろなことが書かれていて著述もしっかりしている。過去に論争になっていたことや、定説を覆すことを著者は特に書いているから、大部ではあるが、興味がある部分だけでも読むことをお薦めしたい。 以下、字下げで引用部を示します。 評者が興味深く思ったのは岸信介評。 (1953年)9月18日付の(米陸軍情報部)ファイルも、 「彼はよく笑い、親しみがあり、マナーも魅力的で、非常に『西洋的』。たばこを吸い、スコッチウイスキーを飲む。…(中略)…東条の辞任要求を拒否して以来、彼の勇気に疑問を挟む余地はない。高潔で、スキャンダルとは無縁。」 と、岸を手放しでほめた。 (p222) とある。しかし「高潔」な岸信介は、CIAからカネをもらっていた人物でもあり、反安保つぶしに暴力団を雇わせた人物でもある。 当時、日本の総選挙にCIA資金が投入されたことは公然の秘密と化している。(p272) 「(全学連や新劇人のデモ隊を襲ったグループは)岸の巣鴨時代からの友人で右翼の大物、児玉誉士夫が全国から集めた暴力団員らだった」(p353) だからCIAが岸を手放しでほめている部分は、事実とは関係なく、ただほめたいからほめているわけだ。岸をエージェントにしたい理由が他にある。 米公文書の機密解除であらたな史料が公開されたことは重要だが、当然ながら公開された史料のさらに裏がある。
Posted by
- 1