仁淀川 の商品レビュー
引き上げ後、農家の嫁…
引き上げ後、農家の嫁として自分の役割を果たそうとする綾子。満州での過酷な体験を経てきたにもかかわらず、世間知らずのお嬢様は、ちょっとズレた感覚を持っているように感じました。当時の田舎が保守的であったのだろうか?しかしながら、この巻での母・喜和との関係は、なさぬ仲の母娘でありながら...
引き上げ後、農家の嫁として自分の役割を果たそうとする綾子。満州での過酷な体験を経てきたにもかかわらず、世間知らずのお嬢様は、ちょっとズレた感覚を持っているように感じました。当時の田舎が保守的であったのだろうか?しかしながら、この巻での母・喜和との関係は、なさぬ仲の母娘でありながら、心打たれるものがありました。両親と別れた後の綾子がどうなっていくのか、続きが読みたいです。
文庫OFF
母・喜和を描いた『櫂』に始まり、その出生前から追ってきた「綾子」の物語が終わったことが感慨深い。しかし彼女の人生は、筆者自身の人生と重なり、続いていく。一方で、両親である喜和と岩伍については、ほぼ一生を見届けたというずしりとした重さが残っている。今作では、戦後、あの岩伍が、東條英...
母・喜和を描いた『櫂』に始まり、その出生前から追ってきた「綾子」の物語が終わったことが感慨深い。しかし彼女の人生は、筆者自身の人生と重なり、続いていく。一方で、両親である喜和と岩伍については、ほぼ一生を見届けたというずしりとした重さが残っている。今作では、戦後、あの岩伍が、東條英機に騙された、自身の稼業は間違いだったとすっかり肩を落とした姿が非常に印象的だった。彼は人生の終盤、どんな心境で過ごしていたのだろうか。自分の一生は無駄だったと苦しんでいたのだろうか。後に娘が文筆界で大家となったことを知れば、さぞ万感の思いがあっただろう。
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櫂、春燈、朱夏に続く作者の自伝的長編の続編。それぞれ波乱に富んだ前三作に比して、戦後すぐの農家を営む嫁ぎ先での生活をを描く本作は時代的にも環境的にも面白みに欠けるか、と思い期待は抑えめで読み始めたが、裏切られた。 主人公が、父母から自立してゆく様に、強い感慨を持った
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10年ぶり?に読みました。 戦争体験を読みつつ、ふとウクライナのことを思い浮かべてしまいました。 こんなに悲惨な目にあっても、まだ歴史は繰り返すのでしょうか。 戦争以外の面では、やはり宮尾先生。 力強い文章で、本の中にひきこまれていきました。
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20190825位〜0905 櫂、春燈、朱夏に続く作者の自伝的小説の集大成。満州から引き揚げてきた綾子のその後。相変わらず、主人公に共感できない上にムカつく。田舎のしきたりに馴染めないのは分かるけど、姑のいちさんなんか全然意地悪とは思えない、可愛いものだよ。戦争も終戦後の日本...
20190825位〜0905 櫂、春燈、朱夏に続く作者の自伝的小説の集大成。満州から引き揚げてきた綾子のその後。相変わらず、主人公に共感できない上にムカつく。田舎のしきたりに馴染めないのは分かるけど、姑のいちさんなんか全然意地悪とは思えない、可愛いものだよ。戦争も終戦後の日本の混乱も、田舎には関係なかったみたいな。
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綾子の帰国、田舎での生活、結核への罹患、そして親との死別。 辛酸を嘗めてようやく帰国したと思えば、また違う苦労の種が撒かれ、にょきにょきと不満が成長していく様子が描かれている。 大人になるとともに言葉にせず呑み込んだ言葉があり、そうはいってもやはり綾子らしく向こう見ずなところもあり、人の心が一枚岩ではないことがよく窺える。
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※このレビューにはネタバレを含みます
朱夏のあまりの壮絶さに、高知へ戻れば暮らしも楽になろうと楽観して読み始めたけれど農村の因習の呪わしさというのは凄まじいものだな…。働き者は美徳と思っているけれど、いちをみているとそうとも言い切れないなと考えも変わる…。 要は何故農家の長男でありながら町の娘と結婚しようと思ったんだろう、と今更ながらの疑問も。生涯別家庭で通せると甘くみていたのかしら。 喜和の愛情には心救われるばかり。
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1日1冊綾子シリーズ。 びっくりするのが、この本の発売が2000年だということ。 櫂が出たのが1970年代ですからね。 これはファンは待ち望んだだろうなぁとおもいます。 戦争も終わり、満州から帰ってくると、平和が訪れるのですが その平和が綾子には耐えられなかったのだろうな。 エ...
1日1冊綾子シリーズ。 びっくりするのが、この本の発売が2000年だということ。 櫂が出たのが1970年代ですからね。 これはファンは待ち望んだだろうなぁとおもいます。 戦争も終わり、満州から帰ってくると、平和が訪れるのですが その平和が綾子には耐えられなかったのだろうな。 エリザベートみたいなところがあるこの綾子の性格が 可哀想だよなぁ。 櫂とか見ると、母親巴吉太夫のように育てば非常に才能をいかせただろうに、 あの喜和に(大嫌いですね本当に)甘やかされ続けたばっかりに幸せになれない綾子。 その綾子が高知から離れた農村で、どんどん追い詰められていくような話。 実際問題、綾子はその後小説に生きがいを見いだし、 命からがら満州から帰ってきた夫を捨て、借金を抱えて 東京へと出てくる。 しかし、2000年になってもまだ、そのあたりの問題については語られず、あと20年、をまたずに宮尾さんがお亡くなりになってしまったので綾子のその先を知る由がありません。 それが非常に残念です。 いろいろネットで晩年の話を見ると、東京からばっと高地に移住したりしてる。 それを次女がそういう人だからと語るのですが、 介護も全て語るのは次女。 長女美耶は。 気になります。
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「櫂」が太宰治賞を取り、後「朱夏」、「春燈」に続く。そして4部作最後となるのが「仁淀川」だとはこの本を購入するまで知らなかった。 たまたま「櫂」を先に読んでいたので順番としては最初と最後を読んだ事になる。 やはり宮尾登美子の真骨頂は、内省(内声)描写だろう。くどいと思うことも...
「櫂」が太宰治賞を取り、後「朱夏」、「春燈」に続く。そして4部作最後となるのが「仁淀川」だとはこの本を購入するまで知らなかった。 たまたま「櫂」を先に読んでいたので順番としては最初と最後を読んだ事になる。 やはり宮尾登美子の真骨頂は、内省(内声)描写だろう。くどいと思うこともあるけれど、ああでもない、こうでもないと色々悩む中、ひとつの方向性を出してそれに進んでゆく力を感じる。 少ない宮尾登美子経験で言えば、彼女の作品の最後は随分とあっけない。ここまで登場人物の内面を語らせていながら、作家「宮尾登美子」を生み出した肝心の部分については、全く触れられずに終わっている。 これまた偶然、私の憧れる背の高い女優が、文庫本の最後に解説ならぬ感想文(?)を書いている。彼女も宮尾登美子が「生まれる」キッカケについて興味を持っているのだが、今年この著者は亡くなられた。
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昨年逝去された著者の自伝的小説ということで、手にとりました。 書き出しの仁淀川とその周辺の情景表現に、思わず感嘆! 満州からの引き上げ、いつか故郷に帰れるにという、その気持ちの支えが一挙に噴出したかなのうな、迫ってくるものがありました。 焼きだされた都市と、食糧のある田舎。...
昨年逝去された著者の自伝的小説ということで、手にとりました。 書き出しの仁淀川とその周辺の情景表現に、思わず感嘆! 満州からの引き上げ、いつか故郷に帰れるにという、その気持ちの支えが一挙に噴出したかなのうな、迫ってくるものがありました。 焼きだされた都市と、食糧のある田舎。没落してしまった父と兄。頑強な姑と病弱な嫁である私。 夢見た故郷での暮らしの現実の多難と、若さゆえに測りきれなった両親の心が切なさを誘います。 自伝小説の年代を遡って読んでみようと思います。
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