アップ・カントリー(下) の商品レビュー
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(上巻の感想からの続き) 今更ながら気づかされた事だが、デミルの小説では物語の進行に凄腕の主人公+美人の助手が常に設定されていること。今回は特にそれが目立った。 というのもブレナーが元上司カール・ヘルマンの要請でヴェトナムに旅立ち、彼の地へ降り立つまでの顛末はなかなか物語に乗れず、実際作者の筆致も硬いような印象を受ける。これが上巻9章の233ページのスーザン・ウェバーとの邂逅からガラリと印象が変わる。会話にリズムが生まれ、デミル節ともいうべきウィットに溢れたセンテンスが怒濤のごとく現れるのだ。 このスーザンを最後の最後まで出演させることを作者が当初考えていたのか、判らないが恐らくは違うと思う。デミル自身、何か筆が乗らないと感じ、ここいらでブレナーに女でもあてがうか、おっ、調子が出てきたぞ、このスーザンを単にこれだけのために捨てるのは勿体無いな、よしスーザンをヴェトナムでの案内役に決めよう、さてそろそろヴェトナムの奥地へブレナーを送り込むか、しかし今からスーザンを排除してストーリーが進むだろうか、よし、決めたスーザンを政府機関のエージェントにしちゃおう、とこのような心の動きが行間から読み取れるのだ。作者自身、ヴェトナムの奥地での戦争の傷跡を記していくのには心的負担を伴うのに違いない。 この狂気の事実を語るためには一服の清涼剤、精神安定剤が必要だったのだろうし、そしてスーザンの役割は正にそれを担っている。スーザンはブレナーの、というよりデミルのセラピストだったのだろう。 今までミステリというよりもヴェトナム回想録だと述べてきたが、とはいえ、事件の真相は驚くに値する。最後にかなりの修羅場が用意されている。 複数の政府機関がそれぞれの定義における正義の名の下に丁々発止の駆け引きを繰り広げるあたりは息が詰まるほどだ。 殺人事件の犯人が次期アメリカ大統領候補と評されている現役副大統領だったというスキャンダラスな真相はよくもまあこんなことが書けるものだと感心する。アメリカという国の懐の深さというか、割り切った考え方というか、とにかく日本ではまず書けないだろう。 今になって思えばこれはデミルなりのブッシュ大統領批判ではないだろうか? このブレイクという副大統領の哀れな姿はブッシュ大統領を嘲笑しているように思えるのは私だけだろうか? ブレナーは周囲の制止を振り切って副大統領その人に尋問を行う。その結末は濁されたままで終わり、またブレナー自身の去就も詳らかにされないままヴェトナムを発つ辺りで物語は閉じられる。 恐らくブレナーは二度とデミル作品には登場しないだろう。登場すればアメリカがどのような正義を行ったかが判るが恐らくはそこまでは作者は書くまいと思う。それが作者の、アメリカの良心だからだ。 旅は目的そのものよりも過程が大事、最後にデミルはブレナーの口からそう述べさせる。 まさにこの小説の内容そのものを云い表している。
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上巻は謎の美女と今(執筆当時)のベトナムを観光という視点で描き、後半はベトナム戦争の出来事を具体的に描きながら、今回の旅がようやく動き出す。 しかし、まあ、長い。長い小説。ベトナムに興味がある方にはお勧め。 長い小説の終わりにしては。。。私は気に入らなかった。
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下巻は、ポールのベトナム戦争経験をなぞるように話が進みます。日本人には分からないことですね。 そして、ベトナムの警官マン大佐とは、立場こそ違え、最後には自分の任務に忠実な者同士として心が通じ合った様に見えます。 事件がどう決着したのか描かれていません。気になるところです。
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必死で読んでやっと読み終えました。上下巻合わせたら1600ペ-ジの長編だった。最後近くマン大佐につかまって公安部に引き立てられた時本当に心臓がドキドキしました。昔日本にも特高警察があり、生きて帰れない場所と聞いてました。こわあい。ス-ザンとのやりとり、マン大佐とのやりとりがじつに皮肉たっぷりで会話の面白さを満喫しました。主人公にも読者にも知らされていなかった真実が、だんだんとわかってゆきます。そして最後に・・・。 時間さえあれば、ぜひ一読ください。4人の人を殺したのはやはりまずいでしょう。必要なかったと思います。
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文庫本上下巻で1600ページ弱におよぶミステリー大作である。 この長さを一定の緊張を保ちつつ読者を惹きつけ続けられるネルソン・デミルはやはり偉大なストーリーテラーであろう。 今回も主人公はポール・ブレナー、「将軍の娘」と背景構成は同じにもってきている。しかし、今回の舞台はベトナ...
文庫本上下巻で1600ページ弱におよぶミステリー大作である。 この長さを一定の緊張を保ちつつ読者を惹きつけ続けられるネルソン・デミルはやはり偉大なストーリーテラーであろう。 今回も主人公はポール・ブレナー、「将軍の娘」と背景構成は同じにもってきている。しかし、今回の舞台はベトナムに置きブレナー准尉の新たな舞台での活躍が新鮮である。 アメリカ人にとってのベトナム感は、我々日本人とは異なり一種独特の郷愁があるようで物語の通奏低音のように全編にわたって散りばめられており、単なる人探しの話を超える含みを与えているように思え、アメリカ人のミステリー作家にありがちな勧善懲悪、ヒーロー万歳的な軽さがない。 一方、物語の会話に含まれる軽妙洒脱でウィットにあふれるデミル節は健在であり、いいリズムとなっており読むものを飽きさせない。
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ようやく読破。 結局上下巻で1600頁ある大作。 アメリカとベトナムの関係の描写が詳しくなされ勉強にはなる。 いわゆるベトナム戦争が一体何であったかの一つの答えを導き出そうとしたのだろうか。 紅一点の女性スパイが良い味わいを導き出している。 この女性の存在自体が現実離れしている感...
ようやく読破。 結局上下巻で1600頁ある大作。 アメリカとベトナムの関係の描写が詳しくなされ勉強にはなる。 いわゆるベトナム戦争が一体何であったかの一つの答えを導き出そうとしたのだろうか。 紅一点の女性スパイが良い味わいを導き出している。 この女性の存在自体が現実離れしている感もしないでもないが。
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最初は面白かったのですが、デミルの描くアイルランド系男性の典型のようなマッチョっぽい主人公に厚みがなく、最後は疲れてしまいました。
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