村上春樹全作品 1990~2000(7) の商品レビュー
「ひとつ確認しておきたいのは、欠落そのものは人間存在にとって決してネガティブなものではないということです。欠落部分というのはあって当然です。」(p321) 「でも僕は小説の本当の意味とメリットは、むしろその対応性の遅さと、情報量の少なさと、手工業的しんどさにあると思うのです。そ...
「ひとつ確認しておきたいのは、欠落そのものは人間存在にとって決してネガティブなものではないということです。欠落部分というのはあって当然です。」(p321) 「でも僕は小説の本当の意味とメリットは、むしろその対応性の遅さと、情報量の少なさと、手工業的しんどさにあると思うのです。それを保っている限り、小説は力を失わないのではあるまいか。(p331) 数十年ぶりに村上春樹を読みました。映画きっかけでしたが、とても有意義な出会いでした。 村上さんに興味が湧いて、村上ラジオを初めて聴きました。村上さんはスティービーワンダーと同い年なんだって。
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村上春樹全作品 1990~2000 第7巻 約束された場所で 村上春樹、河合隼雄に会いにいく (和書)2008年12月25日 23:25 2003 講談社 村上 春樹 宗教と宗教批判について考えさせられました。マルクスが言う宗教批判とオウム真理教という宗教を照らし合わせるとそ...
村上春樹全作品 1990~2000 第7巻 約束された場所で 村上春樹、河合隼雄に会いにいく (和書)2008年12月25日 23:25 2003 講談社 村上 春樹 宗教と宗教批判について考えさせられました。マルクスが言う宗教批判とオウム真理教という宗教を照らし合わせるとそこにみられる差異がクローズアップされる。イエスにはマルクスがいう宗教批判があったのではないか?麻原彰晃にはそこが本質的に違うものに入れ替わっているように感じた。 マルクス著「ヘーゲル法哲学批判序説・抜粋」 「宗教の批判は、人間が人間にとって最高の存在であるという教えでもって終る。したがって、人間が貶められ、隷属させられ、見捨てられ、蔑視された存在となっているような一切の諸関係 - 畜犬税の提案にさいして、或るフランス人が「あわれな犬よ、おまえたちを人間並みにしようというのだ!」と叫んだ言葉でもっともみごとに描きだされているような諸関係 - をくつがえせという無条件的命令をもって終るのである。」 批判と救済・癒し・・・。宗教批判と宗教とは何か?救済・癒しという口当たりに良い言葉があるがそれは何なのだろうか? 生贄の論理・支配者の論理・・・批判すること自由・倫理を見いだすこと・・・それを隠蔽してしまうのではないかを思う救済・癒し。私は癒しという言葉が胡散臭くて仕方がない。でも癒しが人間にとって大きな影響を与えているのも確かだろうと思う。宗教批判と癒しがどこで結びつくのか?それは宗教批判が宗教と何処で結びつくのかという疑問を与えられる。 癒しとは阿片のことであるのかも知れない。マルクスは「宗教は民衆の阿片である」と言ったらしい。柄谷行人はそれは「そういうものがないとやっていけないどうしようもない現実がある。それをみなければならない。現実批判に転化しなければならない。」というらしい。私は癒しを胡散臭くて嫌いだと言ったが、しかしそれは阿片であり宗教であるのだろう。それならば現実批判とは何か?それは宗教批判というものも含まれるのだろうと思う。それは諸条件をくつがえせという無条件的命令を言っているのだろう。オウム真理教を宗教批判とをいう理念でみないと自由はないと思う。そして無条件的命令とは倫理ではないのか? 批判と癒しが結びつくとしたら宗教批判・現実批判と宗教・阿片ということになりそうだ。 今後の課題だろうと思う。事前の立場に立つこと統整的理念とは癒し批判であり阿片批判であり宗教批判であるのだと思う。
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ポスト・アンダーグラウンド オウム信者たちのインタビューを集めた「約束された場所で」 インタビュー文藝春秋98年4月号から11月号 1997年3月 アンダーグラウンド→出版後、オウムとは一体何だったのかという疑問 日本社会というメインシステムから外れた人々を受け入れる有効なサブシ...
ポスト・アンダーグラウンド オウム信者たちのインタビューを集めた「約束された場所で」 インタビュー文藝春秋98年4月号から11月号 1997年3月 アンダーグラウンド→出版後、オウムとは一体何だったのかという疑問 日本社会というメインシステムから外れた人々を受け入れる有効なサブシステム 狩野浩之「ひょっとしてこれは本当にオウムがやったのかもしれない」 波村秋生「ノストラダムスの大予言にあわせて人生のスケジュールを組んでいます」 西武運輸 もんじゅの建設現場 父親 地元福井で共産党の指導的な地位→子供は就職先を見つけられない 寺畑多聞「僕にとって尊師は、疑問を最終的に解いてくれるはずの人でした」 「こういうのもまたオウムのせいにされちゃうのかねえ」→翌々日強制捜査 増谷始「これはもう人体実験に近かったですね」 93年ごろ 教団の暴力性 逆さ吊り 科学技術省 ゴキブリも殺せない→最初のうちはオウムがやったとは考えられない→95年8月 「やったのかもしれない」日記を読み返してみると、気持ちがオウムを離れて行ったのはその頃 神田美由紀「実を言いますと、私の前生は男性だったんです」 細井真一「ここに残っていたら死ぬなと、そのとき思いました」 岩倉晴美「麻原さんに性的な関係を迫られたことがあります」 電話がかかってきて、「生理はこの前いつだったんだ?」 迫られたんですが、私はがちがちになっていました。…それでわたしががっちがちになっているのがわかったんでしょう。途中でやめました。 高橋英利「裁判で麻原の言動を見ていると、吐き気がしてきます」 河合隼雄氏との対話 1997年5月17日対談 『アンダーグラウンド』をめぐって もし、冷戦体制が続いていたら、オウムのようなものはできにくい。 1998年8月10日対談 「悪」を抱えて生きる 箱庭療法 イメージ 言語化しなくても治る。 小説家になってびっくりしたこと→真似したいスタイルの小説家がいなかった→早起き、運動、体力づくり 源氏物語のすごさ 千年前、一人の女性 村上 小説の登場人物はだいたい独り 両親、子ども、奥さんがでてこない。 友達 娼婦 何のために結婚して夫婦になるのか。苦しむため、井戸掘りのため。 風の歌を聴け 死とセックスに関しては書くまいというテーゼのようなものを立てた。☆テーゼ=命題、定立 ノルウェイの森 セックスと死のことしか書いていない。
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アンダーグラウンドを読んだときとは別の怖さを感じた。自分の中にオウム真理教信者のインタビュイーの考え方に似た部分があり、無関係な愚かな集団が起こした事件と言う認識から、自身が加害者側に回る(カルトにはまる)可能性を感じた点。 河合隼雄氏との対談は哲学的考察に満ちてて漠然としたも...
アンダーグラウンドを読んだときとは別の怖さを感じた。自分の中にオウム真理教信者のインタビュイーの考え方に似た部分があり、無関係な愚かな集団が起こした事件と言う認識から、自身が加害者側に回る(カルトにはまる)可能性を感じた点。 河合隼雄氏との対談は哲学的考察に満ちてて漠然としたものを言語化される感じを受ける。 物語性、システムに適応できないものが排除される現代、死を考えなくなった時代
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
地下鉄サリン事件の被害者にインタビューして書かれた「アンダーグラウンド」とセットで読むと分かりやすい。こちらは信者たちの入信にいたった背景が細かく記述されている。ベストセラー作家の顔と全く違った新しい面がみえる。誰もこの大事件の背景を細かく調べ記録した者は無かった。この大作業をやり遂げたことは、後世に名を残すすばらしい労作だと思う。
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・「約束された場所で underground2」に関して オウム教信者へのインタビュー集。この手の新興宗教にはまる人に共通するのは、非常にインテリである、現世を諦めているもしくは軽んじている、来世・死語の世界を重んじている。 信者達を良く言えば「素直で純粋」悪く言えば「選民的で...
・「約束された場所で underground2」に関して オウム教信者へのインタビュー集。この手の新興宗教にはまる人に共通するのは、非常にインテリである、現世を諦めているもしくは軽んじている、来世・死語の世界を重んじている。 信者達を良く言えば「素直で純粋」悪く言えば「選民的で単純な馬鹿」としか言いようがない。 村上さんはインタビューセンスも抜群だ。だからこそオウム現役信者、元信者達の言ってることを読んでいて非常に胸くそ悪くなってきた。 ・「村上春樹、河合隼雄に会いに行く」に関して 昔から読みたくて先送りしていた本。 心理学者の河合氏が既に亡くなっていたことには驚いた。この二人の対談は正に秀逸。交わされる言葉の全てが多くの示唆に富んでいた。 「物語で人間は何を癒すのか」「個性と普遍性」「暴力性と表現」が特に印象に残る。 河合さんが「魂」という言葉を持ち出しても全くスピリチュアルな感じはせず、理性的な心理学者の言質に聞こえるから不思議だ。そして素敵な人だ。
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『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』 この対談を読んでいて思ったのはお二人の「当意即妙」な応答と「かゆいところに手が届く」的な視点の共通性。対談のクオリティの高さは読者の知的好奇心を充分満足させると思う。《殺すことによって癒される人》《結婚と「井戸掘り」》などとても興味深く読める。...
『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』 この対談を読んでいて思ったのはお二人の「当意即妙」な応答と「かゆいところに手が届く」的な視点の共通性。対談のクオリティの高さは読者の知的好奇心を充分満足させると思う。《殺すことによって癒される人》《結婚と「井戸掘り」》などとても興味深く読める。 お互い人見知りな性格ということだが、会話が弾んだのには、春樹氏のいうように河合先生が「10まで説明しなくても、3くらいですっと受け入れてくれる」人であり、「決して自分の考えで相手を動かそうとしない」ところにあったからだろう。 河合先生のふわっとした柔らかいお人柄とは対照的な、心理療法家として優秀な経験則も垣間見られ、河合ファンにとっても嬉しい対談である。会話の中で、春樹氏の過去の作品のテーゼや自分の小説に求めるものの確固たる姿勢が表現され清々しさを感じた。 『約束された場所で』 オウム真理教の信者のインタビューの中で、春樹氏が「ちょっと待って下さい」と信者の発言のロジックに制止を入れる場面があり、それが普通の生活をしてきた私にとっても共感を覚える部分であった。 しかし、普通の生活をしてきた私達一般人と、カルト教団の狭いシステムにいた彼ら信者の世界とは、実によく似た社会構造が形成されていることが浮き彫りになってくる。あちら側とこちら側を隔てているものは「遥かに薄っぺらい壁」であることが本書で実感できる。
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第7巻は、地下鉄サリン事件の被害者をインタビューした第6巻につづき、加害者であるものオウムの人たちにインタビューしています。それに、河合隼雄との対談集。ここにはねじまき鳥のはなしやオウムほか、春樹ワールドの一端が本人により語られます。またねじまき鳥を読もうと思いました。
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「約束された場所で」は「アンダーグラウンド」の続編に位置する作品。地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の信者に対するインタビューを中心に構成されているが、どの信者も「自分のルール」と「社会のルール」の狭間で悩まされている人が多いという印象。こうした問題は多かれ少なかれ私たちの誰...
「約束された場所で」は「アンダーグラウンド」の続編に位置する作品。地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の信者に対するインタビューを中心に構成されているが、どの信者も「自分のルール」と「社会のルール」の狭間で悩まされている人が多いという印象。こうした問題は多かれ少なかれ私たちの誰しもが抱えている問題であるがゆえに、怖さが増幅される。 「河合隼雄に会いにいく」は心理学者の河合隼雄との対話を中心に構成されている。どの話も興味深いが、「悪」というものが現代社会において持つ意味合いについての対談は特に興味を持てた。
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