疲れすぎて眠れぬ夜のために の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
明治維新以来、刻苦勉励を推奨して、常に「ワンランク上の自分へ」を推奨してきた日本。 確かに雑誌のコピーひとつでも「もっとおしゃれに」「もっとお金を稼ぐ方法」「もっと時間を上手く使う方法」「もっと若返るために」など「よりもっと」が目立ち、そういったメディアに影響を受ける情報社会を生きるわたしたちは常に無意識に煽られる存在かもしれない。 そんな中でこの本の第一章は「心耳を澄ます」〜ワンランク下の自分に〜から始るので、目から鱗。人間の心身の有限性を受け入れられることこそ、大人ではないかと思った。 〜ほんとうの利己主義とは〜 筆者は、不快なことにすぐ「キレる」少年は真に利己的ではないと言う。 「利」されているのは、「己」ではなく、己を構成するごく一部でしかない局所的な快感や幻想的な欲望。むかつくという「不快感」の手っ取り早い解消や、セックスやドラッグのもたらす「快感」の達成。 筆者はそしてこうも言う。「ここで言う「己」とは、瞬間的な劣情や怒りや憎しみのことではありません。もちろんそのようなものを含んではいますけれど、それ以外の無数のファクターを取り込んだ、開放的なシステムです。それをどうバランスよい仕方で立ち上げるか、それが一番大切なことなのです」 人は人の間で生きているのだから、自分だけバランスが取れていてハッピーということはありえないのかもしれない。 自分がバランスを取れているということは、本来、周囲への貢献にもなるはずだ。良い番欄酢は伝染し、繋がり、拡がっていくという意味で、真に利己的ということは、利他性にも通じる。 〜人はどうしてオヤジ化するのか〜 筆者は、さらにここで「真に利己的にふるまう」ことを怠った人間は、逃げる先がないという。「逃げる場を見つけられず、そのまま不愉快な人間関係にとどまっているうちに、やがて「耐える」ということが自己目的化し、「耐える」ことのうちに自己の存在証明が凝縮されてしまったような人間が出来上がります」P23 不愉快な人間関係に耐えている自分を「許す」か、あるいは「誇る」か、とにかく「認めて」しまったのです。そして、その後、「不快に耐えている」ということを自分の人間的な器量の大きさを示す指標であるとか、人間的成熟のあかしとか、そういうふうに合理化してしまったのです」P23 無理しすぎること、がまんしすぎることはいけないという。 なぜなら、筆者の一番大事だということ、 「心耳に澄ませて無声の声を聴く。」 ことが出来なくなるから。 確かに、リラックスしているときこそ、自分の向かっていきたい方向がわかったり、インスピレーションが冴えたり、自分の真の感情に気がついたりする。 「心耳に澄ませて無声の声を聴く」 良い言葉だし、忘れないよう心にメモしておこう。
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これはやばい。 ほんとにこの人の社会を見る目は誰かの受け売りではなくオリジナルで正確だよねえ。 私をさいなむ問題点もここにすっかり分析済みですよ。 *************************** これまでは「いくら欲しいものを手に入れても、欲望が満たされずに常に...
これはやばい。 ほんとにこの人の社会を見る目は誰かの受け売りではなくオリジナルで正確だよねえ。 私をさいなむ問題点もここにすっかり分析済みですよ。 *************************** これまでは「いくら欲しいものを手に入れても、欲望が満たされずに常に飢えている人間」が僕たちの生きるモデルでした。 「向上心を持つ」というのは、ある意味では「満たされない欲望に灼かれる」ということですから。 「こんな生ぬるい生き方にどっぷり浸かっていてはオレはダメになる。こうしちゃいられない」と苛立って、「もう一ランク上の自分」を志向する人間、そういう刻苦勉励型の人間を家庭も学校もメディアも「望ましい人間」として推奨していました。明治維新以来ずっとそうでした。 確かに、そういう「不充足感」をバネにして生きるということも堂々たる生き方だとは思います。けれども、ぼくはもう、そういうのは辞めた方がいいんじゃないかと思うんですよ。(中略) 自分の可能性を真実のはとてもよいことです。でも、可能性を信じすぎて、できないことをやろうとするのはよいことではありません。だって、ずっと不充足感に悩み、達成できないというストレスに苦しみ続けることになりますから。 どこかで自分の持ってる知性的な、あるいは身体的な資源の限界を知って、それを優先順位の高いものから順番にうまく配分するということも覚えなくてはいけません。 学生を見ていると、勉強して、バイトやって、クラブやって、セカンドスクールで資格を取って、エステに通って、駅前留学して、海外旅行して……とものすごくタイトでハードな生活設計をしている人がたまにいます。 一日24時間しかないんだから、それは無理でしょ。それでは、体が持ちません。 精神的にも体力的にも、使える資源には限界というものがあります。目標を適度に設定し、資源を分配する先に優先順位をつけないと、人間は壊れます。人間て、わりと簡単に壊れます。(中略) でも「一ランク上の自分」に取り憑かれた人は、身体や精神が悲鳴をあげるまで痛んでも、なかなか休みません。疲れて立ち止まると、そういう弱い自分を責めます。 それは自分の身体に対しても、精神力に対しても酷ですよ。 向上心は確かにある方がいい。でも、あり過ぎてはいけない。 人は夢と現実を同時に生きなければなりません。この匙加減がとても難しいのです。 ****************************** 男の中には、自分の本業について、「オレの仕事ですか?いやあ、つまんない仕事ですよ、ほんとに」というようなことを言いながら、非常に質の高い仕事をしている人がけっこういます。むしろ、スケールの大きなビジネスマンにはそういうタイプの方が多いのです。「なんとなく、こんな仕事する羽目になっちゃって……」というふうにたらたらしている人が思いがけなく大きな仕事をしたりするのです。 でも、「私の仕事?くっだらない仕事よ。そんな話、聞いてもつまらないって」とへらへらしながら、その実すごくレベルの高い仕事を達成している女性ということになると、これはまことにレアです。 女性で成功している人は、まず例外なく大まじめなのです。 それは女性にとっては、「仕事をする」ということが、「男性中心主義に抗議して、社会的リソースの公平な分配を要求する」という非常に「まじめな」要請から出発して獲得されたものなので、あまり「へらへら」こなすわけにはゆきませんから。 ほんとうは「へらへら」こなして頂いてもぜんぜん構わないし、そうする方が結果がよい場合が多いんですけれど、女性にはたぶんそのやり方がよく分からないのでしょう。 この「へらへらと質の高い仕事をする」ためのノウハウを知っているか知らないかという違いが、同じような社会的プレッシャーを受けながら耐えられる人と潰れる人の違いを生み出しているのではないかと思います。
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タイトルと中身に・・・?って感じ。 図書館の分類は文学ってあるけど,ちょっと違うような感じがする。 内容的にはまずまず面白かった。
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背伸びしすぎてるあなたへ。 そんな頑張り過ぎないで、「1ランク下の自分」を目指しませんか? でも、考えるところはしっかり意識しないと、ただの「甘やかし」になっちゃうよ? 僕はこう考えてるけど、あなたはどう?… そんな自問自答ができる本。本のタイトルだけみると、ほっこりのん...
背伸びしすぎてるあなたへ。 そんな頑張り過ぎないで、「1ランク下の自分」を目指しませんか? でも、考えるところはしっかり意識しないと、ただの「甘やかし」になっちゃうよ? 僕はこう考えてるけど、あなたはどう?… そんな自問自答ができる本。本のタイトルだけみると、ほっこりのんびり系かと思いきや、そこはおじさま哲学者内田樹氏、ぬかりなくいろんなことを書いてます。勉強や就活でガス欠しそうなとき、休憩がてら是非どうぞ。視野は間違いなく広がります。 (福岡教育大学 院生)
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2012.03.30. 最近、まさにタイトルのような心持だったので、久しぶりに借りてみました。体は全然疲れていないんだけど、心はオーバーヒート。心というよりは、脳、かな。我慢は体に悪い、それはそう。よどみなく語られる言葉は、やはり染み込みやすいです。 2010.03.10. 第...
2012.03.30. 最近、まさにタイトルのような心持だったので、久しぶりに借りてみました。体は全然疲れていないんだけど、心はオーバーヒート。心というよりは、脳、かな。我慢は体に悪い、それはそう。よどみなく語られる言葉は、やはり染み込みやすいです。 2010.03.10. 第1章が特に興味深い。やはり、ブログより本の方が断然読みやすいし、頭に沁みこみやすいと思う。★4つ
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ある程度同じことの繰り返しではあるのだが。 色々思い当たる節はあり。 あと、武道が興味深いのだけど、やったことがないので想像するだけ。
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将来のキャリアビジョンについて思い悩んでいる時に友人から貰った本(誰かが困っている時、言葉ではなく、さらりと本をプレゼントできるってイケメン。私も今度真似しようww)。スーパーウーマンはアメリカの文化や歴史に根付いたもので、それをそのまま日本に輸入するのは無理があるという視点を得...
将来のキャリアビジョンについて思い悩んでいる時に友人から貰った本(誰かが困っている時、言葉ではなく、さらりと本をプレゼントできるってイケメン。私も今度真似しようww)。スーパーウーマンはアメリカの文化や歴史に根付いたもので、それをそのまま日本に輸入するのは無理があるという視点を得た。ただ、具体的に日本型スーパーウーマンとは何なのかが示されていなかったのが残念である。しかし、病んでいた時にこの本を読んで救われたので星は5つ☆☆☆☆☆
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内田先生の本好きだ〜。「働くことに疲れたら」という章は必読。「疲れたら働くな」なんてことは書いてなくて、ちゃんと読むとモチベーションがあがります。考えようによっては。女性のサクセスストーリーについて書いた文章も、とりようによっては女性差別になり兼ねないけどおもしろかった。
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