勝つための状況判断学 の商品レビュー
物事を上手く進めるためには、的確な状況判断が必要だ。誤った認識や情報源に基づいたり、そもそも情報自体が無い、正確性や鮮度が不十分(古い情報)、かつ自分たちの置かれた状況の把握が不十分であれば、次の手を成功させる要因は運だけになる。仕事も戦争も運に頼って命運を預けることなど出来ない...
物事を上手く進めるためには、的確な状況判断が必要だ。誤った認識や情報源に基づいたり、そもそも情報自体が無い、正確性や鮮度が不十分(古い情報)、かつ自分たちの置かれた状況の把握が不十分であれば、次の手を成功させる要因は運だけになる。仕事も戦争も運に頼って命運を預けることなど出来ないから、しばしばその手が本当に正しいのか、成否の確率や、実行のタイミングなどを考え、最終的にはそれを率いるリーダーの判断に任せる。リーダーは日常的に集めた情報や、今見えている状況の中から最適な手段を選択し、または信頼する部下の進言の真意を読み取り、実行を決断する。その過程においては、何より重要なのは状況判断力である。 本書はそうした戦場における状況判断について、歴史上の名将と呼ばれる人々を例に挙げ、解説を加えながら、読者の行動・活動にヒントを与えてくれる一冊だ。 前述したような、状況判断の場面において、最も重要なのは、いかに正確で鮮度の高い情報を自分が持っているかという事である。ビジネスシーンなら自分1人で全ての現場の情報を見ることは不可能であるから、部下一人一人の把握・分析・考察にしばしば頼る。その部下からの正確で適度な頻度の報告も必要だろう(実際には、報告する暇間ないほど忙しいという部下もいるが、そうした部下は始めから報告の内容や仕方の工夫が織り込まれていないか、見込みの甘さ、予見力の甘さが目立つ)。 信頼できる部下からの適度な報告や、上から降りてくる経営状況、周りから入手する社会の状況などを総合的に収集し、情報を状況に合うように統合していく。余分な情報や真偽が定かでない情報をスクリーニングしながら、必要な要素のみを効果的に判断材料にしていく。 言葉で書けば、当たり前なことすぎて、簡単に見えてしまうが、実際のビジネスシーンではそう上手くいく事は少ない。クラウゼビッツが言うように、戦中は4分の3が霧の中であり、相手の出方・考え方・裏をかこうとする狡猾さなどはとても自分の理解を超える場合だってよくある。100通りの考察をして全てのケースに充分な備えをする事は非効率だし、会社ではそんな予算も出ない。だからこそ、日常的な情報収集とその処理能力は重要で欠かせない。 昨今、AIなどが発達して人がそうした判断や予測を大きく見誤るリスクは減ってきた。だが、相手・社会にはまだまだ人の判断が介在し、寧ろ大半は人間が動かしている。100%機械に判断させるだけの世界になれば、その判断に任せておけば安心だが、未だそこまでは到達していない。よって引き続き状況判断するのは人であり、自分もその1人だ。 筆者はだからこそ、歴史上の人物が何をもとにどのような判断を下したか、そしてそれは当人のどのような能力により成り立ってきたのかを教えてくれる。考察の順序、手順は現代に蘇り、各国の軍隊の思考手順としても明文化されてきた。それをしっかりと頭に叩き込むのは勿論のこと、それを実現に至らせる訓練、最終的には動かす人間の体力や勇気の重要性にも言及する。 歴史に学べと言うが、歴史の受け売りではない、現実に直面した状況から、自分の知恵と決断によって物事を前に進め、それらを中間目標の達成という着実な歩みにより目的・ゴールに辿り着かせる。 いつの時代にも名将、名経営者、名リーダーは存在してきたが、新年に基づき、苦難を乗り越え成功に導いてきた背景には、名将達が行ってきた状況判断があってのことだ。私自身が今現実に、会社の中でそうした判断や、新しい取り組みへのチャレンジをしていく中で、名将達の思考や決断に学び、何年かかってでもやり遂げる硬い信念を持つ必要がある。その事の重要性を改めて認識する機会となるような一冊だ。 そして何より自分もいずれは今の職場を定年し会社から居なくなる。その時、同じ感覚で同じように、その時の状況に応じて判断できる人間が居れば、今撒いている沢山の種も、そのうち実を結ぶのであろう。ベクトル(方向性)、感覚、意志などまだまだ周りに伝えていく事は多いし、自分も磨かなければならない。
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2003年に発刊された本書を2008年に購入。一度読んで、その後長いこと本棚にあったものを再読した。 松村劭(つとむ)氏(1934-2010)は防衛大学を卒業後、陸上自衛隊作戦幕僚、防衛研究所、イギリス国際戦略研究所などで働いた、戦略・戦術の専門家である。 昔は本に書かれている内...
2003年に発刊された本書を2008年に購入。一度読んで、その後長いこと本棚にあったものを再読した。 松村劭(つとむ)氏(1934-2010)は防衛大学を卒業後、陸上自衛隊作戦幕僚、防衛研究所、イギリス国際戦略研究所などで働いた、戦略・戦術の専門家である。 昔は本に書かれている内容の一言一句を理解したいと思っていたが、最近はそうではない。一つでも二つでも得るところがあれば良いと思って読んでいるが、本書はその読み方しかできないだろう。戦争の体験もなければ戦場に行ったこともない私が本書を理解できるわけあるまい。 しかし、本書から学べる点は多々ある。名将の状況判断は直観的だ。それは情報を総合し、知識と経験を総動員して導かれる直観的判断だ。それは名将の成せる技であるから、一般的には「演繹的帰納」を使う。目標を見定めた上で戦術を選ぶ思考法である。経営コンサルタントは所詮、この手法ではないか。MBAホルダーが敬遠される理由もここにある。科学的で論理的で一般的な手法。それが成り立たない世界では通用しない。
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著者の思想が所々お漏らししてる一冊。 個人的には大陸国家か海洋国家かの違いによる思考の根本的相違に関する部分が新たな視点だった。 地政学についてま学びたいなと思った。 あとは、事前にカントの純粋理性批判とかクラウセビッツの戦略論を読んでいれば理解しやすいかと思う。
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・たとえば、一家で奥さんが、「子供によい教育を受けさせるためには、〇〇学校に入れてその後は海外に留学させなければなりません。そのためには、授業料が高くてもA予備校に入れなければ。このままでは将来の希望がないのよ」といえば、一方で夫のほうは、 「そんなことをいったって、いま俺が稼げ...
・たとえば、一家で奥さんが、「子供によい教育を受けさせるためには、〇〇学校に入れてその後は海外に留学させなければなりません。そのためには、授業料が高くてもA予備校に入れなければ。このままでは将来の希望がないのよ」といえば、一方で夫のほうは、 「そんなことをいったって、いま俺が稼げるのはこれが精一杯だ。会社の付き合いの飲み代にもこと欠く始末なんだから…。でもそれをしなければ、稼げるようになる人間関係もできないんだよ。少しづつしか進めないんだ」という。 …奥さんのほうは目標からアプローチするから、どうすべきかの道は見えるが、現実とのかい離が大きくて答えが出ない。一方、可能性からアプローチする夫のほうは、遠くに目標は見えるが到達する方法はなかなか見つけることができない。この夫婦の議論は永遠に結論が出ない。異なる国の軍隊が共同して戦う連合作戦が可能なのは、ほぼこの「見方、考え方」の手順が合っているからだ。 ・それまで米軍は定型の状況判断の思考方法を実はもっていなかった。ドイツ軍もフランス軍も同様で、どちらかといえば、「目的に寄与するためには、何をしなければならないか」を考察し、それを達成する方法を経験則に当てはめて実行要領を定め、妨害する敵と戦い、戦闘環境を排除するという「演繹的思考過程」を使っていた。要は、「何をすべきか」を考える方法だが、これは米軍も日本軍も同じだった。 考え方が違っていたのは、英軍で、彼らは「遠くの目的に向かって何ができるか」の選択肢をかき集めて、最も容易な道を選択するという「帰納法的思考過程」を使っていた。「何をすべきか」ではなく、「何ができるか」を考える方法である。なるほどイギリスはゴルフ発祥の国といわれるだけあって、考え方はゴルフ的だ。ピンが立っている遠くのグリーンに近づくために、とりあえず最初の一打で、どのクラブを使ってどこを狙って打つのが合理的か、と考える。 ・ある命題、つまり「何かのために」「どうすればよいか」という結論を得る考え方が適用される状況は、「かけ引き」を必要とするかどうかによって、二つに分かれる。 たとえば、前者は、東京から富士山麓の山中湖に行くときに、高速バスを使うか、電車を乗り継ぐか、レンタカーで行くかの三つの選択肢の中から最良案を選ぶようなケースであり、後者は、犯人(自分)が警察(敵)に捕まらずに東京から山中湖に逃れるのに、どの移動方法が最も危険が少ないか、を考えるようなケースである。 ・フランス革命に命を賭けていたころのナポレオンは、ある人から戦略の極意とは何かと尋ねられて、 「一人の農民に『ジェノアに行く道は?』と尋ねたら、『ボビオの街を通って(もっとも判りやすい経路)を行け」と答えるだろう。そして、そうするのが最も優れた戦略機動である」と答えている。 ・実際には、部下部隊は容易に実情を報告しないものである。それは悪意があって報告しないのではなく、部下の性格や直面している状況によって実情の認識や報告のタイミングが狂ってしまうのである。 気の強い部下なら、苦戦していても「大丈夫です」と報告するだろうし、慎重な部下なら、「敵の勢いが強くて、苦戦中」と報告するだろう。戦闘の最中にある部下なら、「報告は後回しだ」ということになり、戦況が不明なら「見込み勘定で報告」する。 だから、名将ロンメルは機関銃大隊を自分の直轄指揮下におき、味方の第一線の状態を報告させた。パットンは騎兵大隊を、モンゴメリーは”ファントム部隊”を臨時に編成して同じ目的に使った。 ・「主敵はどれか?」の認識は、よほどのことがないかぎり間違うことはない。問題は主敵のなかの”打撃する弱点”をいずこと判断するかにある。
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スポーツ、ビジネス、戦場..。 あらゆる場面やシーンにおいて適切な『状況判断』というものが求められる。 自分の目標を明確化し、相手の予想される行動と、自分に出来ることを見比べた上で最適な戦略・戦術を選択する。こうした複雑な意思決定のプロセスの要諦を、"軍隊...
スポーツ、ビジネス、戦場..。 あらゆる場面やシーンにおいて適切な『状況判断』というものが求められる。 自分の目標を明確化し、相手の予想される行動と、自分に出来ることを見比べた上で最適な戦略・戦術を選択する。こうした複雑な意思決定のプロセスの要諦を、"軍隊の意思決定手法"に学ぼうというのが本書。 世界の軍隊が採用する「演繹的帰納法」による意思決定スキームや、過去の戦争を指揮した名将達が用いた意思決定手法を参照しながら、自分達はどのようにして状況を判断し、最適な戦略を選択すれば良いのかを示唆してくれる。 また著者が元自衛官であるせいか、世界的な軍事戦略研究所の研究員であるというバックグラウンドを生かし、国際政治や軍事に関する戦略的視点についても言及がなされている。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] 異なる国の軍隊が共同して戦う連合作戦は、いかに遂行されるのか。 指揮系統の上下間や部隊間で、スムースな調整を行なうためには、「見方、考え方」の順序を厳密に定めることが不可欠だ(「軍隊の思考過程」)。 一方で、組織の上に立つリーダーの思考法は正反対。 体験的知識をもとに「直覚」を活用し、電光石火、手を叩く間もなく決断し行動する(「プロの思考過程」)。 本書では古今の軍隊の豊富な事例と名将の言葉をもとに、状況判断における二つの思考過程を徹底的に解剖する。 [ 目次 ] 第1章 軍人のものの見方、考え方 第2章 目標の選択 第3章 名将たちの思考過程 第4章 状況の特質を把握する 第5章 四分の三は霧の中 第6章 転機を知る 第7章 全感覚の活用 第8章 連想と直覚 第9章 納得できる説明 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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状況判断のための秘訣や考えなければならない事がわかりやすく書かれていてとても参考になった。 これは、日常の生活にも応用できるところが何箇所かあり、とても良かった。
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相変わらず松村さんの本は要点をまとめにくい。けどこの著作でもいつもどおりのことを言っている。 軍人が徹底した現実主義であるべきこと、それから命題・前提・分析・総合・結論の手順で思考する演繹的帰納法、それから目標を立てる際に代替のきくものを選ぶとか、それから自身でいろいろ経験し、さ...
相変わらず松村さんの本は要点をまとめにくい。けどこの著作でもいつもどおりのことを言っている。 軍人が徹底した現実主義であるべきこと、それから命題・前提・分析・総合・結論の手順で思考する演繹的帰納法、それから目標を立てる際に代替のきくものを選ぶとか、それから自身でいろいろ経験し、さらに歴史を追体験することの大事さ、修練によって得る得意技、状況を把握し全感覚を活用し直感的に決断し合理的な説明を創ること、それから敵の選別、敵の出方をできる限り考えること、ブレーキ現象とゆう転機、しっくりこないなら視座を変えてみること、クードゥイユやら心眼について、そして軍人が政治的配慮を一切せず戦理にのみ基づいて行動すること。 こんな感じ。
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軍隊 戦争という 未知の世界の話しで 好奇心をくすぐられました どういった手順で 作戦を決めるのか 状況をどう判断するのか 戦争という設定は 自分の周りにはないですが 仕事や生活のなかでの 目的 目標 判断などに 応用できることだと感じました。
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戦場では、把握できる状況はせいぜい4分の1。4分の3は霧の中。そんな中で、過去の将軍たちが、どういう風に状況を把握し、リスクをとって攻めていったかが書かれている本。 本の主題とは関係ないが、大陸国家と海洋国家のものの見方の違いの話が面白かった。
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