時間は実在するか の商品レビュー
マクタガートの論文「時間の非実在性」を丁寧に追いかけ、その論証をたどるとともに証明の失敗も解説する。筆者が哲学科以外の学生へ講義した内容が活かされている。第1章ではゼノン、アリストテレス、アウグスティヌス、ナーガールジュナ、山田孝雄など、歴史上「時間」がどのようにとらえられてきた...
マクタガートの論文「時間の非実在性」を丁寧に追いかけ、その論証をたどるとともに証明の失敗も解説する。筆者が哲学科以外の学生へ講義した内容が活かされている。第1章ではゼノン、アリストテレス、アウグスティヌス、ナーガールジュナ、山田孝雄など、歴史上「時間」がどのようにとらえられてきたかを振り返る。第2章〜第3章ではマクタガートの論証をたどる。「時間」の捉え方にはA系列とB系列とがあると考え、その関係と本質を考察し、A系列に矛盾があることから時間は実在しないと証明する。第4章ではその証明の失敗を解説する。「実在」の意味を明確にし、矛盾を導き出す論法に不備があることを説明する。第5章では筆者の持論を説明し、「時間は実在するかという問いは、失効する」ことを述べる。目次第一章 「時間の非実在性」はどう考えられてきたか第二章 「時間の非実在性」の証明(1)−証明の前半第三章 「時間の非実在性」の証明(2)−証明の後半第四章 証明は成功したのか第五章 もう一つ別の時間論―第四の形而上学的な立場哲学的な内容の本では用語や表現が分かりにくいものが多いが、これは分かりやすかった。一つの要点を易しくかみ砕いたり、様々なレベルで言い換えたりして繰り返し説明するので、どれかの表現で理解できるだろう。要点をくどいほど振り返って言及してくれるのもありがたい。概念図を頻繁に挙げて思考を図示してくれるのもうれしい。哲学にあまりなじみがない人にとっての良書だろう。ただ第5章は非常に分かりにくい。「そのつど性」「とりあえず性」「無関係としての時間」などの用語が導入され、他の章と比べると抽象化されたままの説明が高速に通り過ぎてゆく。まだ筆者の中でも十分に消化しきれていないのではないかという気がする。「時間は実在する」と考えた哲学者はいないのであろうか。
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「時間が実在しない」っていうことが想像できますか? 相対性理論でも時間の存在は大前提ですよね。でも物理学的には時間はどうも実在しないということらしいです。 2007(1)
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タイトルの通りかなり哲学的な内容を扱った本です。内容はマクタガードの時間非実在論とその証明の過程を紹介した後、それに対して著者が反論を行うというもの。内容が内容だけにかなり難解で、何度か読み返さないと理解は難しいかもしれません。しかしながら時間をA系列、B系列、C系列に分類し、時...
タイトルの通りかなり哲学的な内容を扱った本です。内容はマクタガードの時間非実在論とその証明の過程を紹介した後、それに対して著者が反論を行うというもの。内容が内容だけにかなり難解で、何度か読み返さないと理解は難しいかもしれません。しかしながら時間をA系列、B系列、C系列に分類し、時間が実在すると仮定した時にその主張者が陥る無限循環を指摘することにより背理法で時間の実在を否定したマクタガード、そしてそのマクタガードが用いた論理をマクタガード自身に適応することによりマクタガードが循環の輪の中に取り込んでしまわれることを指摘した著者の論理戦はかなりエキサイティングです。時間の実在がどーのこーのは結局完全に理解することはできませんでしたが、この論理戦だけでかなり楽しめました。時間があればもう一度読み返して今度こそ理解したいですね。
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