サヨナラ、学校化社会 の商品レビュー
2024.02.22 古い本ではあるが、十分に納得かつ共感できる素晴らしい本。たくさんの気づきを得ることができた。上野先生の本は、やはり面白い。
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2002年刊行。内容は首肯するところも多く、こういう情報発信の底意はわからなくはないが、学校化社会の象徴というべき東大の禄を食む教授の発言としてはどうかと思う。東大生の問題点を指摘しているなら尚更。
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この本は、私が学群の2年生のときに、とある授業の参考図書として読んだ本です。主な内容は学校教育に関してなのですが、筆者であり大学教授である上野千鶴子は、自身の教授生活を振り返りながら、現在の学校制度が「だれも幸せにしないシステム」(p. 57)であると声高に主張しています。 当...
この本は、私が学群の2年生のときに、とある授業の参考図書として読んだ本です。主な内容は学校教育に関してなのですが、筆者であり大学教授である上野千鶴子は、自身の教授生活を振り返りながら、現在の学校制度が「だれも幸せにしないシステム」(p. 57)であると声高に主張しています。 当時の私はそれまでほとんど教育に関する文献を読んでいませんでしたが、早くして手にしたのがこの本だったこともあり、非常に大きな衝撃を受けました。上野が本書において痛烈に批判しているのは、「学校化社会」です。「学校化社会」とは、「学校的価値が学校空間からあふれ出し、にじみ出し、それ以外の社会にも浸透していった」(p. 50)社会のことを指しており、今の日本社会に広く当てはまる現象だと思われます。そして上野は、これからの教育が目指すべき社会とは、このような学校的価値で一元化された社会ではなく、社会的価値が多元化した、自尊感情が奪われることのない社会であると述べています。 「教育」と「学校」とが強く結びついて語られることの多い昨今ですが、本書は「教育」についてより柔軟に考えることのできるきっかけを与えてくれます。 (ラーニング・アドバイザー/教育 OYAMADA) ▼筑波大学附属図書館の所蔵情報はこちら http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1260883
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生涯学習論を学んだ人間にとって、イリッチの「学校化社会」、ブルデューの「階級の再生産」、そして「ヒドゥンカリキュラム」など、本書で取り上げられる数々の生涯教育哲学とも呼べる言説たちは耳障りがよい。 それに加え、上野先生の現場から得た知見、研究から培ってきた独自の考え方が織り成され...
生涯学習論を学んだ人間にとって、イリッチの「学校化社会」、ブルデューの「階級の再生産」、そして「ヒドゥンカリキュラム」など、本書で取り上げられる数々の生涯教育哲学とも呼べる言説たちは耳障りがよい。 それに加え、上野先生の現場から得た知見、研究から培ってきた独自の考え方が織り成され、本書は教育学関連でも類を見ないバイブルとなったことは言うまでもない。 奇しくも本書が刊行されたのは2002年4月1日であり、私自身が大学に入学した日ではないか。しかし、何故か本書を学生時代一度も読むことはなかった(研究室にもあったのに)。理由は定かではないが、大学卒業から10年が経とうとする今のタイミングで読めたことは何か因果なことなのかもしれない。 思うに、結局のところ、今の社会は「学校化社会」から一向に抜け出す気配すらない。みんなやっぱり学歴、偏差値で序列化されることが好きなんだろう。 あと、本書の内容からは直接的には関係ないのだが、気づいたことがある。 昨今よく感じることは一人ひとりの嗜好や興味があまりにも多様化かつ複雑化しているということ。たぶん本書が刊行された10年以上前よりもそれは顕著になっている。 本書に書いてあったことだが、人はあまりにも異質度の高いものであれば認知的不協和を起こすという。しかし、本来であれば異質度が高く、認知的不協和を引き起こすものであっても、ジャンルの細分化が起きている現代社会においては、それを理解するように振舞うことが一種の作法になっているのではないかと。つまりは細分化され本来ならその道のプロにしかわからないようなこと、特にアートや音楽など様々な分野の中で、人はそれをわかったような気分になっているだけではないだろうか。 これも暗黙のうちに人は予定調和的な同調システムに知らず知らずに組み込まれているようでならない。自分ではオリジナリティ、独自性の追求、ライフスタイルの充実と思っていたとしても。
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図書館で借りた。 著者が教育の現場で感じてきたことのエッセイのようなもの。現在の教育に危機感を感じている。 いま我慢して将来に備える、ということを強いるシステムはどこか歪んでいると思えた。学校が敗者が敗者であることを敗者自身に納得させる装置として機能していることも触れられる。...
図書館で借りた。 著者が教育の現場で感じてきたことのエッセイのようなもの。現在の教育に危機感を感じている。 いま我慢して将来に備える、ということを強いるシステムはどこか歪んでいると思えた。学校が敗者が敗者であることを敗者自身に納得させる装置として機能していることも触れられる。今の就職活動で大企業に学生が集中するのは、二流だと認めたくないからなのかとも考えた。 学校は最低限の知育だけでいいという主張はその通りだと思う。何でもやり過ぎなのが今の学校で、子どもの価値観に多様性が生まれづらいからもっと学校以外の価値に触れられる場を増やしたい。 著者の社会調査法の講義でやっていることがすばらしかった。学生にデータを集めさせ、分析させる。同じデータを著者が見て学生達が見落とした視点を次々に指摘する。その差はどこから来るのか? 教養の差、扱った事例に対する知識の差だと教える。だから本や新聞、ニュースを見るようにしなさいと言う。 目の前で明らかな差を見せれば、そこにそれを手に入れたいとか格好いいと思わせられるはず。学生と教員は何が違うのか、子どもと大人は何が違うのかという問いに対する答えはこんな風に差を見せつけることでしか伝わらないと思う。言葉での説明よりも受け取る側に実感させることは大切だろう。
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軽快な分だけど読むのはちょっと時間がかかる・・ 頭いいんだろうね~ 2章 学校化が問題なんだろうけれどその大元は近代化 今さら戻れないんじゃあないのかという印象も。近代化で分業化が進んだせいで働く人は会社へ、子供たちの逃げ場が地域にないんだもん。でもって、一斉にど~んって集まった...
軽快な分だけど読むのはちょっと時間がかかる・・ 頭いいんだろうね~ 2章 学校化が問題なんだろうけれどその大元は近代化 今さら戻れないんじゃあないのかという印象も。近代化で分業化が進んだせいで働く人は会社へ、子供たちの逃げ場が地域にないんだもん。でもって、一斉にど~んって集まったらそこに競争が生まれるのは生物として当然。でその価値観で育ってしまった親がほかの価値観をって言われてもってなるんだろうなあ。大人になってもおけいこ事とか、お勉強好きでしょう?そこを補完するなら頭打つ経験がないと。年齢を超えたサークルとか徴兵制(!)とか 3章 男→ず~っと競争 女→競争→競争→競争(ただし女らしさを捨ててはいけないらしい) →結婚しておやすみ 結局人生を勝ち負け(これ学校化のたまもの?)でとらえるならば幸せにはなれないということ。 4章 大学について 確かに今後少子化が進む中で増え続けた大学が存続していくには子供だけを相手にしているわけにはいかない。それなのに受験前提での入学だったり、一般教養っていうのではいかんのだろう。 パンキョウ(一般教養)は今後受験なしに地元のおじいちゃんやおばあちゃんも参加できるようにしないとね。(おじいちゃんたち学割効くんかなあって気になったけど、シルバー割引がすでにあるんだった)そんでもって、専門はバリバリ働いている人も参加できるような授業に。もちろんネットで受講申し込みができるように。「みんなの大学」(みんなの党ではない)ってのをはじめていくとそもそも学校化がしでかした問題は多少なりとも緩和されるかもねえ~ 5章 私も先生の3流向けの授業受けたかったわ。そしたら看護研究もっとスムーズだっただろうなあ。東大向けのは読書量で挫折しそうだけど。
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最近言われて困ることは「M1の時より変じゃなくなったね」だ。私は変でいたかった。 変になったきっかけは学部時代にある先生の出会ったのがきっかけだ。 「恋って何?」「友だちって何?」と学生に問い、教員も一緒に考えていた。教員はそれを本当に面白そうに考えていた。 本書は上野千鶴子...
最近言われて困ることは「M1の時より変じゃなくなったね」だ。私は変でいたかった。 変になったきっかけは学部時代にある先生の出会ったのがきっかけだ。 「恋って何?」「友だちって何?」と学生に問い、教員も一緒に考えていた。教員はそれを本当に面白そうに考えていた。 本書は上野千鶴子流教育論である。 上述のしたことは著者も「私は自分がおもしろがっていないことを他人サマにおもしろがってもらうことはできない、だから自分が面白いと思うことだけをやろう、と決めました(p.23)」という。 教員免許を取得する授業は教員の面白さよりも、教えなければいけないことがある。だから面白くないのかもしれない。それでも面白い授業ができる師匠や若師匠はすごい。 「東大にあるのはピア(同輩集団)の教育力です。その点では東大生は恵まれている、といえる(p.31)」学部生をみていると、自身の学部生時代よりはるかに優秀だと感じる。教員の指導はもちろん、学部生と院生が同じ講義を受けることも大きく影響しているだろう。 著者のゼミで「援助交際は自己決定か」についてディスカッションをしたそうだ(p.65)。 援助交際をする女性は、女性性や肉体を資源を高く売りつけるという生存戦略を主体的かつ合理的にとっている。 そこで学生が「私はそういうことはしない。私は自分の能力(語学力・学力)で勝負する」という。そこで著者は「学力資源を売ることと女性性を売ることにどういうちがいがあるのか」と問う。これまた面白い。 大学院でちょっとした違和感があった。「あぁ、そういうことだったのか!」というのが「生産財としての学位」と「消費財としての学位」という概念。 前者は学位をとることがそのあとの職業の「手段」なること。後者は学位を得ることじたいが「自己目的」であるというもの。 はっきりとどっちかに分けることはできないし、「どっちも」、結果的に「生産財」ということもあるけれど。これって面白い。 最後にこの一言!やっぱり上野千鶴子はかっこいい。 「私は研究者の最大の報酬は、頭の天井がスポーンと抜けるというか、「わかった!」「見えた!」という快感だと思うのです。この快感が最大の報酬。ある種のドーピングみたいなもので、これがあるからどんな不遇な目にあおうが研究者はやめられない(p.107)」 これが本当の研究者ですかね? でも、「大学の教授になる」という目的のために論文を書いている人は教授になったら全く論文を書かない(川成洋『大学崩壊』)。それってどうしてだろう。快感を味わったことがないからなのか。それ以上にやらなくちゃいけない事務が多いからか。 「隠れたカリキュラム」というのはフェミニズムが発見したそうだ(゜o゜) (まっちー)
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初めての上野千鶴子さん。 頭いいなぁ。 文章が明快で、知的で、わかりやすい。 実践系でない教育本は久しぶりだったので、 大学で学んだはずの内容なのに、ひどく頭を 使った。 脱・学校論者だけど、今の自分はどれと どれくらいの距離感にいるのかな。
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上野さんパワフルだなあ。 はっきりしてるから、好き嫌いが分かれる彼女の本だけれど、 わたしは子気味のいい上野さんのお話がとってもすき。 でも読むのにとっても時間のかかる本だった。
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いわゆる良い大学を出た人間の最大の強みは「やればなんとかなる、自分にはそれだけの力がある、という意識を持てていることである」、という言葉が印象的でした。学歴がもたらすものは「知識」よりも「自信」なのだということ、そしてその「自信」が無ければ先に進む為に行動を起こすことすら出来なくなってしまうこと等が書かれていました。 低学歴でかつニート・フリーターなど社会的に弱い立場にある人達が思考停止しそこから脱出しようとする意欲すら持たなくなる背景にはこのような心理的背景があるのだということ、本人達の「怠け」ではなく学歴社会による心理的な圧迫があるのではないかという疑問に思い至り、社会問題を感情論ではなくロジカルに読み解くためのひとつのヒントになりました。
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