白洲正子全集(第8巻) の商品レビュー
『魂の呼び声―能物語』(1978年、平凡社)、『道』(1979年、新潮社)、『鶴川日記』(1979年、文化出版局)の三作品と、1976年から79年にかけて発表されたエッセイを収録しています。 『魂の呼び声』は、能の謡曲21編をとりあげ、その内容を著者がわかりやすく語りなおした本...
『魂の呼び声―能物語』(1978年、平凡社)、『道』(1979年、新潮社)、『鶴川日記』(1979年、文化出版局)の三作品と、1976年から79年にかけて発表されたエッセイを収録しています。 『魂の呼び声』は、能の謡曲21編をとりあげ、その内容を著者がわかりやすく語りなおした本です。能は舞歌二曲といわれ、著者も「もともと、読むのが目的ではなく、見るために作曲してあるのですから、謡曲の文章だけとってみても、純粋な文学とは呼べません。……お能は、舞台の上で舞って、はじめて完全な芸術になるのです」と述べています。そこで著者は、「目でみる舞踊を、物語に翻訳する」にあたって、「いくらか小説的な手法を用いたり、謡本にはない情景描写をつけ加えること」をおこなったと語っています。そのためもあってか、情景や心理についての解釈をまじえた説明になっていて、能の演目を知りたいという読者の要望にこたえるような内容になっていると感じました。巻末の「解説」によると、本作は児童福祉文化奨励賞を受賞したとのことですが、能の入門書としてすぐれているように思います。 『道』は、著者の紀行文のひとつで、本伊勢街道をはじめ日本各地の道をたどり、名所をたずねて、そのときの印象がエッセイとしてまとめられています。そのほか、世阿弥の『二曲三躰之人形』を解説している文章や、比叡山回峰行についての文章なども含まれています。 『鶴川日記』は、戦争がしだいに激しくなっていくなかで、当時寒村だった鶴川の家に移った著者の暮らしがしるされているエッセイです。当時の世相と村の生活ぶりが、生き生きとえがき出されています。また、梅原龍三郎や熊谷守一との交流についてもしるされています。
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