パイド・パイパー の商品レビュー
核戦争後の世界の姿を描き、SFの古典となった「渚にて」。その著者、ネビル・シュートが第二次世界大戦下のヨーロッパ、フランスを舞台にした小説。 ドイツ占領下のフランス。元弁護士の老イギリス人ジョン・ハワードは、息子の戦死や、戦争で役立たず扱いされた心の傷を癒すため、フランスの山村...
核戦争後の世界の姿を描き、SFの古典となった「渚にて」。その著者、ネビル・シュートが第二次世界大戦下のヨーロッパ、フランスを舞台にした小説。 ドイツ占領下のフランス。元弁護士の老イギリス人ジョン・ハワードは、息子の戦死や、戦争で役立たず扱いされた心の傷を癒すため、フランスの山村で釣りを楽しんでいた。ドイツ軍のフランス侵攻を知り、イギリスに戻ろうとした彼は、ひょんなことからスイスにいるイギリス人の国際連合職員の幼い2人の子供を預かることになる。 さらに、ホテルのメイドの姪、空爆で両親を失ったオランダ人の少年、両親をドイツ人に連れ去られたユダヤ人の少年、さらにはゲシュタポの少佐の姪っ子までが、ハワードの逃避行に加わるのだ。 占領下の他国の不便さに加え、状況に関わりなくわがままを通そうとする幼い子供たちの振る舞いにくたびれ果てながらも、義務感と責任感で自分を支えるハワード。 「渚にて」の核戦争後の滅びを粛々と受け入れる世界の姿とは違う、淡々としながらも苦境を打破しようと立ち向かう本作。描かれた時代の差なのだろうか。 ちなみに「渚にて」は核の不安が世界を覆い始める前、ソ連のスターリン死去で東西冷戦が「雪解け」したとされる1957年の著作。 一方の本作は1940年にパリがドイツ軍により陥落し、イギリスにドイツ軍が激しい空襲を繰り返していた1942年に出版されている。戦争のさなかだからこそ、こんな勇気が湧いてくる小説を書いたのだろうか。 本作はまた、老いの姿を切なく描いた作品でもある。 たとえば、こどもたちが楽しく遊ぶ姿を見たハワードのこんな感懐。 「子供たちともっと深く接したいと思ったが、年齢を考えると気後れがして、たいていは庭の松の木の下で遊ぶ二人を遠くから眺めるばかりだった。子供たちが馴染みのない変わった遊びをしているのを見ると、自分も仲間に加わりたかった。幼い二人は、ハワードの遠く霞んだ記憶の弦をそっと掻き鳴らした」 ああそうだなあ。自分も息子や娘と遊んだ日々を、「遠く霞んだ記憶」として思い出す日がくるんだよなあ。ハワードの年まであと30年。またしても老いた自分をイメージしてしまうのだった。 解説の北上次郎も、同じ感想を記している。 20年前には、この感想はなかったなあ。
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7年前に文庫が出たとき、書評で絶賛されていたのですぐに購入したものの、この暢気な表紙が気に入らなくて読む気になれませんでした。 相変わらず評価が高いので思い切って読み始めたら、みんなの評価通りの傑作でした。古き良きイギリスの香り高いはじまり方もさりげない終わり方も、紳士ですね、粋...
7年前に文庫が出たとき、書評で絶賛されていたのですぐに購入したものの、この暢気な表紙が気に入らなくて読む気になれませんでした。 相変わらず評価が高いので思い切って読み始めたら、みんなの評価通りの傑作でした。古き良きイギリスの香り高いはじまり方もさりげない終わり方も、紳士ですね、粋だなぁ。でもやっぱりこのカバーデザインは選択ミスでは・・・(ちなみに杉田比呂美さんのイラストは昔から好きです)
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1940年代に書かれた小説。舞台はナチス・ドイツが攻め込んできたフランスの片田舎。 主人公は70代のイギリス人の老人男性。 旅の行きかがり上、イギリス人、フランス人、オランダ人、ポーランドのユダヤ人、ドイツ人の子供を連れてイギリスに脱出する話。 ロードノベルであり、脱出ものでもあ...
1940年代に書かれた小説。舞台はナチス・ドイツが攻め込んできたフランスの片田舎。 主人公は70代のイギリス人の老人男性。 旅の行きかがり上、イギリス人、フランス人、オランダ人、ポーランドのユダヤ人、ドイツ人の子供を連れてイギリスに脱出する話。 ロードノベルであり、脱出ものでもある。恋愛ストーリーも絡む。秀作。 ちなみに「パイド・パイパー」とは、寓話ハメルンの笛吹きで、町中の子ども達を引き連れていってしまう笛吹きのこと。
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大戦中、老齢の英国紳士がフランスからイギリスへ帰る。あらすじはたったこれだけのロードムービー(ノベル)。でもそこに「子連れ」という要素が加わることで緊張感のあるノンフィクションのような味わいになる(しかも縁も所縁もない子供がどんどん増える〜)。後からじんわり心に沁みてきそうな気が...
大戦中、老齢の英国紳士がフランスからイギリスへ帰る。あらすじはたったこれだけのロードムービー(ノベル)。でもそこに「子連れ」という要素が加わることで緊張感のあるノンフィクションのような味わいになる(しかも縁も所縁もない子供がどんどん増える〜)。後からじんわり心に沁みてきそうな気がする。シンプルで良質な本。蛇足だが、物語の進行中、「お金持ちでよかった〜」と何度思ったことか…。
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戦火の中、子供達の手を引いてフランスからイギリスへと向かう引退した老弁護士。お手製の笛で子供達の心をひきつけていくところは、まさにパイド・パイパーです。決して御人好しだからとか、なし崩し的にというわけではないんです。頼られて引き受けた以上はなんとしても子供達をおくり届ける。優しさ...
戦火の中、子供達の手を引いてフランスからイギリスへと向かう引退した老弁護士。お手製の笛で子供達の心をひきつけていくところは、まさにパイド・パイパーです。決して御人好しだからとか、なし崩し的にというわけではないんです。頼られて引き受けた以上はなんとしても子供達をおくり届ける。優しさに裏打ちされた強さにひきつけられます。そしてニコルの真摯な愛情とたくましさ。最後の夜のセリフには思わず涙が零れました。帯の「酒飲み書店員さんたち」にはこれからもこんな作品を紹介してほしいです。
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生々しい部分とファンタジー風味の割合が絶妙〜で読み飽きなかった。というか、国に帰り着いてしまうのが惜しいくらい。しかしそんな状況でもお金って必要なのね・・
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これぞイギリス紳士!! というハワード老のたたずまいにしびれます。物語の流れは単純だけれど、緊迫感が漂います。ところどころくすりと笑えるのもいい。
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その場にいたからこそであろう現実感。 ご都合主義と思えるほど自然に感じられる、そこまで緻密に作りこまれた物語。
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この設定で単純なお涙ちょうだいものになっていない所がまず、予想を良い感じに裏切られました。 子供複数と老人一人という非力な集団で、南下してくるナチスドイツ軍をきりぬけながら、フランスを抜けイギリスへと向かおうとする、その過程が面白いです。 それから子供を引き取るときのハワードのく...
この設定で単純なお涙ちょうだいものになっていない所がまず、予想を良い感じに裏切られました。 子供複数と老人一人という非力な集団で、南下してくるナチスドイツ軍をきりぬけながら、フランスを抜けイギリスへと向かおうとする、その過程が面白いです。 それから子供を引き取るときのハワードのくたびれ具合がいい。 正義感に高揚してるわけでもなく、嫌々というわけでもなく、諦観にちかい佇まいなのが好きです。子供も、決してききわけが良いわけじゃない所がリアルで面白かったです。 読後感が心地よく、再読したくなる本。
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戦争のお話で、おじいちゃんと子供とゆうくみあわせにもかかわらず、お涙ちょうだいの話しになってない。じっくり読んで、しばらくすると忘れて、また1年くらいたつと読みたくなるお話。新刊発売以降もいろんな書店で平積みされているので、結構うれていると思われる良書。
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