山椒大夫・高瀬舟 の商品レビュー
山椒大夫を読みたくて手に取ってみたものの他にも衝撃的な作品が多くものすごく考えさせられます。 「最後の一句」 これは、まさにいちの最後の一言につきる作品。心に突き刺さります。今現在の多くの政治家に読んでほしい一編。人が人を信じるということはこれほどにも重く心に響くことであろう。 ...
山椒大夫を読みたくて手に取ってみたものの他にも衝撃的な作品が多くものすごく考えさせられます。 「最後の一句」 これは、まさにいちの最後の一言につきる作品。心に突き刺さります。今現在の多くの政治家に読んでほしい一編。人が人を信じるということはこれほどにも重く心に響くことであろう。 「高瀬舟」 こちらも今時な・・・ 安楽死は罪か?個人的には罪には問いたくない犯罪であると思っています。安楽死への原動力は優しさであることが多々あると感じる。一概に全てとは言わないけれど、医療用が全てを救えない今の段階では一考の余地があるのではないかとかんがえます。 そして、貧困。これも今の特殊な社会状況下においてはこの物語に匹敵するような経済状況に置かれているだろう人がいるだろうということ。喜助のような清貧な心を持つひとならばよいが、それだけではすまないはず。 色々併せ考えると、喜助の出来た人格か浮かび上がる。
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「題名がなぜ『山椒大夫』なのか。安寿と厨子王の物語なのに」 作家の平野啓一郎さんの言葉(読売新聞11面2019年6月30日)が気になって読んでみた。哀しく感動的な物語。奴婢解放後も栄えた「山椒大夫」。勧善懲悪ではない。読み終えて、なぜかしら今日板門店で金正恩委員長と再会したトラン...
「題名がなぜ『山椒大夫』なのか。安寿と厨子王の物語なのに」 作家の平野啓一郎さんの言葉(読売新聞11面2019年6月30日)が気になって読んでみた。哀しく感動的な物語。奴婢解放後も栄えた「山椒大夫」。勧善懲悪ではない。読み終えて、なぜかしら今日板門店で金正恩委員長と再会したトランプ大統領と「山椒大夫」に共通点があるように思えた。トランプ氏は「悪」でなく「not bad」かもしれないが。
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読了。これまで読んできたなかで、日本文学が一番、電車のなかで読んでいて恥ずかしい気持ちになるものでした。わたしの知る山椒大夫は、54年溝口健二による映画のそれ、61年東宝アニメのそれです。森鴎外によるそれは15年。原作は中世の説教節であり、1650年頃と推測されます。これら3つは...
読了。これまで読んできたなかで、日本文学が一番、電車のなかで読んでいて恥ずかしい気持ちになるものでした。わたしの知る山椒大夫は、54年溝口健二による映画のそれ、61年東宝アニメのそれです。森鴎外によるそれは15年。原作は中世の説教節であり、1650年頃と推測されます。これら3つは、それぞれ相当にアレンジを加えられているので、比較することで時代の流れらしきものが良く見えます。今回始めて読んだ森鴎外による山椒大夫はわたしにとっては、もっともそれらしい山椒大夫でした。素晴らしく良かったです。溝口健二の映画では、元来姉と弟の関係である安寿と厨子王は、兄と妹に置き換えられています。これは相当の違和感を放つものなのですが、50年先を見据えた先見の目という意味では、正解かも知れません。つまり、糞みたいな役立たずの兄、強気で健気な妹という構図なので、おもむろに今っぽい。対し、7年後のアニメでは元の構図に戻ります。これはまだ、アニメという分野が未成熟で、強いアレンジに耐えうるものでなかったためだと推測されます。特にディズニーコンプレックス丸出しで自立は出来ていない頃合いでした。中世の説教節では、姉安寿は拷問死します。拷問の描写が続くため、美女と言われる女性がひどい目に合って死ぬという聴衆が大好きなネタと、後に飛躍していく厨子王の姉コンプレックスの克服というネタが物語に世俗的な強さをもたらします。姉が強いのは古事記に見られるような日本元来の趣かも知れません。時代は姉を排除し、妹コンプレックスに向かっているため、溝口に先見の目があると言ったのはそのためです。ある意味、その強い姉像たる安寿が、森版では入水自殺しますが、当時の風潮というものなのか、美徳的に感じられはしますが、姉という概念の強さが男権に潰される最後の瞬間のようにも思えました。さて、山椒大夫の他、数点の作品が掲載されていましたが、どれもこれに劣らず素晴らしかった。元より推敲しまくる森の珍しい一発書きである寒山拾得だけはひどかったけど。
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表題2作が読みたくて。どちらも短い作品ながら深く考えさせられるテーマを背負っています。多くを語っていないぶん読み手によって様々な捉え方や考え方ができるので、読後に他の方の意見を聞いてみたくなりました。 数年後に再読したらその時々で異なる登場人物に心を寄せている気がします。 好きと...
表題2作が読みたくて。どちらも短い作品ながら深く考えさせられるテーマを背負っています。多くを語っていないぶん読み手によって様々な捉え方や考え方ができるので、読後に他の方の意見を聞いてみたくなりました。 数年後に再読したらその時々で異なる登場人物に心を寄せている気がします。 好きとは違う、心の奥に根付くような名作。 『山椒大夫』 私の父は「『山椒大夫』=『安寿と厨子王』じゃないか!」と読後に膝を打っていたので、世代によっては後者のタイトルの方が童話などで馴染み深いのかもしれません。 人買いによって悲運を辿る幼い子供たち――現代の日本では考えにくい描写が多々あります。しかし姉と弟、早々に離れ離れになった母親、三者どの立場を想像しても心苦しく、それぞれの胸の内が痛いほど伝わってきます。一つ一つの行動が自分より家族を想ったものばかり。さまざまな覚悟のかたちを見出だせます。 『高瀬舟』 罪人を舟に乗せ護送する役を務める者たちのなかでも、特に嫌われていた高瀬舟の担当。その役に就いている庄兵衛はある日、まるで「遊山船にでも乗つたやうな顔」で高瀬舟に乗り込んだ罪人の喜助を護送することになる。 大きなテーマは「知足」と「安楽死」。 特に後者については喜助と同じ状況になった場合、頭ではこうだと思っていても実際の状況ではもっと感情的になるだろうと思うと他人事とは思えません。「君はどう思う」という問いが反芻しました。
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表題、山椒大夫も高瀬舟も、とても有名な話。 高瀬舟は、確か学生の頃に教科書か何かで読んだ気がする。 けれど、どちらも、こんなに短い話だったろうか。 記憶にある限りでは、もっと長かったような気がしたのだけれど。 読み終えた時にはそう思ったのだけれど、少し間があいて、また読み直してみ...
表題、山椒大夫も高瀬舟も、とても有名な話。 高瀬舟は、確か学生の頃に教科書か何かで読んだ気がする。 けれど、どちらも、こんなに短い話だったろうか。 記憶にある限りでは、もっと長かったような気がしたのだけれど。 読み終えた時にはそう思ったのだけれど、少し間があいて、また読み直してみたら、同じ印象を抱く。 こんなに、短い話だったろうか。 言葉を尽くして説明されているわけではなく、むしろ読者に判断をゆだねるかのように完結に記された部分も多いのに、なぜか、心には長く残る。 いつか、どこかで、「本当にそれで伝わるなら、言葉など一言で事足りる」というような話を聞いた記憶があるが(夏目先生だったろうか?)、森鴎外の小説は、それなのかもしれない。
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※このレビューにはネタバレを含みます
短編集で昭和初期にもかかわらず、とても読みやすい。 山椒大夫は、父親を追って、旅に出た母子たちが、途中で人会にさらわれてしまう話。 最後にお姉さんが弟のために行動をする。家族想いの人達。 じいさんばあさん。は旦那が若い頃、牢に入って、奥さんは奉公し続ける。数年後出てお互いが違う時間を過ごし、老人になってから、再開し一緒に暮らす。 一緒に暮らしている姿は、とても仲がよく理想の夫婦である。
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2013/11/12 森鴎外の高瀬舟。 時代に普遍なふたつのテーマを含む話です。 「足るを知る」ということと「尊厳死」の問題。 やり切れない気持ちを載せて罪人と同心とを運んで月夜の川を辷っていく、その静けさをも伝わってくるようでした。
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森鷗外の文章は堅苦しい印象があり敬遠していたが、やはり読みづらかった。時折知らない言葉が出てきて、本の後ろに付属している注釈を使いながら読んだ。 ただ、山椒大夫と高瀬舟は内容を大体知っていることもあり、すんなりと読むことができた。この2作で特に印象に残ったのは、物語や題材よりも...
森鷗外の文章は堅苦しい印象があり敬遠していたが、やはり読みづらかった。時折知らない言葉が出てきて、本の後ろに付属している注釈を使いながら読んだ。 ただ、山椒大夫と高瀬舟は内容を大体知っていることもあり、すんなりと読むことができた。この2作で特に印象に残ったのは、物語や題材よりも森鷗外の美しい日本語であった。多彩で的確な言葉遣いとテンポの良い文章は、ときに場面の情景を、ときに人物の寂しさや切なさを、頭の中にくっきりと浮かび上がらせた。同じ話を現代の作家が書いても出せないであろう味が、この2作品にはにじみ出ている気がした。 どちらの話も僕は涙なしでは読めない。 短いのであらゆる人に読んでほしいと思う。
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「山椒大夫」「魚玄機」「じいさんばあさん」「最後の一句」「高瀬舟」「寒山拾得」の6作を収録。この中では「魚玄機」が小説として抜群に面白い(巻末の解説で斎藤茂吉も「この作者晩年の歴史物の中にあっても最上級に位する」と述べている)。
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高瀬舟が読みたくて購入。 中学の国語の教科書に載っていたなぁ。 かなり強烈な印象を受けていたのだけれど(喉から息が漏れる所とか) 改めて読んでみると別の箇所に目がいく。 上へ上へと人間の欲って際限ないですものね。 『じいさんばあさん』もお気に入り。
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