一滴の嵐 の商品レビュー
昔教科書で読んだ「最後の授業」を思い出した。 民族間の誇り、階級や貧富の差など背景に重いテーマがあり、物語に重厚感を与えている。 エーミールが、悩み考え行動し成長していく様を、眩しい思いで読んだ。そんな彼には心許せる素晴らしい友人が何人も出来た。寄宿学校でのエピソードはとても微笑...
昔教科書で読んだ「最後の授業」を思い出した。 民族間の誇り、階級や貧富の差など背景に重いテーマがあり、物語に重厚感を与えている。 エーミールが、悩み考え行動し成長していく様を、眩しい思いで読んだ。そんな彼には心許せる素晴らしい友人が何人も出来た。寄宿学校でのエピソードはとても微笑ましい。
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時代背景や生活様式など丹念に調べて書いただろうなと思わせるリアリティがある。手記体で語り手であるエーミールの少年時代がみっちりと描写されていて、話があっちへこっちへずれるので途中少しだれてしまった。 ブロマンス要素がそこそこ強いけど、霊応ゲームや真夜中の相棒ほど破滅的な愛でなく、もっとポジティブで強かな感じ。彼らがこの先どういった人生を辿っていくのか気になる。 絶版なのが勿体ない小説なので文庫化してほしいです。
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ある一人の黄金の少年が僕を見つけたとき僕は野犬と変わりなかった。時は19世紀半ば。アルザスからいつの日かパリへ。反発しながら強く惹かれ合う二人の少年――。 第17回太宰治賞受賞作
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親友というにはあまりに近い。 この関係に名前をつけるとしたら、いったい何なのだろう。 生まれ育った境遇のまったく違うふたりの少年。 それぞれの苦しみがそれぞれを悩ませ、思考させ、同じ時間を共有して依存を踏み越えた時、何が見えるのか。 昔の少女漫画にでてくる寄宿学校をイメージしながら、読み終えたあとに心地よい感動を覚えました。 ウジェーヌとエーミールの、どちらに感情移入できるかで読み方が変わってくると思う。 この本すごく面白いよ!
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表紙を開いてびっくり。二段組の本を読むのは一体いつぶりかしら。そんなことを思いながら始めの一頁を呼んで、すぐに物語に引き込まれてしまった。すごく魅力的で、でもどこか哀切のある書き出し。 では、本文は如何か。 まず、外国を舞台にしたお話なのに、訳本じゃないってところがとっても嬉しい。他言語を翻訳したものは、どうしてもよそよそしい文に感じられてしまって、日本語で綴る文章のすばらしさが損なわれているような印象を受けてしまうので、いつも寂しく感じるから。 それから、エーミールが幸福や興奮の中ではっと翳りに気が付く瞬間の描写には、物語に引き込まれ、時間も忘れてぐいぐい読み進めていたわたしもおんなじようにはっとさせれて、ページを捲る手が止まったりした。例えば、聖アンナ祭の帰りに、エーミールが父親の「老い」を目の当たりにする場面では、わたし自身がまるで、胸が塞ぎこむような現実を突きつけられた当事者になったような心持になった。すぐに、そして必要以上に、登場人物に感情移入してしまうのは昔からだけど。 貴族の少年と労働階級の少年が出会い、名前の与えがたい結びつきを深めていく。――読み進めながら、いったいどんな結末へと繋がっていくのだろうと何度も思った。疑問を抱きつつも依存関係を続けていくのか、それとも奇跡の邂逅とは真逆の、決定的な別離を迎えるのか。あるいは、もしかしてウジェーヌに女性が出来たりしたらどうよう…とか。壮年のふたりのお話を、ぜひ読んでみたい。 そして、物語の世界にひたってすっかり忘れていたのは、このお話が「少年」たちのお話だっていうこと。ふたりはなんだかもう立派な大人であるかのように錯覚してしまっていたけれど、まだ17歳と16歳なのだと思うと、これから先、まだまだ続いていくであろうふたりの嵐のような人生について、おもわず溜息が出てしまう。 最後に。ウジェーヌが見つけたエーミールの走り書きについて。この本を開いて、一番初めの頁に記されたそれは、まさに、わたしがこの物語の中へ転落するに至った直接の原因である、書き出し。これを読んだウジェーヌの歓喜について、これを読まれてしまったエーミールの羞恥について、微笑ましく、切なく、そして、焦がれるような思いがする。「気まぐれや愛着を、縁であり愛であるというのなら、確かに、僕も彼も、互いを手放せやしない」――13歳のエーミール少年は、この時すでに、紙に、いや神に、刻んでいたのだ。互いを手放せやしない、と。作中でエーミールは、ウジェーヌとともにある自分について葛藤を抱き、迷い、苦しみ、幸福を感じ、ふたりの関係について様々に思考を重ねているけれど、答えはすでに出ていたんだ。 なかなかの長編なので、読み返すのはとても大変だと思う。でも、いつかまた、読み返したいと思う作品だった。
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出会えてよかったね、って軽く言い表せない二人の関係がとても心に残った。言葉がちゃちくなるくらいの段階にあるのかな。隣り合ってる。
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エーミールとウジェーヌの出逢いと成長。2人は葛藤しながらも生涯一緒に居るんだろうなと思います。強い結びつきが羨ましい。
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19世紀半ば、フランス・アルザス地方の片田舎を舞台とした二人の少年の友情の物語。これを日本人が書いたことが信じられないくらいの精緻な描写でした。階級差、言語の差、生まれの差、境遇の差。それぞれが印象的に取り上げられ、興味深かったです。音楽学校の様子もよかった。終盤のいつか戦争にな...
19世紀半ば、フランス・アルザス地方の片田舎を舞台とした二人の少年の友情の物語。これを日本人が書いたことが信じられないくらいの精緻な描写でした。階級差、言語の差、生まれの差、境遇の差。それぞれが印象的に取り上げられ、興味深かったです。音楽学校の様子もよかった。終盤のいつか戦争になって殺しあうのが嫌だ、という場面は切なかったです。
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ある一人の黄金の少年が僕を見つけたとき僕は野犬と変わりなかった。時は19世紀半ば。アルザスからいつの日かパリへ。反発しながら強く惹かれ合う二人の少年―。第17回太宰治賞受賞作。 僕を彼と繋いでいる紐は何だろう? それが分からないので、僕らは、完全な主従にも友人にも、兄弟にもなれずにいる ・ ・ 僕は君を手放す気はないんだ。君が僕を愛していようと憎んでいようと、君に否はいわせない。 ロミオの青い空が好きなひとはきっとこれも好きなんじゃないかなーと思う。 エーミールとウジェーヌの、鎖で結ばれたような、依存に近い関係が、それでも愛しい。 ヨーロッパを取り巻く国土・民族問題も根底にあるものとして描かれていて、興味がないひとには少しそのあたりは難しいかもしれないけども・・
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新人の方とは思えない完成された作品。登場人物たちの成長が知らず知らず感じられて、この先どうなるのだろう、と読んでいる間中飽きなかった。同じ作者の書いた『騎行船』が単行本になってくれればいいのに・・・この人の作品をもっと読んでみたい。
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