雲南の妻 の商品レビュー
雲南に、ここで語られるような文化を持つ少数民族が本当にあるのだと思ってしまうほど、無理なく現実味をもって語られる暮らしぶりに、自分が馴染んでいく。 お茶の描写も面白く、中国茶入門読本としても大変楽しめた。藍染めも含めて、「発酵」「時間」がサブテーマのように感じられた。
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SFファンタジーのような読後感があった。雲南に同性婚の習慣があると知った日本人駐在員の妻。夫の仕事の役に立つということから、若い女性通訳と結婚することになった。元来レズビアンでもなんでもないのだが求められて夫となる。 あり得ない展開のようでありそうな気がして読んでいた。雲南の街...
SFファンタジーのような読後感があった。雲南に同性婚の習慣があると知った日本人駐在員の妻。夫の仕事の役に立つということから、若い女性通訳と結婚することになった。元来レズビアンでもなんでもないのだが求められて夫となる。 あり得ない展開のようでありそうな気がして読んでいた。雲南の街や中国人との付き合い、お茶や自然環境についての描写に深いリアリティがあったからだろうか。 作者は自身の雲南体験をもとにしているのか、そういう体験談を誰かに聞いて参考にしたのか等考えていたが、あとがきによるとそんなことは一切ない。 すべては作者の机上の知見と想像力によるものだそうだ。雲南の雰囲気にどっぷり浸からされた読者としては舌を巻くしかない。 恐るべし村田喜代子。骨太の読み応えのある物語を読んだと思う。話のメインは駐在妻である主人公と相手の娘と夫が中心の狭い範囲の出来事とも言えるが、確かにここではない世界があった。
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大きな木を抱き「気」と取り込む英姫 子どもが生まれて名前が変わるー「中身のない名前のような気がするわ」 名まえってアイデンティティそのもの。 人の喜ぶ様、楽しむ様を見て喜ぶ、楽しむ-そんな人でありたい。
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1970年代の雲南省の奥地が舞台。商社マンとその妻と通訳の娘という顔ぶれ。タイトルをみると夫と通訳の娘が、と思うけれど、妻と娘の物語だった。 中国の少数民族では、女性同士の結婚が認められている部族があるらしい。一夫一婦制に慣れきった身としては、斬新だとは思う。でも、少数民族によっ...
1970年代の雲南省の奥地が舞台。商社マンとその妻と通訳の娘という顔ぶれ。タイトルをみると夫と通訳の娘が、と思うけれど、妻と娘の物語だった。 中国の少数民族では、女性同士の結婚が認められている部族があるらしい。一夫一婦制に慣れきった身としては、斬新だとは思う。でも、少数民族によっては、夫が通い婚だったり、離婚に対するハードルがとても低かったりして、いわゆる女性に優しいというか、女性が生きやすい結婚の形だな、と思う。 女性の結婚といっても、助け合いの意味合いが強くて、性的指向はそんなに強調されていない。 そういう形がありなのも、そもそも少数民族自体がひとつの共同体で、個々人の結婚離婚はそれを揺るがせにしないことも大きい。それだけ自然の厳しさと隣り合わせということかと。 ともすればスキャンダルな内容になりそうなのに、村田さんの本になると不思議と現実味が薄れて、上品で桃源郷のような雰囲気すら感じさせる。雲南省や少数民族の村の描写も魅力的だった。
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「熱に浮かされたよう」とはきっとこういうこと。この人の小説を読んでいると、自分の日常にある希望や焦燥やいろんなことが遠くに霞んでしまうよう。リアルなことが遠景になって、目の前には雲南の蒸し暑さと喧騒と女性たちのパワフルなエネルギーが充満しているよう。 海外に留学していたときのこと...
「熱に浮かされたよう」とはきっとこういうこと。この人の小説を読んでいると、自分の日常にある希望や焦燥やいろんなことが遠くに霞んでしまうよう。リアルなことが遠景になって、目の前には雲南の蒸し暑さと喧騒と女性たちのパワフルなエネルギーが充満しているよう。 海外に留学していたときのことを思い出す時間に似ている。どんどん昔のことになっていくのに不思議と色褪せない、誰に話すこともないけれど自分の中では今も皆の声が聞こえるほどリアルな、輝く思い出。 すごい読書体験だなぁと、ため息をついて思う。自分の記憶と混同しながら、知らないはずの雲南のことを思い出しながら、思う。
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美しく、生々しい、でもぼんやりとした不思議な夢のような独特の世界観の一冊でした。 中国少数民族の慣習や茶文化などを、同性婚という形で描いていて、特に妻の妻となった英姫が不思議な魅力があって、少数民族の村を自分も旅してきたような気持ちになった。
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昭和五十年代半ば、商社勤務の夫に同行し、複数の少数民族が入り交じる中国・雲南省南端の辺境の町に赴いた主人公は、通訳として雇われることになった若い女性・英姫と顔を合わせる。彼女の属する少数民族の習俗に女性同士の同性婚があり、あるきっかけから主人公も彼女と結婚することになる。 あとが...
昭和五十年代半ば、商社勤務の夫に同行し、複数の少数民族が入り交じる中国・雲南省南端の辺境の町に赴いた主人公は、通訳として雇われることになった若い女性・英姫と顔を合わせる。彼女の属する少数民族の習俗に女性同士の同性婚があり、あるきっかけから主人公も彼女と結婚することになる。 あとがきで「中国は不案内の地で、とくに雲南を書くのは難しかった」と多くの人や資料からアドバイス、知識を得たことが記されているが、亜熱帯の異郷の地の渾然とした様子や、蒸し蒸しと肌に纏いつくような空気感などが文章から立ち上るかの如く伝わってきた。 また、主人公と瑞々しく溌剌とした英姫との、仲のよい姉妹のような、親しい友達のような、時に艶かしい肉感を帯びた関係も魅力的に描かれている。旅愁と感傷を誘う物語。
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日本に中国茶が広まり始めた1970年代。中国雲南省に駐在し少数民族相手に織物やお茶を扱う商社マンの妻・敦子が主人公。 物語半ばで、敦子は同居する通訳の少数民族の娘に乞われて女性同士で結婚し、商社マンの妻であり同時に娘の夫として生活する。レスビアンとかいうので無いちょっと不思議な愛...
日本に中国茶が広まり始めた1970年代。中国雲南省に駐在し少数民族相手に織物やお茶を扱う商社マンの妻・敦子が主人公。 物語半ばで、敦子は同居する通訳の少数民族の娘に乞われて女性同士で結婚し、商社マンの妻であり同時に娘の夫として生活する。レスビアンとかいうので無いちょっと不思議な愛の形。そういえば『屋根屋』もちょっと不思議な男女関係でした。 村田さんの考えは良く判りません。でも決して否定的では無い。ただ強く肯定するのでもない。まあ、愛の形なんて色々あるよと言われているようです。 何とも言えぬムワッとした熱気。少数民族の暮らしぶり。月を映す藍の樽。山にこだまする少数民族の歌声。そしてウーロン、プーアールをはじめとする中国茶。「読む」を超えて「手応え」とか「実体」を感じさせます。 あとがきに「中国は不案内」と書かれているのだが、その説得力は素晴らしい。
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男性優位の体制や、男のひとの無理解に、しょんぼりした記憶に響いた。・・しかし、実際に何十年か昔の雲南を旅する気分を味わえたのだが、村田さんは「中国は不案内」とのこと。創作物の力ってすごい。諸外国の、へんてこな日本のイメージ笑えない。
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繊麗な文体は熟達しており、 情景描写、心理描写、比喩表現、どれもお手本にしたいくらい。 次に読む小説のハードルが上がってしまいます。 こと、中国茶に関する描写は、思わず専門店に買いに行ってしまうくらい見事なものでした。 美味しい中国茶を飲みながら読みたい1冊。
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