カイエ・ソバージュ 人類最古の哲学(1) の商品レビュー
中沢新一の著書は読み始めてからもう20年近くなるが、どの著書も「よくわかった」というものはなかった。というか、「よくわからん」わけで、それが良いのだろうと思いつつ、わからんなりにおいしいところはその都度いただきつつで今日に至っている。このカイエ・ソバージュシリーズは学生にたいする...
中沢新一の著書は読み始めてからもう20年近くなるが、どの著書も「よくわかった」というものはなかった。というか、「よくわからん」わけで、それが良いのだろうと思いつつ、わからんなりにおいしいところはその都度いただきつつで今日に至っている。このカイエ・ソバージュシリーズは学生にたいする講義の内容がそのまま本になったものだし、少しは入門的で分かりやすいのかなと期待して買って読んだ。その結果、…ま、言わんとすることはわかった。でも、カチッとおさまったり、スパッと切れたり、スッと腑に落ちたりということはやはりないんだな、これが。そういう持ち味なんだな。全てを割り切り、全てを分かった気になる今の世の中が捕獲できず、取り残してきたものを相手にしようとするとこうなるものなのかね。
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人類最古の哲学は「神話」である。 シンデレラは、もっともポピュラーなペロー版、「本当は怖い」のグリム版、最古の中国版を経て、本来の神話がネイティブアメリカンによって再生される。さらにオイディプス神話ともつながるという、壮大なSFを読んでいるよう。 そして最後に神話を様式だけ、情報...
人類最古の哲学は「神話」である。 シンデレラは、もっともポピュラーなペロー版、「本当は怖い」のグリム版、最古の中国版を経て、本来の神話がネイティブアメリカンによって再生される。さらにオイディプス神話ともつながるという、壮大なSFを読んでいるよう。 そして最後に神話を様式だけ、情報として消化することに対して警告を放つ。 都市、情報空間の中だけでジブリ映画のような神話様式を消費する私たちは自然と断絶し、自然からの恩恵を受けられなくなるのだ。 かぐや姫の子安貝から「燕石」の普遍的な意味。 ピタゴラス派の掟から「ソラ豆」のもつ二元性。
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神話は、具体的な世界との関わりの中で生まれれる。 この本の中で紹介されるいくつかの神話を読んだとき、たしかな感動があった。 なぜ僕は今、神話に感動するのか。 きっと、僕が、具体的な世界に目覚めはじめているからだろう。 これまで浸ってきた、観念の世界から脱出しつつある。 神話と...
神話は、具体的な世界との関わりの中で生まれれる。 この本の中で紹介されるいくつかの神話を読んだとき、たしかな感動があった。 なぜ僕は今、神話に感動するのか。 きっと、僕が、具体的な世界に目覚めはじめているからだろう。 これまで浸ってきた、観念の世界から脱出しつつある。 神話と宗教の違いが、この本では語られる。 神話は具体的な世界をもとに生まれる。対して宗教は観念の世界である。 ああ、今まで自分がやっていたことは、宗教だったのかもしれない、と思った。 また、著者は現在流行しているアニメやゲームの物語は、神話的であるが、神話とは異なるものであるという。 アニメやゲームの物語は、神話の「様式」であり、そこには「内容」がない、と。 「内容」とは、具体的な世界のことである。物質の世界。自然。 大量の物語を消費する僕たちの空虚さの正体が、少し見えた気がした。
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読了。 【借り本】 人類最古の哲学カイエ・ソバージュ1 銃・病原菌・鉄と交換という形で貸し借りした本。全5巻のカイエ・ソバージュシリーズの第一巻です。 それを読んだらこれも面白いよという流れでの交換です。 人類最古の哲学とは神話であるという。 文章化された神話ではなく、文字...
読了。 【借り本】 人類最古の哲学カイエ・ソバージュ1 銃・病原菌・鉄と交換という形で貸し借りした本。全5巻のカイエ・ソバージュシリーズの第一巻です。 それを読んだらこれも面白いよという流れでの交換です。 人類最古の哲学とは神話であるという。 文章化された神話ではなく、文字がない時代に口伝された神話。これが最初の哲学ということです。 レヴィーストロースは名前だけは知ってます。(ブラックラグーンのTwoHandじゃないよ。) 昔に哲学入門的に現代思想の本を読んだことがあるので、うっすらわかります。各地の伝承をもとに人類学を提唱した人。そこからの流れです。 世界各地には似たような神話があるよね。それはきっと石器時代から口伝で伝わって人類が移動したからだよね!っていうところです。 9世紀に発見された最古のシンデレラが中国あったことに驚きです。(文章化されてないだけですが) あとは一般的な綺麗なシンデレラとグロいシンデレラと各地にいろんな伝承があるわけですね。 ということでなかなか興味深いですが、同時にすごい難しい感じがしました。 3巻まで借りてるのでさて次に進むかな。 あるいは脇道にそれるか...w 積み本が山のようにあるので...
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異なる者を結びつける仲介者 神話ときくと、おとぎ話の一つのように捉えていた。 しかし、そこには理想とする社会構造や、人間の不条理さを描いているものが少なくない。 この妙にシュールリアリズムな点が、素直に物語として楽しめない理由かもしれない。 本書は5冊のカイエ・ソバージュの1...
異なる者を結びつける仲介者 神話ときくと、おとぎ話の一つのように捉えていた。 しかし、そこには理想とする社会構造や、人間の不条理さを描いているものが少なくない。 この妙にシュールリアリズムな点が、素直に物語として楽しめない理由かもしれない。 本書は5冊のカイエ・ソバージュの1冊目である。 シンデレラ物語を取り上げ、そのプロトタイプとなる物語が世界のあちこちに存在することを指摘する。 多くは立場の反転を、魔法や超自然の力を借りて行っていることに着目している。(個人的にはインディアンに伝わる『見えない人』が好きなのだが)
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「人類最古の哲学」である神話のお話。 世界のなりたち、その中の自然、人間。それらの本質に関する抽象的思考を哲学とした場合、数万年前からの旧石器時代から哲学はあり、根本的な思考法やその道具立ては変わってない、というカウンターパンチは利いた。 動物や植物など自然界に関する広範な博物...
「人類最古の哲学」である神話のお話。 世界のなりたち、その中の自然、人間。それらの本質に関する抽象的思考を哲学とした場合、数万年前からの旧石器時代から哲学はあり、根本的な思考法やその道具立ては変わってない、というカウンターパンチは利いた。 動物や植物など自然界に関する広範な博物学的知識をもってして、その感触や視覚や行動特性などの感覚を項として論理的に世界を構築する「感覚の論理」。 神話を作っているものはこの分子的構造で、現代の自然科学の原子的構造とは違うけれど、作り方自体は同じなのだと。 世界中に拡散するシンデレラの物語を題材に、その分子的項が一部変形すると全体がその論理に沿って変化する仕方を、世界中のバリエーションをもとに検証する。 旧石器時代になぜしいたげられた汚らしい女の子が報われる話が出てきたのかは言及されないから、イマイチこの題材が何を意図して選ばれてるのかわからないけど、単に世界中にバリエーションがあるからってだけなのかしら。 こういう、莫大な知識に基づく華麗な論理は好きだ。 神話好きが高じたロマンティシズムのきらいもなくはないが、中沢新一は要するに頭が良くて、言語センスがすごい。
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神話は人間が最初に考えだした、最古の哲学です。 面白かった!はやく続きが読みたい。 ピタゴラスが豆を嫌った話を読んで、 ふと、魔女狩りを思った。
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噂では知っていたシンデレラのバージョン違いを考察する授業の記録。バージョン違いをいろいろと読んでいくという形式なので、集中力が途切れるtwitter好きにはちょっと読み進めるのが苦難の道。なのですが、授業形式なので続けられる。そしてアクセントに引用に挙げたような素晴らしい文章が。...
噂では知っていたシンデレラのバージョン違いを考察する授業の記録。バージョン違いをいろいろと読んでいくという形式なので、集中力が途切れるtwitter好きにはちょっと読み進めるのが苦難の道。なのですが、授業形式なので続けられる。そしてアクセントに引用に挙げたような素晴らしい文章が。神話とは何か?なぜ神話が問題となるのか?ということを大変シンプルに伝えてくれてやっとわかった気がする。最近自分内部で流行の右脳、左脳議論に基づいて読むわけです。びっこをひくことの神話的意味のところでは、中学の時に読んだ井上ひさしの小説の最後のなぞのせりふ「地面に根が生えろ」 を思い出したり、金閣寺の主人公を思い出したり、脳ってすげえ。 最後の章では、アニメーションと神話と身体性の欠如についての提言までして、でもそれがベニテングタケのクスリネタで彩られているところとか先生も大変だなとか思ったり。
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面白い。面白いけど、好きじゃない。 シンデレラやそら豆やツバメは生者と死者を仲介する存在。すごく面白い。面白いけどさ、そんなの何とでも言えるじゃないか。人文科学で反証可能性なんて持ち出したら負けなのかもしれないけど、やっぱり腑に落ちない。これって学問なのか? 著者が物語に与え...
面白い。面白いけど、好きじゃない。 シンデレラやそら豆やツバメは生者と死者を仲介する存在。すごく面白い。面白いけどさ、そんなの何とでも言えるじゃないか。人文科学で反証可能性なんて持ち出したら負けなのかもしれないけど、やっぱり腑に落ちない。これって学問なのか? 著者が物語に与えた彼なりの解釈を、唯一絶対の正しい読み方であるかのように押しつけられているような気がして居心地が悪かった。「いくつかの事実に対する、ある一つの可能な説明」でしかないものを、あたかも「すべての事実に対する、ただ一つの説明」であるかのように語る筆者の姿勢に反発を覚える。 神話の重要性を語るプロローグひとつとっても「偉い物理学者のパウリやハイゼンベルクもこう言っていて……」などと他者を利用して自説に権威付けをするようなやり方が目について、初っ端から嫌悪感を覚えてしまった。(だいたい「偉い」物理学者なんて言うか?優秀な物理学者、とかならまだわかるのだけど。単純に趣味の問題だと思うが、そうした細かな言葉の端々に現れる筆者の物の考え方がことごとく肌に合わなかった。) もしこれが飲み屋で隣に座ったおじさんの話だったら、文句なしで気に入っただろう。ただこの内容を「学問」として得意げに提示されることに違和感を感じた。もっと肩の力を抜いて読むべきなのかもしれないけど。
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「人類最古の哲学」とは神話である。神話は感覚の論理を駆使することで、宇宙における人間の生の意味を見出そうとする始祖の創造的活動であり、ゆえに最古の哲学だ。 神話の臨界点とその役割は、空間や時間の中に散逸して、おおもとのつながりを失ってしまっているように見えるものに、そのつな...
「人類最古の哲学」とは神話である。神話は感覚の論理を駆使することで、宇宙における人間の生の意味を見出そうとする始祖の創造的活動であり、ゆえに最古の哲学だ。 神話の臨界点とその役割は、空間や時間の中に散逸して、おおもとのつながりを失ってしまっているように見えるものに、そのつながりを修復し、崩れてしまったバランスを均衡状態に戻すことだ。非対称性となってしまった事象に本来ある対象性を取り戻し、現実の中で両立不能になっている対立項に共生の可能性を論理的に探り出す、決して空想ではない実際的な営みである。 「もはや存在せず、恐らく決して存在しなかったし、これからも多分永久に存在しないであろうが、それについて正確な観念をもつことは、われわれの現在の状態をよく判断するために必要であるような一つの状態をよく知る」(ジャン=ジャック・ルソー) 人間の進むべき正しい道とはなにか、神話には人の根源的な願いが込められているのだ。 太古よりの神話の思考は連綿と続き、物語として現代にも継承されている。本書では神話としてのシンデレラを扱っている。さまざまな民族にまたがるその異文としてのシンデレラ(サンドリヨン)の構造分析から見出すことができる深淵には野生の思考があることに気づく。
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