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サンクチュアリ の商品レビュー

3.8

13件のお客様レビュー

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フォークナー自身、恐…

フォークナー自身、恐ろしい物語と言っただけあって、内容はとても衝撃的です。でも、彼の作品には、一読しただけでは分からない深い意味や魅力がつまっています。ギャングの恐ろしい物語と見えるこの作品も、被害者の女子大生テンプルに焦点をあてて読むことで、また別の読み方が可能になるでしょう。

文庫OFF

2024/04/11

学生時代に一度読んだが、全く、噛みついただけで齧れなかった苦い記憶がある。 今回は、少し理解が進んだかと問われると、自信はない。 ポパイとテンプルを結ぶ線・・重大な場面なのに「黒い玉蜀黍の穂軸」はキーワードであるにもかかわらず、微妙にオブラートがかかり、具体的に把握できなかった...

学生時代に一度読んだが、全く、噛みついただけで齧れなかった苦い記憶がある。 今回は、少し理解が進んだかと問われると、自信はない。 ポパイとテンプルを結ぶ線・・重大な場面なのに「黒い玉蜀黍の穂軸」はキーワードであるにもかかわらず、微妙にオブラートがかかり、具体的に把握できなかった.しかし、その煽情めくニュアンスがどろどろしていて逆に、形よりその場面が立ち上がってきた。 それとは対極的に、グッドウィン一家とベンポウを繋ぐ線は太くしっかと手触りを感じ取れる。 どちらの線も人生においての敗者が描かれ、惨めな絵巻なのだが。 やはり 生命=赤ん坊を守る母の姿であるルビーのエネルギーが迸っているからだろうか。 同じエネルギーでも負のエネルギー~私刑に燃え上がる負の姿と対比してしまった。 知的に問題のあるレベルで生まれつき、障害を持った側面が原因となったような今回の顛末のポパイ。 無論、内面を推し量ることは難しいのだが、やるせない程の残虐な流れを描いたフォークナーの呟きと合わせ、読み下したとはいえ、ぐったり、疲弊した読後となった。

Posted byブクログ

2021/05/27

こんなに読みにくいとは思わなかった。章が変わるごとに今どこにいるのか誰の話なのか迷子になり、どんどん詰まっていく。しかし読み進めるうちに薄らと見えてくるものもあって不思議。 これは私の浅はかな先入観だが、きっと物語の最後には正義は果たされるだろうと思っていた事がことごとく果たされ...

こんなに読みにくいとは思わなかった。章が変わるごとに今どこにいるのか誰の話なのか迷子になり、どんどん詰まっていく。しかし読み進めるうちに薄らと見えてくるものもあって不思議。 これは私の浅はかな先入観だが、きっと物語の最後には正義は果たされるだろうと思っていた事がことごとく果たされずとても混乱した。これが当時のアメリカなのか。この理不尽さがリアリティなのか。 そこまで長い本では無いのに読み終えた時のぐったり感。疲れました。

Posted byブクログ

2016/12/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

まずは玉蜀黍の穂軸で強姦、という煽情的な場面を幾度も聞かされていたために、文中に玉蜀黍の穂のこすれる音が登場するたびにヒヤッとした。 ただしその場面そのものは巧みに隠蔽されて、のちに聞かされる、噂、裁判で提出された黒い玉蜀黍の穂軸、などで言及される。 それによりますます陰惨度を増している。 時系列は巧みに行きつ戻りつするので、まるでよくできた映画のようでもある。 テーマとしては訳者解説にあるように、ポパイーテンプルの陰惨な線だけでなく、(家族に膿み酒に溺れているが清廉な弁護士)ホレス・ベンボウー(嫌疑者リー・グッドウィンの内縁の妻で赤ん坊を守る)ルービーの線がある。 後者は駄目になりつつある現状を、仕事に向かうことを通じて支えていこうという必死の姿勢には、人間への肯定の視線がある。 が、それは挫折。つい最近まで密造酒を都合してもらっていたくせに、賤業と見做してリンチする町の人々には、いつでも起こりうる恐怖を感じる。 また、野卑だが酒を飲めず勃起もできないポパイ、終盤にひ弱だった子供時代が言及されるが、決して描かれなかった彼の内面を想像すると、また別の小説が立ち上がってくる。 重層的で重みがあって、美味しい、小説。読後疲れたけど。

Posted byブクログ

2014/10/11

物語の運びとは直接関係のなさそうな細部に恐ろしさを感じたりした。正義感溢れる弁護士の継娘に対する態度とかね。

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2014/09/25

フォークナーの誕生日に。 酒を密造販売するグッドウィンとアル中で由緒ある出自のスティブンス,内縁の妻で彼の子供を生んだルービーと判事を父に持ち淫乱に落ちたテンプル。法や罪に問われる土俵が同じでも行く末は全然違う。実際に殺人を犯したポパイは原罪ではないことで死刑になり,正義の人ベ...

フォークナーの誕生日に。 酒を密造販売するグッドウィンとアル中で由緒ある出自のスティブンス,内縁の妻で彼の子供を生んだルービーと判事を父に持ち淫乱に落ちたテンプル。法や罪に問われる土俵が同じでも行く末は全然違う。実際に殺人を犯したポパイは原罪ではないことで死刑になり,正義の人ベンボウは孤軍奮闘した果てに敗残者になる。禁酒法時代の米国南部の町で法とか宗教とか恣意的に設定された基準を更に恣意的に運用して人間の運命が決まる。戦争をラブストーリーの舞台に変えるヘミングウェイのおかげで米文学を誤解していた。同時代にフォークナーがいたんだ。 性的不能者ポパイがテンプルに何をしたのか。連れ去られたテンプルをベンボウがようやく見つけて,グッドウィンがトミー殺しの真犯人でないと証言して彼を死刑にしないで欲しい,そう懇願するが叶なわず独白する。「古来変わらぬ悲劇の世の中から腫瘍を除去し焼却するといい。安穏に寝ている自分,悪や不正や涙から逃れた自分には憤怒も絶望も薄れて虚ろな眼球が残るだけ。」合法的社会で無秩序に生き延びる人と非合法社会で秩序だって生きる人の衝突によって後者のみが誅滅される。今まで避けてきた米文学を掘っていてドデカイ鉱脈を見つけた。

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2014/06/07

含みをもたせる表現によって読者の想像力を掻き立てるので、よりいっそう主人公ポパイの残虐性とこころの空虚さが感じられた。現代社会の犯罪を先取りしているような筋立てであった。性犯罪の多くは、加害者になんらかの精神の異常が認められるのではないのか。そしてそれを未然に防止することが難しい...

含みをもたせる表現によって読者の想像力を掻き立てるので、よりいっそう主人公ポパイの残虐性とこころの空虚さが感じられた。現代社会の犯罪を先取りしているような筋立てであった。性犯罪の多くは、加害者になんらかの精神の異常が認められるのではないのか。そしてそれを未然に防止することが難しいだけに、不安と恐怖がまとわりつくのではないのか。

Posted byブクログ

2013/12/17

アメリカ文学特有のこの文章が頭の中で上滑りしていく感覚はなんだろうか・・・。 翻訳に拠るところが大きいんだろうけど、これは大抵の本読みが悩まされる瞬間な気がする。 やっぱり翻訳本は「原著に近づくためのせめてもの手がかり」って考えて読むのが適切かね。

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2013/03/19

本を持った男と銃を持った男の出会い。 世間知らずな若者が足を踏み入れたことにより、突如、崩壊する聖域。 このうえなく厄介な事件に立ち向かうことになったホレス弁護士。 真犯人を自らの口から告げることのできない不憫なグッドウィン夫妻。 ひょんなことから運命の歯車が狂ってしまっ...

本を持った男と銃を持った男の出会い。 世間知らずな若者が足を踏み入れたことにより、突如、崩壊する聖域。 このうえなく厄介な事件に立ち向かうことになったホレス弁護士。 真犯人を自らの口から告げることのできない不憫なグッドウィン夫妻。 ひょんなことから運命の歯車が狂ってしまったテンプル嬢。 そして、可哀相なやくざものポパイ。 主軸となる人物の誰もが救われないが、 圧倒的な描写で暴力的なストーリーを紡ぎだした見事な作品。

Posted byブクログ

2012/10/11

フォークナーはこの作品を「金が欲しくて売れそうなやつを書いた」と言っていたらしい。確かにそういう筋だよなと思うけど、フォークナー特有の見通しの悪さがいい具合にクオリティを保っているというか。 フォークナーが考える「最悪」が詰まっている小説。 フォークナーは辛辣な作家というイメー...

フォークナーはこの作品を「金が欲しくて売れそうなやつを書いた」と言っていたらしい。確かにそういう筋だよなと思うけど、フォークナー特有の見通しの悪さがいい具合にクオリティを保っているというか。 フォークナーが考える「最悪」が詰まっている小説。 フォークナーは辛辣な作家というイメージなんだけど、筋は「最悪」じゃなくとも「アブサロムアブサロム」のほうが持ち前の皮肉が突き抜けていてよかったな。 おいおい「八月の光」も読もう。

Posted byブクログ