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戦争を記憶する の商品レビュー

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12件のお客様レビュー

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2009/10/04

国家・国民にとって戦争を記憶するとはどういうことなのか。戦後に生きる私たちには難しいテーマであるけれども絶対考えなければならないテーマでもある。最初に読んだのは3年位前だったけど、今だからまた読まなければならない気がします。

Posted byブクログ

2009/10/04

広島とホロコースト。 どちらも第二次世界大戦において大きな被害を被った ある意味での象徴となっている二つの場所であり経験。 広島では原爆の経験から絶対平和を願う心が生まれ 反戦の震源地ともなっている。 一方でホロコーストはユダヤ人虐殺の経験から 民族浄化などの絶対悪に立ち向かう責...

広島とホロコースト。 どちらも第二次世界大戦において大きな被害を被った ある意味での象徴となっている二つの場所であり経験。 広島では原爆の経験から絶対平和を願う心が生まれ 反戦の震源地ともなっている。 一方でホロコーストはユダヤ人虐殺の経験から 民族浄化などの絶対悪に立ち向かう責任を問うようになった。 同じような悲劇から なぜ一方では反戦思想が生まれ もう一方ではナショナリズムが台頭するのか。 戦争の記憶のされかたに焦点を当てて その成り立ちを読み解く本。 例えば広島の原爆は日本では反戦の象徴だが アメリカでは第二次世界大戦を終わらせた正義の象徴となっている。 僕は日本人だから後者はどうも受け入れにくいんだけど 日本帝国主義から日本を解放したというのは 結果論的に言えば事実かもしれないとも思う。 こういう一つの出来事からまったく違った結論が どういう風にして導き出されたのかを 政治的な見地からもナショナリズムなどの思想的な見地からも あるいは庶民の見地からも明らかにしていくところは見事。 ナショナリズムの話でいうと 日本でなら第二次世界大戦後 アメリカならベトナム戦争後に 失われた国家の栄光や伝統を なんとか復活することで自我を取り戻そうとする動きがあって それらは思想だけでなく文学や映画などにも見られる。 この辺に関しては僕も著者と同意見で お国のために死ぬとか戦争を美化するようなことをしないと 維持できないような自我など貧弱だと思う。 また歴史を事実と物語に分けて両方から分析したり 広島などの戦争博物館が新しい知を得るための場所ではなく すでに支持している考え方を補強するための場所となっていて それは聖地巡礼に近い状態であることなど 興味深いことがたくさん出てくる。 おじいさんたちが無駄死したことになってはやりきれないからと言って 戦争に意味を見出そうとする人々がいることに驚いた。 僕は戦争で死んだ人は例外なく無駄死だと思っていて 無駄死だからこそ、意味のない不条理な死だからこそ 戦争がなくなることが理想なんだと思っている。 僕はこの人の本がいいなと思ったのは 普通の人の目線で感じるような物事を きちんと論理的に説明しているように感じる所です。 思想などをやっている人はそういう人に特有な 感じ方・考え方をしがちな気がしているのですが 藤原帰一さんは僕たちのような目線で見ているような気がするんですよ。 会った事もなければ話もしたことのない自分たちの先祖の罪を 僕たちに責任を持てと言われても、それは無理だよってとこと 映画や漫画を引き合いに出して分かりやすく書いている点です。 最後のまとめのとこで劇作家の郭宝崑の「霊戯」という作品と ワシントンのベトナム戦争記念碑と沖縄南部の慰霊碑とを出しているのですが 沖縄南部の慰霊碑のことでびっくりしたのが 太平洋戦争の沖縄戦での死者の名前が 日本人、朝鮮・韓国人、アメリカ人を問わず また軍人市民を問わずに刻まれているということです。 こんなことができる沖縄って場所とそこに住む人々は ほんとにすごいなぁと思います。 なんでそんなに自然なことが自然にできてしまうのか。 それを読んでちょっと泣きました。 戦争を記憶する―広島・ホロコーストと現在

Posted byブクログ