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ケツァル鳥の館 の商品レビュー

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4件のお客様レビュー

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2010/09/24

ちょっと小さめサイズのハードカバーで、漢字も少なくて、山本容子の銅版の挿絵がなかなかおしゃれ。 ジャングルの生き物たちの世界にしばし心を飛ばし、戻ってきたら心が少し軽くなっていた、そんな感じでした。 南米グァテマラのジャングルやその周辺の山岳地帯で生きる動物たち。 一匹狼...

ちょっと小さめサイズのハードカバーで、漢字も少なくて、山本容子の銅版の挿絵がなかなかおしゃれ。 ジャングルの生き物たちの世界にしばし心を飛ばし、戻ってきたら心が少し軽くなっていた、そんな感じでした。 南米グァテマラのジャングルやその周辺の山岳地帯で生きる動物たち。 一匹狼(?)の鼻グマ、ヨロイネズミの夫婦、悪名高いイタチ、などなど。 それらの動物を主人公にした短編が連なっていて、美しく危険なジャングルでの命のやりとりが、緊張感とユーモアを交えながら描かれています。 動物たちに人格のようなものが与えられているものの、やりすぎ感はなく、抵抗なく動物たちのすぐそばにある視点になじむことができて、まるで自分が動物になってジャングルの中を歩き回っているような気分に。 で、そんな気分が高まってきたところで、結構あっさりと死んでしまったりする。 感傷的に描かれることもなく、その死すらもまたジャングルの命の循環の中に還っていくのだ、と。 いかに人間が自然界で特異な存在であるか、が動物目線で描かれているあたりもまた面白い。 シートン動物記などは「観察記録」的な雰囲気ですが、こちらはもうちょっと寓話的。 南米という土壌がはぐくんだ自然観や民俗信仰も反映されています。 あとがきによれば、「南米の中等教育のテキストとしてよく用いられている」とか。 平易な文章でありながら、ジャングルの世界を詩情豊かに描き出していて、こんな話が教科書に載っているならちょっとうらやましい。 動物好きとジャングル好きにおススメ。 読みやすいです。

Posted byブクログ

2010/02/24

ジャングルというと、肌にまとわりつくような湿気、むせ返るような緑の匂い、顔の周りをうるさく飛び回る虫といった印象なのだが(『コンゴ・ジャーニー』の影響?)、ここで描かれるジャングルは美しい。 セイバの木の幹の白さ、木々を彩る朝顔や蘭の鮮やかさ・・・。 登場する動物たちを通して、様...

ジャングルというと、肌にまとわりつくような湿気、むせ返るような緑の匂い、顔の周りをうるさく飛び回る虫といった印象なのだが(『コンゴ・ジャーニー』の影響?)、ここで描かれるジャングルは美しい。 セイバの木の幹の白さ、木々を彩る朝顔や蘭の鮮やかさ・・・。 登場する動物たちを通して、様々なジャングルの表情を味わうことができる。ハナグマと一緒に丈高い草むらをサワサワとかきわけ、湿った泥の中を歩くヨロイネズミの視点から日の射さない“緑の底の世界”を眺め、吠え猿とともに香り高い松の木からジャングルを見晴るかす、といったように。 詩情豊かに描かれたこの“緑の館”のなかでは、もちろん、喰うか喰われるかという生の営みが行われているのだが。生命の循環を語る語り口はあくまで厳かで、読んでいてとても心地よい。 ――La Mansion del Pajaro Serpiente by Virgilio Rodriguez Macal

Posted byブクログ

2009/10/04

グァテマラのジャングルに生きる動物たちの姿が鮮やかに描かれているのだけど、それは楽しいだけのものではなく、常に死と隣り合わせの切迫した生活描写で、寓話ながらドキュメンタリーを読んでいる気分になる。ジャングルの連環から外れた存在である人間が脅威として描かれ、鋭い見解を与えている。

Posted byブクログ

2009/10/04

南米文学の持つ複雑さ、こ難しさ、冗長さ、というものはここには入っていない。そういう今では慣れ親しんでいる南米文学ではない。実に判りやすい物語だ。 南米に生きる動物達の生き方がここには描かれている。様々な寓話を秘めつつ、しかし、奇妙な擬人化はない。この本にくらべればシートン動物記は...

南米文学の持つ複雑さ、こ難しさ、冗長さ、というものはここには入っていない。そういう今では慣れ親しんでいる南米文学ではない。実に判りやすい物語だ。 南米に生きる動物達の生き方がここには描かれている。様々な寓話を秘めつつ、しかし、奇妙な擬人化はない。この本にくらべればシートン動物記はあまりに動物を擬人化している。ましてイソップは話にならない。価値の話をしているのではなく、物語の質の違いだ。 ジャングルの中で生きること、他の動物を殺して食べること、また食べられること。それがありのままの世界として書かれている。ピクミンではないから、動物は自分で考えて行動し、その結果、そうした様々な結果を迎える。ただただ、生きることはそういうことだ、と書かれている。 寓話を読んだ後の感触はなく、ジャングルの中に座っているような感覚が残る。おまけに山本容子さんの挿し絵が入っている。これも実に効果的。 私の読書は半分は地下鉄の中だけれど、読んでいる途中で目をあげると、そこに見える世界が違って見える。そう感じる種類の本だった。この本は人に貸そう。うん、絶対そうしよう。

Posted byブクログ