偶然の音楽 の商品レビュー

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72件のお客様レビュー

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2017/12/28

本作への予備知識なくて、ロードムービーのような 旅すること・移動することによる 成長や再生 癒しを主題にした作品かなって想像して読み出したら、全然違った! 無軌道な移動は序奏で、本編は移動を止めた時以降にあった。 三人称によるナッシュの心理描写が緻密で、一進一退を繰り返すジリジリ...

本作への予備知識なくて、ロードムービーのような 旅すること・移動することによる 成長や再生 癒しを主題にした作品かなって想像して読み出したら、全然違った! 無軌道な移動は序奏で、本編は移動を止めた時以降にあった。 三人称によるナッシュの心理描写が緻密で、一進一退を繰り返すジリジリ感が堪らない 無軌道な、堕ちた自分に決別してリスタートしていくための過程を描いているはずと捉えて読み進めていただけに、ラストの描写には 驚かされた 読了後に その衝撃が徐々に薄らいで 落ち着いて改めて振り返ると、一進一退の「退」が刹那的に顕在化した結果がラストであったと思った 生きていれば、また一進一退の物語が続いているのかも、と想像した、ナッシュのその後は読者に心に委ねているかのよう

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2017/06/14

いやあ面白かった。主人公の心象風景がさくさくと変わるのに違和感なく読める。それがこの著者の神髄なのではないかとさえ思う。暫くオースターにはまりそう。

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2017/04/27

途中までは、ドラマ性にワクワクしていたのだ。 終わりの三分の一ほど、空間の開放感とは対照的に、閉鎖的な精神状態からくる停滞感や、そんな状況に置かれた主人公の、他者への疑心暗鬼からくる不安定な情緒に振り回されまくり、ヘトヘトになった。 かといって十分にその疲労感を楽しめたというか、...

途中までは、ドラマ性にワクワクしていたのだ。 終わりの三分の一ほど、空間の開放感とは対照的に、閉鎖的な精神状態からくる停滞感や、そんな状況に置かれた主人公の、他者への疑心暗鬼からくる不安定な情緒に振り回されまくり、ヘトヘトになった。 かといって十分にその疲労感を楽しめたというか、言葉では説明し難いが、とても珍しい読書体験だった。

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2017/03/26

女房に逃げられたジム・ナッシュであったが、行方知れずだった亡き父より突然20万ドルの遺産を受け取ることになった。 消防士を辞め、娘を姉に預けて、家や家財道具一式を売り払いナッシュがしたことは・・・。赤いサーブを買ってアメリカ全土を疾走することであった。 来る日も来る日も理由もなく...

女房に逃げられたジム・ナッシュであったが、行方知れずだった亡き父より突然20万ドルの遺産を受け取ることになった。 消防士を辞め、娘を姉に預けて、家や家財道具一式を売り払いナッシュがしたことは・・・。赤いサーブを買ってアメリカ全土を疾走することであった。 来る日も来る日も理由もなく当てもなく車を走らせるナッシュ。 一年経ち、遺産の残りも少なくなってきた頃、ある道端で拾ったのは若い相棒ジャック・ポッツィであった。ポーカーが大得意だと言うポッツィの話に乗せられる形でナッシュはポーカーの大勝負にのぞむ・・・。 ここまでだけならアメリカン・ニューシネマのノリだなとか、ポーカーの大勝負のくだりになるとハリウッドスター向けのストーリーだなとか、そういう映画的な雰囲気が満載の出だしで、ポール・オースターにしてはエンターエインメント系の映像主体の物語かなと思っていたら、ポーカーの大勝負前後にかけてだんだんとポール・オースターらしいシュールな世界観が満たされてきて、これだよこれ!という感じで期待通りのアンビリーバボーの世界に浸ることができた。(笑) 次第にあり得るべかざる状況と結果に追い込まれていくナッシュとポッツィ。 彼らそれぞれの生い立ちの背景に加えて、掴みどころのない大富豪のストーンとフラワーの生い立ちまで掘り下げて印象づけることで、登場人物それぞれの性格描写にメリハリがあり、物語の展開も丁寧に丁寧に進めていくので、冷静に考えれば突拍子もない展開であるにもかかわらず、物語の進行のままに割と素直にその世界に入っていくことができたと思う。 さらに壁を作る場面では、ナッシュとポッツィ自身の葛藤や彼らの関係や距離感などの心理描写が一層細やかになり、また、2人の大富豪は目に見えない存在となるとともに監督官のマークスの登場、そして次第に明らかになっていくナッシュとポッツィの状況いう心憎いばかりの設定がこれまた面白く、シュールな状況であるにもかかわらず割と現実味のある感覚として自然に受け入れられた。 シュールな世界の中の主人公たちの細やかな心理描写はオースターの真骨頂というべき得意パターンであり、シュールな中にこそ真実を露呈させ炙り出すことができるというオースター文学の魅力が詰め込まれた作品だったともいえる。 最後にはミステリアスな状況も生まれ、これもオースターの得意パターンといえるが、今作品では投げっ放し感も半端なく、それゆえ、どう解釈すべきだったのかの人それぞれの余韻も大きい。 本作品は映画的センスが強く感じられ映画化しても良いのではと思っていたら、解説によるとすでに映画化済みだったのね。

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2017/03/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

読み終わって、どう思えばいいのかがわからなかった。 ナッシュは死んでしまったの?それとも事故に遭ったけど生きてるの? ポッツィはどうなったのか?本当にナッシュが想像している通りの出来事があったのか? わからん! 個人的には、二人が壁を建設していって、達成感を味わっているところを意外と楽しんで読んだ。 ポーカーのルールは全く知らないけれど大丈夫だった。

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2016/07/02

なんと読み始めてから読了まで5ヶ月.間に体調が悪かった時期があるにせよ、なんとも進まない本だった。 もうこういう話はいいかな。他に読むものもあるしね。

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2016/02/17

 “運命は斯く扉を叩く―”  突如として巨額の遺産を手にした主人公はアメリカ中を周る自由奔放な旅に出る。13ヶ月と3日経った夏の終わりの朝、瀕死の重傷を負った博打の天才を救ったことをきっかけに彼らの音楽は鳴り始める。  「望みのないものにしか興味が持てなくてね」ナッシュ  ...

 “運命は斯く扉を叩く―”  突如として巨額の遺産を手にした主人公はアメリカ中を周る自由奔放な旅に出る。13ヶ月と3日経った夏の終わりの朝、瀕死の重傷を負った博打の天才を救ったことをきっかけに彼らの音楽は鳴り始める。  「望みのないものにしか興味が持てなくてね」ナッシュ  残り物には福がある?己とは正反対のものや誰もが見向きもしなくなったものにこそ、時には風向きを変える端緒があるかもしれません。  「あんただよ。あんたがリズムを壊したんだ」ポッツィ  全てが上手くいっていたのに些細な不和で流れが崩れ去るような感覚は誰しもあると思います。悪戯に調和を乱すのは宇宙にちょっかいを出すようなもの。  「自分の中に抱えておる過去を弔う歌を歌うのです」フラワー  今自分の周りに流れる調べは、これまで生きてきた中で徐々に創り上げられてきた音楽。たとえどんな雑音が混じっていたとしても、他人と触れ合えばそれは隠すことのできない響動めきになります。  各々の旋律が絡み合うことで響き渡る悲喜劇。エンターテインメントという言葉だけでは語り尽くせない不合理さと奇想天外な脈絡、そして衝撃的な終止符まで。悲喜交交いくつもの人生が込められた美しい物語。日本でもミュージカル化されてます。  そんなお話。

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2015/12/06

ポール・オースター作品の初読書。聞いていたほどの衝撃とか読後感があったわけではなかったが、面白く一気に読み終えてしまった。 あとがきに原作後の解釈を読者に委ねている云々とあるが、そういう部分が多すぎるような気もする。 それが小説としていいのかはわからないけど、個人的にはわだかまり...

ポール・オースター作品の初読書。聞いていたほどの衝撃とか読後感があったわけではなかったが、面白く一気に読み終えてしまった。 あとがきに原作後の解釈を読者に委ねている云々とあるが、そういう部分が多すぎるような気もする。 それが小説としていいのかはわからないけど、個人的にはわだかまりというか、奥歯に何か残ったような感覚で終わってしまった感がある。 柴田元幸さんの訳も大層評価がいいみたいだが、読んでいて違和感というか、これをこう訳すのかという部分が多々あってなんともはっきりしなかった。 自分が他人におすすめはしないだろうなと思わされた一冊。

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2015/08/16

様々な偶然が物質的にも時間的にも重なりあって物語が進んでいき、ナッシュはある意味自らを襲う偶然や衝動というもののなすがまま、身をまかせて受け入れる人間である。一方でポッツィはそういうものに対抗し「そうでなければならない」ということを重んじる。どちらのたどる運命も救いがないように思...

様々な偶然が物質的にも時間的にも重なりあって物語が進んでいき、ナッシュはある意味自らを襲う偶然や衝動というもののなすがまま、身をまかせて受け入れる人間である。一方でポッツィはそういうものに対抗し「そうでなければならない」ということを重んじる。どちらのたどる運命も救いがないように思われるけれど、そこに至る道は違っている。一方で、ポッツィに出会ってからのナッシュが解き放たれたように2人の時間を過ごしていたように、2人が2人いてはじめて安定した状態になるともいえる。最近ナッシュに寄っている自分なりに共感できた。

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2014/10/08

ポール・オースターの作品は本国アメリカではLiterary fictionと呼ばれているらしい。柴田元幸氏(本書の翻訳者でもある)によれば、アメリカの純文学作家で10万部単位で本を売ることができるのはジョン・アーヴィングとこのオースターくらいのものだとのこと。 ところで、純文学...

ポール・オースターの作品は本国アメリカではLiterary fictionと呼ばれているらしい。柴田元幸氏(本書の翻訳者でもある)によれば、アメリカの純文学作家で10万部単位で本を売ることができるのはジョン・アーヴィングとこのオースターくらいのものだとのこと。 ところで、純文学とエンターテイメントの区別など日本にしか存在しないなんて言説をたまに耳にするけれど、そんなことはなく、海外でもその二つはきっちりと区分けされている。それならば、エンタメ作品並みの売り上げを誇るオースターの小説は純文学なのか? そもそも純文学とは何なのか? と問われると答えに困るのだが……いや、実は困らない。 たとえば本書の後半ではひたすら石を積み上げるだけの場面が展開される。ただそれだけのことなのに、とても面白い。 それではそんなことの何が面白いのか。どう面白いのか。 それを他人にどう説明すればいい? 要するに、そういうことだ。

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