連戦連敗 の商品レビュー
「建築を語る」の続編。主に今までに負けてきたコンペについてお話されています。コンペに負けても、その時考えた案は次の建築に活かされる的な内容です。
Posted by
設計競技、いわゆるコンペで負け続ける世界的建築家、安藤忠雄。 それでもなお、コンペに挑戦し続けるのはどういうわけか。 自身のコンペ挑戦の歴史を切り口に、「建築とは何ぞや」を語った東大特別講義をまとめたのが本書である。 「建築って何なんだ」という素朴な疑問を解消するため。 本書を...
設計競技、いわゆるコンペで負け続ける世界的建築家、安藤忠雄。 それでもなお、コンペに挑戦し続けるのはどういうわけか。 自身のコンペ挑戦の歴史を切り口に、「建築とは何ぞや」を語った東大特別講義をまとめたのが本書である。 「建築って何なんだ」という素朴な疑問を解消するため。 本書を手に取った理由の1つはそれだが、もっと大きな理由は 「安藤忠雄って何なんだ」という疑問を解消することであった。 ①大学に行かず独学で身をおこし、世界有数の建築家に。学閥主義の建築界にあって異色の存在。 ②安藤忠雄の薫陶を直接受けた先輩から聞いた言葉。「教えられたのは『月3万円分の本を読め』ってことだけだね」 ③突如キャンパスに出現した福武ホール。「なんだこの無駄なコンクリートの壁?」というネガティブな印象。 以上3点が僕が知っていた安藤忠雄の全てであり、そこから勝手に想像した安藤忠雄像は 「独学で本を読みあさって勉強してきたという自負を持ち、機能主義に反して無用なコンクリートの塊を量産する人」 本当にごめんなさい。体験に基づかない断片的な情報とは怖いものです。 本書を読んで、疑問のかなりの部分も解消された。 まず、建築とは何か。 「建築とは美学的な視点、歴史的、社会的な視点をもって、素材、技術、工法、構造力学、経済条件といったさまざまな要素を総合的に組み立てることで成り立つもの」 建築は社会から切り離された「芸術」としては存在しえない。時に莫大な予算と人を費やすプロジェクト。 さまざまな制約に縛られながらなお、その建築がそこにある価値を創造していくのが建築家の仕事である。 で、だからこそコンペは重要だ。 コンペで示すのは設計案。競うのはデザインと思想。 自分の建築家としてのマニフェストを社会に示す唯一最大のチャンスだ。 もちろん、勝者になるためには予算や技術の実現可能性が不可欠だが、制約からの逸脱もコンペでならできるのである。 コンペを通して、建築界は「時代の抱える問題と、進むべき道への手がかり」を示してきたといえる。 本書には、安藤自身のものを含め、多くのコンペ案が紹介されており、その多様性、芸術性、思想性に驚かされる。 負け続けたって、社会に影響を与えることができるのである。 次に安藤忠雄の建築とはか。 パッと見て分かるのは、限定された素材とパターン。 つまり、素材は基本コンクリート打ち放し。デザインは厳格な幾何学的パターン。 およそ余計な装飾を排したようなストイックな箱である。 手法が限定される分、思想はくっきりと表れる。 光と影、開と閉、秩序と混沌などを表現しながら、その場所にその建築がある意味を打ち立てていく。 その建築が自然環境と、歴史文化と、そこに住む人々とどういう関わりを持つべきなのか。それをシンプルな形に集約し表すのだ。 ま、偉そうに語っちゃいるが、実際1作品しか見ていない僕は安藤の解説と模型と図面を見てなるほどと思っただけ。 分かったのは、安藤忠雄がデザインをこねくり回して遊ぶ芸術家ではなく 徹底的に地に足を着けて、建築がそこにある必然性を考え抜いているという点。 だから、その土地の人間としてその建築に触れることでしか、本当の価値は分からないだろう。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
〇本の紹介 建築家安藤忠雄さんの東大での講義をまとめた本。 〇メモ p9 「情報は力である。しかし、その力を社会と結びつけ、新しい価値創造へと組み立てあげていくのは、人間の構想力、構築力においてほかにはあり得ない。どれだけ時代状況が変わろうとも、このことに変わりはないだろう。」 p22 「ぎりぎりの緊張状態の中にあってこそ、創造する力は発揮される。」 p67 「連戦連敗で、よくも懲りずに挑戦を続けると思われるかもしれません。ただ私は、立ち止まることが嫌いなのです。たとえ負けても、次があるならば、そこに可能性を求めたい。許される限り、前へ進んでいきたい、そのように考えているのです。」 p222 「与えられるのを待つのではなく、自ら仕事を作り出していこうとする、その勇気と行動力こそ、彼らが巨匠と言われる所以なのです。」 〇考えたこと 安藤さんのことがますます好きになりました。 この本を読んだきっかけは、日経新聞の私の履歴書の連載を読んで。 建築に対して誠実で、真面目で、愛と情熱を持って向き合っている安藤さんのことを好きになって、もっと知りたいと思って読みました。 どんな環境でも、可能性を探り、ひたむきに取り組む安藤さん。 自分にないけれど、私もそうなりたい。 だれもが羨む名建築家。 しかし彼は自分のことを「連戦連敗」という。 負けたらゼロ。しかしアイデアは残る。 そう考え、前へ前へ進んでいく。 そうなって当たり前だというくらい、努力をしている。 特別なことではない。 誰もがそうなれる。 そこに希望があると思いました。 夏に行った直島の話も出てきて嬉しかったです。
Posted by
負けても負けても挑み続けるその姿勢・その精神! 専門用語が多々出てくるので難しい部分もありますが、読む価値アリです。連戦連敗でも命までは奪われない…本当にそうですよね。チャレンジする事を恐れなくなりました。thank you 忠雄氏!
Posted by
安藤忠雄の講義の内容をまとめたもの。 世界的建築家といえどもコンペでは連戦連敗。何ヶ月もの期間を費やして準備してきたものが、一瞬で無となる建築コンペ。そこに臨む精神力の強さはとても常人にはマネできないもの。建築に興味のない人でもきっと楽しめる本。
Posted by
戦時中建築をする仕事もお金も全くない中、自分の理想とする建築の現実を夢見てデザインし続けた建築家達がいたのかと思うと、今生きていく上で不自由なく暮らしている自分の環境に甘んじる事なくやり続けなければと思った。侑香
Posted by
私も、まだまだまだまだ挑戦していかなければと思えた。 コンペで負けたとしても、そこから必ず何かを得ていく姿勢。 これまでに数々の敗北があって、そこで試行錯誤して挑戦し続けてきたからこそ今の安藤さんがあるのだと感じた。 そして今でも、安藤さんは挑戦し続けているんだろう。 安藤さんの...
私も、まだまだまだまだ挑戦していかなければと思えた。 コンペで負けたとしても、そこから必ず何かを得ていく姿勢。 これまでに数々の敗北があって、そこで試行錯誤して挑戦し続けてきたからこそ今の安藤さんがあるのだと感じた。 そして今でも、安藤さんは挑戦し続けているんだろう。 安藤さんの言葉は、まっすぐに届いてくるので好きだ。
Posted by
大学で講義した5回分を収録された本。 安藤忠雄氏は、設計をする時、現地に何度も訪れるそうです。 その地域を肌身で感じ、その地域の人たちと触れ合う事をとても大切にされています。 そこに建つ建築物によって、まちづくり、人の流れなど 後世への影響まで意識を向けている事に、とても好感が持...
大学で講義した5回分を収録された本。 安藤忠雄氏は、設計をする時、現地に何度も訪れるそうです。 その地域を肌身で感じ、その地域の人たちと触れ合う事をとても大切にされています。 そこに建つ建築物によって、まちづくり、人の流れなど 後世への影響まで意識を向けている事に、とても好感が持てる1冊でした。
Posted by
建築家って割に合わない職業だと思う。 やってること本当にすごいのに。 IBD並みに働くのに、なんだよ月給10万て。笑 仕送りか! 昔は医者と並んで讃えられてたのにね。 たぶん母数が増えすぎたんでしょう。
Posted by
世界を相手にコンペ(設計競技)を闘う そして敗退の連続− 建築家は何を学び、考えてきたのか 東京大学名誉教授 安藤忠雄
Posted by