芭蕉 の商品レビュー
おおむね松尾芭蕉の生涯をたどるかたちで、彼の作品、とくに連句を紹介し、その意義について考察をおこなっている本です。 著者は本書に先立って、『西行』(1993年、小沢書店)という比較的大部の著書を刊行しており、西行のひとと作品についての考察をおこなっていました。一方、西行を慕って...
おおむね松尾芭蕉の生涯をたどるかたちで、彼の作品、とくに連句を紹介し、その意義について考察をおこなっている本です。 著者は本書に先立って、『西行』(1993年、小沢書店)という比較的大部の著書を刊行しており、西行のひとと作品についての考察をおこなっていました。一方、西行を慕って旅に生きる道をえらんだ芭蕉については、「旅に出るとどこでも「座」が彼を待っていた」という点で西行とは異なっており、「芭蕉が弟子たちとともに「座」で敬われ、尊ばれる姿を想像すると、死をかけたはずの孤独な旅との間に、大きな違和感をもたざるをえなかった」と告白しています。 しかし著者は、「座」のなかに身を置きながらも孤独であるほかなかったという観点から芭蕉の見なおしをおこないます。たとえば「荒海や佐渡に横たふ天の河」という句には、流人たちの被った悲劇に対する「共苦」の感情があると著者は主張します。さらに、芭蕉の旅は源義仲などの武人たちへの廻向とみなすことが可能だと著者はいい、彼を謡曲の旅僧になぞらえています。 本書では『ひさご』や『猿蓑』のなかの句が多くとりあげられており、作品を鑑賞するさいのポイントが解説されています。そのうえで、複数の人びとによって織りあげられる作品世界が特定の共同体の内部に閉じられたものではなく、ダイナミックに変動するつねに開かれたものだということを、著者は指摘します。 前著『西行』にくらべるとかなりコンパクトな本で、著者のオリジナルな解釈が十全に示されているとはいいがたいように感じました。
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