夢野久作と埴谷雄高 の商品レビュー
雑誌に掲載された「特異な」作家への偏愛、 作品への理解を綴ったエッセイ・評論をまとめた本。 夢野久作については、生い立ちや父・杉山茂丸の人物像を絡めて あの作風の「核」に迫り、 埴谷雄高については主に、獄中での思索から独自の哲学を打ち立て、 その表出としての小説『死霊』を書いたこ...
雑誌に掲載された「特異な」作家への偏愛、 作品への理解を綴ったエッセイ・評論をまとめた本。 夢野久作については、生い立ちや父・杉山茂丸の人物像を絡めて あの作風の「核」に迫り、 埴谷雄高については主に、獄中での思索から独自の哲学を打ち立て、 その表出としての小説『死霊』を書いたことに触れる。 ---------- Ⅰ夢野久作の世界 「ドグラ・マグラの世界」 「ドグラ・マグラ」概説。 昭和に入って日本にも登場した、世界意識を表現する小説。 大正から昭和初期に書かれた 夢野久作の作品こそ現代日本の世界小説の先例である。 「夢野一族の頌」~「吹きわたる風韻」 政治活動家・実業家の杉山茂丸‐泰道(夢野久作)‐龍丸‐満丸という 嫡男の系譜と無関係ではない夢野久作作品の通奏低音、歴史的意義。 「多義性の象徴を生み出す原思想」 鶴見俊輔×谷川健一による、夢野久作を巡る対談。 マージナルな視点で描かれた社会・歴史の様相、 アカデミズムからは程遠い土着の思想性について。 Ⅱ埴谷雄高の世界 「虚無主義の形成」 埴谷雄高の来歴。 不敬罪と治安維持法によって起訴され、転向し、 出所後、独自の論理で日本共産党を批判。 近代日本思想の底面を成す特徴的な主題である「転向」から 思想体系を作った埴谷こそ 近代日本の代表的な思想家と言える。 「埴谷雄高の政治観」 明治以来の日本の政治思想史の中で 独特な政治評論を行ってきた埴谷雄高の政治思想は、 ハッピー・エンドへの期待を持たない。 それは彼が幼少時から「自分が自分であること」に対する 居心地の悪さを直観していたことに由来する。 「手紙にならない手紙」 『太陽』1992年6月号掲載の鶴見俊輔の、 書簡風エッセイの体裁を取った埴谷雄高へのラヴコール。 「『死霊』再読」 五日間の物語のはずが、三日分で途絶えてしまった『死霊』の、 迂遠な思索に埋もれて見落としそうになるあらすじの 明快なまとめ(笑)。 「未完の大作『死霊』は宇宙人へのメッセージ」 『死霊』を巡る埴谷雄高×河合隼雄×鶴見俊輔の鼎談。
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