トロイアの黒い船団 の商品レビュー
ローズマリー・サトクリフといえば、ケルトなどの古代ブリテンが舞台の作品が多い印象でした。しかし、今回はギリシャ神話。 どんなストーリー展開をするのか気になり、読み進めました。オリジナルである「古典作品」の良さを活かしつつ、サトクリフらしさも出ています。
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小学生の頃ギリシア神話が好きでよく読んでいたので、たいていのエピソードは知っていると思う。 今思えば、何が面白かったのだろう? 近親での恋愛、不倫、拉致、手籠め。 ギリシア神話はインモラルの宝庫ではないですか。 この本はトロイ戦争についてサトクリフが、読みやすいよう書き下ろしたもの。 トロイ戦争についても、子どものころ読んだはずだけど、当時私はなにをどう感じていたのだろう? 何も感じなかったのだろうか? 今は、ものすごく腹が立ちます。自分勝手な神々の仕打ちに。 戦争のきっかけってのがそもそも、「一番美しいのは私よ」っていう3人の女神の争いってところからして美しくない。 100歩ゆずって、「美の女神アフロディー手が一番美しい」でいいじゃん。 人間の若者に判定してもらうにしても「私を選べば素晴らしい叡智を与えよう」「私を選べば望むままの権力を」「私を選べば私と同じくらい美しい娘を」 自分の美だけで勝負しろ! 判定することになった青年パリスも、美しい見た目とは裏腹に、結構いい加減で嫌なやつ。 人妻ヘレネを誘惑して自国に連れ帰ったことからこのたびの戦争となったのに、悪びれることもなく、安全地帯から弓を射るくらい。それも渋々。 “「もしも神々がもっとご親切にしてくださったなら、わたくしは、このような妻に背を押されなければ戦に出ないようなお方に、縛りつけられることもなかったことでしょうに」” ヘレネも、この戦は神々のせいだと厭味ったらしく言っておる。 「ヘレネを返せ」「それは嫌」 これで10年も戦っているのである。 人もたくさん死んだ。 さすがにそろそろ戦争を止めようか…と思うと、神々が面子をつぶさせるまいと誰かの心に余計なことを吹きこんで、再び戦火が激しくなる。 死んでいった大勢の兵たち。 巻き込まれた妻たち。子どもたち。 神さまは死なないけど、人間は死ぬんだよ。 何の罪もなく死んでいく人たちを、なんで神様は救わないんだよ。 …それは、神は人間のために存在しているわけではないから、だと思う。 人間の善悪や喜びや哀しみとは次元の違うところに神はいる。 そう思うと、腹立たしいけど、納得はできる。 で、これ。 「ギリシア神話の物語・上」なのね。 となると、下も読みたくなってしまうではないか。 こんなに文句たれたのに。 なんて恐ろしい読書の罠。 ところでタイトルですが、黒い船団はギリシアの船団です。 ギリシアの黒い船団がトロイアを包囲している、と、そういう意味。 これはちょっと勘違いさせやすいタイトルだと思う。
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サトクリフオリジナルの3作目。 登場人物に血が通っていて挿絵も美しく名場面は落とさない どこまでがオリジナルでどこまでがサトクリフオリジナルなのか分からなくなっちゃうのが困りますがそれはこちらの問題です!
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しかし、わきに立って見下ろしている偉大なへクトルにむかって、パトロクロスは最後の息でこう言った。 「そなたのすぐわきにも、死が立っているぞ。この同じ門で、私が鎧を借りている、わが主アキレウスの手にかかって、そなたは死ぬのだ」
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図書館 あと数ページで何ヵ月放置してたん私 イーリアスを読むには私の気力が足りないように思いましたのでまずはあらましを...というわけで児童向けのを。再話はサトクリフ。読みやすかったです。カラー挿絵が美しい。 当初岩波から出てるピカードの再話読みかけてたんですがあっちのが長いの...
図書館 あと数ページで何ヵ月放置してたん私 イーリアスを読むには私の気力が足りないように思いましたのでまずはあらましを...というわけで児童向けのを。再話はサトクリフ。読みやすかったです。カラー挿絵が美しい。 当初岩波から出てるピカードの再話読みかけてたんですがあっちのが長いのだ... 追々イーリアスもちゃんと読むね...そのうち...
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サトクリフ・オリジナル4にして,ギリシア神話の物語・上〜アキレウスの父母となる,ミュルミドンの王・ペレウスと海の精・テティスの婚儀の席上に姿を現した不和の女神・エリスは,黄金の林檎をテーブルに投げ,最も美しい者が手にするべきだと告げて消えてしまう。ヘラとアテナとアフロディテが美を...
サトクリフ・オリジナル4にして,ギリシア神話の物語・上〜アキレウスの父母となる,ミュルミドンの王・ペレウスと海の精・テティスの婚儀の席上に姿を現した不和の女神・エリスは,黄金の林檎をテーブルに投げ,最も美しい者が手にするべきだと告げて消えてしまう。ヘラとアテナとアフロディテが美を競って,人の間にも不和がもたらされた。アフロディテはトロイアの捨てられた王子・パリスに近付き,スパルタ王に嫁いだ《美しい頬のヘレネ》への愛を注ぎ入れる。パリスはスパルタまで出向いて,互いに惹かれ合って,トロイアに駆け落ちを断行し,ギリシアは総力を挙げてトロイア攻略の兵を挙げる。母に隠されていたアキレウスは発見され,十年膠着した戦線が動き出す。ギリシア側の総大将はアガメムノンだが,アキレウスを侮辱する言動でアキレウスが退いてしまい,トロイア側の大将ヘクトルとの戦線は難しい局面で一進一退を繰り返していた。アキレウスやヘクトル・パリス・アマゾン族のペンテシレイア・エチオピアのメムノンら数多の英雄が死んでいく中,オデュッセウスは木馬を遣った計略でトロイアを陥落させる〜さすがはサトクリフだ。ギリシア神話では争いの起こった原因まで述べて居らず,イライラしっぱなしだったイリアスを原因と結果と新たな因縁を絡めて見事な物語に仕上げている。神話は読者や聞き手の「なぜ?」に「神の気まぐれ」としか答えてくれないのがいけないのだ! 下巻は『オデュッセウスの冒険』らしい。それにしても,beforeを『の』と訳すのは売るためとは云え,酷くないか?
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「オリュンポス」の復習として読み直し。実に簡潔で、しかも感動的にトロイでの攻防とその原因、結果を記した本。ローズマリー・サトクリフという人は実にいい文章を書く。
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映画『トロイ』を観て理解を深めたいなとは思ったけど、さすがに『イリアス』を読む気力はなかったので、このダイジェスト版?でお茶を濁すことに。イラストがすごくきれいで、大人向け絵本って感じ。
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