沈まぬ太陽(3) の商品レビュー
この時期になると思い出す本。初めて読んだ時は壮絶すぎて2~3日眠れなかった。遺書の部分は何度読み返しても泣いてしまう。 山崎豊子の執念?のようなものを感じる素晴らしい小説だと思うが、「ノンフィクション(123便墜落事故)をモチーフにした小説」という手法には、少しだけ疑問を感じる...
この時期になると思い出す本。初めて読んだ時は壮絶すぎて2~3日眠れなかった。遺書の部分は何度読み返しても泣いてしまう。 山崎豊子の執念?のようなものを感じる素晴らしい小説だと思うが、「ノンフィクション(123便墜落事故)をモチーフにした小説」という手法には、少しだけ疑問を感じる。 123便墜落事故の関連書籍は片っ端から読み漁ったが、個人的に罪はないのでは?感じる方々について、この巻ではそうでないように書かれており、やや違和感を感じた。この小説を読んだ感想が、そのまま123便墜落事故のイメージにならないで欲しいと思う。全ての事柄に言えることだが、一冊の本を読んだだけで全てを知った気になってはいけない。様々な視点・意見を読み聞きした上で、自分で判断を下すことが大切。この本はそんな気づきを与えてくれる。
Posted by
本巻ではあの日航機墜落事故(1985年8月12日)の始まりから聴聞会までを描いている。前巻までのアフリカ編とは、凄絶さの点でまったく趣を異にする内容である。何せ、520名もの尊い命が一瞬にして奪われた、センセーショナルな事故である。当時私は小学5年生だった。夏休み中の一大イベント...
本巻ではあの日航機墜落事故(1985年8月12日)の始まりから聴聞会までを描いている。前巻までのアフリカ編とは、凄絶さの点でまったく趣を異にする内容である。何せ、520名もの尊い命が一瞬にして奪われた、センセーショナルな事故である。当時私は小学5年生だった。夏休み中の一大イベントである子供会のキャンプ(と言っても近所の公民館なのだが)に行こうと友達の家に呼びに行った時にTVのニュースで速報を見、既に何度もジャンボ機に搭乗経験のある私としては衝撃を受けたものだ。その後数日は、今年3月の震災後のようにTVCMは自粛ムードだったのを思い出す。 もちろん、本作品はフィクションであり、国民航空という架空のナショナルフラッグキャリアを舞台としたものだが、これが日本航空を描いていることは明白である。 主人公:恩地元は、10年超の報復人事から本社に戻ったのだが、本件事故後、遺族係という厳しい職務を担当することになる。常に真摯に対応しようとする恩地の姿には胸が打たれた。本巻で事故後の対応が終わった訳ではなく、次巻から始まる会長室編につながっていく。 私は超文系人間であり、事故原因や機械についての詳細な記述はほとんど理解できず、感覚で読み飛ばすことにした。専門的な事柄まで細かに取材した山崎豊子氏の仕事ぶりには脱帽するものの。私の興味は事故原因よりも人間の機微である。この点、同じ山崎豊子作品の「白い巨塔」における医学知識と同様である。 以下に、興味深かった人間の機微について引用したい。 ・「日本は仏教の国です。遺体を放っておいて、その横で調査などできない」 「だが、犠牲者は神に召され、ここに残っているのはボディだ。今や事故原因の究明が最優先だ」 「お国にも郷に入れば郷に従えという諺があるでしょう。日本人は死者を単なるボディとは考えない。これは宗教の違いです」 →日米の事故調査団で交わした論議である。アメリカ側の発言は唯物論的又は合理主義的ということになるだろう。 ・「今、君が話したことを、きちんと紙に書いてもらいたい」 「今日は、はじめてのお話合いですので」 「要は、書けんという訳か」 「申し訳ありませんが、次回、もう少しきっちりしたお話の時にということで・・・」 「下手なことを書いて、証拠を残したくないという魂胆か」 はじめての交渉で書いたものを残してはその後の交渉がやりづらくなるから、絶対書いてはならぬというのが、会社の指示であった。 →遺族に対する補償交渉の中での、恩地と遺族とのやりとりである。真摯な態度を取り続ける恩地にしてこのルールに縛られているのには意外だった。 ・「被告訴人として、国民航空の社長ら最高幹部の名前は並んでいますが、隔壁修理の際、ミスをした検査部員の名は挙げられていません。これはどういう意図からですか」 「直接、作業に当たった者の責任追及も、私たちは当然考えました。ですが、それは末端の者を処罰して安易な幕引きになりかねないという意見があり、組織の責任者を被告訴人としたのです」 →遺族会である「おすたか会」会長の瀬川が語った告訴の意図である。なるほど、国民航空などの巨大な組織であれば、平気で「蜥蜴の尻尾切り」をするだろう。こうした腐敗した巨大組織では、遺族に対して真摯な態度で接し続ける恩地よりも、綺麗な幕引きができる行天のような人間が出世街道をひた走るのだから困ったものだ。ここ数カ月、新聞一面で見ない日はない電力会社も、このような組織なのだろうか…。そしてこのような組織をもつ団体に生身の生活を委ねている我々の儚さといったら…。
Posted by
テレビの特番などで見るたげで、与えた衝撃や規模もいまいちピンと来ていなかったこの事件の与えた影響の大きさまた凄まじさがわかった。 事故現場の描写はまさに壮絶の一言。 読んでいて気持ち悪くなるくらいに克明だった。 ただ、社会のために動く人より個人のために動く人の方が僕は共感で...
テレビの特番などで見るたげで、与えた衝撃や規模もいまいちピンと来ていなかったこの事件の与えた影響の大きさまた凄まじさがわかった。 事故現場の描写はまさに壮絶の一言。 読んでいて気持ち悪くなるくらいに克明だった。 ただ、社会のために動く人より個人のために動く人の方が僕は共感できます。
Posted by
123便について調べる機会があり、ようやく読んだ。 圧倒的な描写力と、しっかりとした裏付けに圧巻。特に遺書の文章は何度も読み、ひとつも言葉は変わっていないのに泣いてしまった。御巣鷹山関連の文献では一番わかりやすいというのは本当だと思う。 連作ではあるがこれ単体でも十分成立している...
123便について調べる機会があり、ようやく読んだ。 圧倒的な描写力と、しっかりとした裏付けに圧巻。特に遺書の文章は何度も読み、ひとつも言葉は変わっていないのに泣いてしまった。御巣鷹山関連の文献では一番わかりやすいというのは本当だと思う。 連作ではあるがこれ単体でも十分成立しているし、多少えぐい描写はあれど、それも含め素晴らしいので是非読んでほしい。映画化済。
Posted by
国民航空労働組合の努力により、ようやく東京に戻ってきた恩地さん。(その「努力」も「努力、尽力」以外の表現なし。ワカンネー!) ま、もちろん閑職しか与えられず、フラストレーションのたまる日々を送っているときに御巣鷹山飛行機事故→遺族の世話係に。 もともと人徳が人間の格好して歩いてい...
国民航空労働組合の努力により、ようやく東京に戻ってきた恩地さん。(その「努力」も「努力、尽力」以外の表現なし。ワカンネー!) ま、もちろん閑職しか与えられず、フラストレーションのたまる日々を送っているときに御巣鷹山飛行機事故→遺族の世話係に。 もともと人徳が人間の格好して歩いている様な人だから、担当遺族はみんな感謝感謝、恩地さんは利益ばかり追求する会社に憤慨憤慨。 思ったんだけどさ、恩地さんみたいにまともな任務が与えられていない人間を、「見せしめ」って理由だけで会社にとどめておくことあたり、すでに経営的手腕がないんじゃない?大企業では普通なの? そんな会社に「憤慨」したところで、結果は見えてるんじゃない? 何で見切らないのか、甚だ不思議でありまする。
Posted by
もーもどかしいー 本当にこんな腐敗したような航空会社だったの? 恩地さんみたいな人の道理がなんで通じないんだろう。。。 もどかしいまま次巻へ。。
Posted by
余りにも凄惨で斜め読みしかできなかった。そこに東北大震災。本を読んでもテレビをつけても苦しかった。祈る。
Posted by
今までのアフリカ編から一変して、国民航空の御巣鷹山での墜落事故について書かれている。 主人公・恩地元は事故の遺族係として遺族の方々への支援及び補償交渉に当たる。 突然家族を奪われた家族と共に行動する上で目の当たりにされる現実は、容易に受け入れられるものではないが、遺族と真摯に...
今までのアフリカ編から一変して、国民航空の御巣鷹山での墜落事故について書かれている。 主人公・恩地元は事故の遺族係として遺族の方々への支援及び補償交渉に当たる。 突然家族を奪われた家族と共に行動する上で目の当たりにされる現実は、容易に受け入れられるものではないが、遺族と真摯に向き合おうとする恩地の姿と、残された家族の抑えきれない怒りや悲しみ、現実を受け止め、新しい一歩を踏み出そうとする力強さが描かれている。 感想としては、これは必読の一冊。 遺族の声がストレートに描かれていて、家族を突然奪われることの辛さがひしひしと伝わってくる。 公共インフラでの安全性の確保の重要性を、再認識させられる。 正直言って、目をつむりたくなるような描写もあった。 現場でバラバラになった遺体を集め、それを本人かどうか確認するよう遺族は求められるが、自分がもしこういう形で家族を失ったとしたら、向き合うことはできるだろうか・・・・と思うと、この事故の残酷さがより一層深まる。 ただ、全体的にちょっとオーバーに書き過ぎやろ、と思わされる面もあったことは否めないけどねw この事件は、利益追求と安全運航の不均衡から生じた、悲劇的な事件。 責められるべきは、機長のミスなのか、それとも企業の体質なのか。 天下り社長の小暮から、堂本をトップとした新体制に変わり、生え抜き派の堂本としては、民営化を見据えた利益追求を目標に、過度なコストカットを推し進め、それによる整備不備やパイロットの疲弊が最たる原因として書かれている。 しかし、実際の出来事をベースとして書かれたこのストーリーだが、現実では謎に包まれたままである。 この話を飛行機の中で読んだことを、非常に後悔していますw
Posted by
御巣鷹山での飛行機墜落事故。飛行機が墜落すれば、一瞬にして500人以上もの人が死んでしまうという事実。墜落するまでの30分間に乗員乗客が経験した恐怖を知らしめる数々の遺品。この悲しく恐ろしい事故は、当時中学生だった私の中から高校野球の映像と共に、子供であることの何かをも失わせたよ...
御巣鷹山での飛行機墜落事故。飛行機が墜落すれば、一瞬にして500人以上もの人が死んでしまうという事実。墜落するまでの30分間に乗員乗客が経験した恐怖を知らしめる数々の遺品。この悲しく恐ろしい事故は、当時中学生だった私の中から高校野球の映像と共に、子供であることの何かをも失わせたような気がします
Posted by
ここまで3冊一気読み。ちょっと前に「クライマーズハイ」「墜落遺体」を読んでいたので、それも読み直しながら読んでみた。(フィクションとはされているけど、)日航の人たちにも色々苦労があったんだろうと思った。
Posted by