新生の街 の商品レビュー
「リディア・チン&ビル・スミス」シリーズ4冊目。 「どこよりも冷たいところ」と順番を違えて買ったのでシリーズとしては3作目。というわけで今度はリディアが語り手のお話。 年末バタバタしていて読むのに時間が掛かった。多分、今年最後の一冊。 新進デザイナーから盗まれたスケッチの“身代...
「リディア・チン&ビル・スミス」シリーズ4冊目。 「どこよりも冷たいところ」と順番を違えて買ったのでシリーズとしては3作目。というわけで今度はリディアが語り手のお話。 年末バタバタしていて読むのに時間が掛かった。多分、今年最後の一冊。 新進デザイナーから盗まれたスケッチの“身代金”受渡しの仕事を持ち込まれたリディアが、指定の場所に赴いたところ不意の銃撃を受け現金も消え失せた、というところから始まる物語。 この失態に『頭から湯気を立てて怒り狂い、梃でも動かないくらい意地を張る』リディアは、依頼人から解雇されても“自分の事件”として深入りしていく。 今回もまた一筋縄ではない展開で、その後も、ショウのプロデューサーが殺され、怪しげなモデル事務所の経営者が登場し、覆面の男に襲われ、元依頼者の妹やパートナーの良からぬ噂が出てきて…、『自分がなんでここにいるのか分からない』局面が続く。 早春のニューヨークのそこかしこの風景が描かれる中、二人で事件に向かっていくリディアとビルの会話がいい感じで、気の利いたセリフで場面場面が締めくくられていくのを楽しむ。 向こう見ずなリディアの行動は相変わらずだが、「ピアノ・ソナタ」や「どこよりも冷たいところ」を読んでいるので、その勝気なところも家族の中での立ち位置やビルに対する感情の裏返しということが分かってきていて、最初の「チャイナタウン」の印象からはだいぶかわいらしく思えてくる。そんなリディアをそれをさりげなくフォローするビルの姿にも好感。 辿り着いた真相は今回もまたそこまで回りくどくすることあったのという気もしたが、『この件が片づいたらポケットベルを買いにいこう』という時代の物語にあっては、その回りくどさやもどかしさも含めて楽しむものなのだろう。 終章、リディアがジョンにぶったマンモスのたとえ話がおかしくも切なく、『ほんとうに行きたい場所を目指しているように歩いた』キャットウォークの姿がかわいくて良かった。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
交互に主人公の視点が替わるリディア&ビルシリーズの第3弾。今回はリディアの番。 交互に視点が入れ替わることで、ビルから見えるリディアの姿とリディアの内面のギャップ、またその逆が描き出され、主人公達への共感が高まると共に、彼らの色々な面が見えるのが面白い本シリーズ。 前作『ピアノ・ソナタ』では、ビルのタフさの裏でピアノを愛でる繊細さとリディアの調査事務能力の高さが印象的だった。 今作はリディアのビルに対する劣等感や怪しいことを放っておけない猪突猛進ぶり、それを表面的にはおどけながらもそっと手を差し伸べるように支えるビルの姿が印象的。 事件はリディアの3番目の兄アンドリューの知り合いの知り合いで新進気鋭のデザイナー、ジェンナが新作コレクションのお披露目ショウを目前に作品達のスケッチを盗まれ”身代金”を要求され、現金の引き渡し現場にリディアとビルが向かうところから始まる。 指示されたとおり、ゴミ箱にリディアが現金を入れその場を立ち去る、その前から監視についているビルがブツを取りに来た人物を尾行する算段だったのだが、現金をゴミ箱に入れたそのとき始まったまさかの銃撃。 金は消えたが、スケッチ盗難犯からは”あれは自分達ではない、もう一回チャンスをやる気になったらまた連絡する”との電話が。 黒幕はいったい?目的は? リディアとビルはジェンナの周りの怪しい人物達を探るが、殺人やら売春やらドラッグやらのスケッチ盗難とどう関係するのかピンとこない話ばかり掘り出され混乱。 事件の合間に織り込まれる、毎度のふざけたようなビルからリディアへの愛のことば。 リディアもまんざらではないのだが、仕事のパートナーとして割り切りたい理性が働き、やんわりと防御。 その牙城がゆっくりと崩れていくのを見守るのも今回の見どころ。 関係性がちょっと変わった中、次作『どこよりも冷たいところ』ではどんな事件が待ち受けるのか。
Posted by
ケータイ以前の世代としては、 ケータイを登場しない小説を読んで違和感を感じることは、 あまりない。 しかし、こんなにケータイが登場しないことに 焦燥感を感じたことはない。 ダブル主人公とも言える二人が連絡をとりあえないことに、 イライラ、というか、アセアセ、してしまう。 特に...
ケータイ以前の世代としては、 ケータイを登場しない小説を読んで違和感を感じることは、 あまりない。 しかし、こんなにケータイが登場しないことに 焦燥感を感じたことはない。 ダブル主人公とも言える二人が連絡をとりあえないことに、 イライラ、というか、アセアセ、してしまう。 特に今回はリディア・チンの方が主人公のせいか。 前回より思い入れが増しているというか。 中華系の家族との関係が、 微妙に好転しているようなしていないような微妙な感じも良い。
Posted by
リディアとビルのシリーズ3作目。 今回はリディアの事件でファッション業界が舞台です。 ビルはサポートの役回りですね。 ほんと良いコンビです。 仕事上の相棒としてお互いを理解しあっている感じがいいですね。 家族だったり中国人社会だったり、 いろいろなしがらみを抱えつつ体当たりで事件...
リディアとビルのシリーズ3作目。 今回はリディアの事件でファッション業界が舞台です。 ビルはサポートの役回りですね。 ほんと良いコンビです。 仕事上の相棒としてお互いを理解しあっている感じがいいですね。 家族だったり中国人社会だったり、 いろいろなしがらみを抱えつつ体当たりで事件に挑むリディアと、 孤独だけど豊富な経験と広い人脈を持ち堅実な調査をするビル。 最初に依頼を受けたときから何かおかしな感じでしたが、 公園のゴミ箱に現金を置いてくるという単純な作業が、 どんどんおかしな方向へ展開します。 嫌な奴や怪しげな人物も次々現れますが、 お互いの弱い部分をカバーしつつ核心に近づいていきます。 リディアの噂のお兄ちゃんズの内、 一番仲の良いアンドリューも登場します。 余談ですがゲイだったとは思わぬ展開でした。 リディアの仕事について理解があり、 依頼人との橋渡しもしてくれましたが、 思ったよりも危険と分かり、 心配の余り他の兄弟同様つい頭ごなしに反対してしまい、 リディアの反感を買います。 心配する兄の気持ちも当然だと思うし、 兄の言動に庇護するもの(もっと言うと格下)に対する、 侮りのようなものを嗅ぎ取って反発するリディアの気持ちも分かる気が…。 依頼人側にも家族問題があったりして、 家族間の感情は複雑でやり取りは本当に難しいですね。 そんな中家族を持たないビルの存在は、 特異だけど冷静な目として欠かせない役割を果たしている気がします。 またまた余談ですが。 最後の方のワンシーンは遂にビルの想いが報われた感じですか?
Posted by
シリーズで読んでいる探偵もの。 好きな理由は血なまぐささよりも 主人公の感覚が大切に描かれているから。 ABCのリディアと ビルがコンビを組んで事件を解決する。 シリーズもので一冊ごとに主人公が二人の間で入れ替わる。 個人的にはリディアがメインのストーリーがすき。...
シリーズで読んでいる探偵もの。 好きな理由は血なまぐささよりも 主人公の感覚が大切に描かれているから。 ABCのリディアと ビルがコンビを組んで事件を解決する。 シリーズもので一冊ごとに主人公が二人の間で入れ替わる。 個人的にはリディアがメインのストーリーがすき。 アメリカで暮らす中国人家庭の なんともいえない古臭さや 苦労や 素敵な習慣や すぐに言葉にならない愛情表現なんかが 季節とお茶と食事のなかで浮かんでくる。 少しずつ発展していく ビルとリディアの恋の行方も 邪魔にならずほどよい酸味。
Posted by
絡まった事柄が一点に集約していく感じはすっきりなのに、なんだか寂しくなる後味。嫌な感じな寂しさじゃないけど。この2人がとっても好きで所々で共感してしまうからだと思う。 ☆☆☆☆
Posted by
- 1