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ふるさと隅田川 の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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2022/08/20

自身が暮らした隅田川沿いの向島・新川・柳橋で経験した川の大きさ・やさしさ・怖さ。湿地に暮らす人々の性と生と死。ほぼ全て随筆のセレクションななかで、一つだけ挟み込まれている小説『あだな』は船頭夫婦の艶笑譚のように始まり、でもそれだけでは終わらない短編で、これが一番印象に残りました。...

自身が暮らした隅田川沿いの向島・新川・柳橋で経験した川の大きさ・やさしさ・怖さ。湿地に暮らす人々の性と生と死。ほぼ全て随筆のセレクションななかで、一つだけ挟み込まれている小説『あだな』は船頭夫婦の艶笑譚のように始まり、でもそれだけでは終わらない短編で、これが一番印象に残りました。晩年の北洋漁業随行レポートも収められていて、昭和三十年代の鯨や鮭の漁の様子がよくわかります。読んでいるうちに水の音が聞こえてきます。

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2021/09/04

現住所の近隣に舞台となる幸田露伴旧居跡がある。ありし日の近所の風景に思いを馳せつつ、楽しく読んだ。隅々まで教養の行き届いた、心地の良い文体。

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2019/08/16

隅田川のほとりで幼少期を過ごし、その後も隅田川に親しんできた著者の、水辺の風景にまつわるエッセイをまとめた本です。 川本三郎が、佐藤春夫、谷崎潤一郎、芥川龍之介、永井荷風といった文人たちと隅田川とのかかわりについて語った評論集『大正幻影』(ちくま文庫、岩波現代文庫)がありますが...

隅田川のほとりで幼少期を過ごし、その後も隅田川に親しんできた著者の、水辺の風景にまつわるエッセイをまとめた本です。 川本三郎が、佐藤春夫、谷崎潤一郎、芥川龍之介、永井荷風といった文人たちと隅田川とのかかわりについて語った評論集『大正幻影』(ちくま文庫、岩波現代文庫)がありますが、そのなかで川本は、大正時代の隅田川界隈の風景の魅力を、「幻影」としてえがきだしています。本書には、そうした文人たちの目にした原風景としての隅田川と、戦後の臭くて穢い隅田川をみつめながら、静かに感想をつづった「用という字」「川すじ」などのエッセイが含まれています。 現実の川のありさまから遊離して文学的な「幻影」へと思いを馳せがちな読者の安易な感傷を厳しくしりぞけるかのように、たしかなものを見据えようとする著者の文章からは、人と川のかかわりについてあらためて読者の目を向けさせる力を感じます。

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2015/02/20

◆隅田川をはじめ、自然とともに暮らす人びとの姿を映し出している随筆集です。土地(自然)の美しさや雄大さへの憧れ、隅田川とともに生きる人びとへの優しいまなざしが感じられます。一瞬しか味わえないという桜の葉の香り、川のそばで暮らす人びとの力強さ、川の暴力、晩年の父露伴の姿、変わりゆく...

◆隅田川をはじめ、自然とともに暮らす人びとの姿を映し出している随筆集です。土地(自然)の美しさや雄大さへの憧れ、隅田川とともに生きる人びとへの優しいまなざしが感じられます。一瞬しか味わえないという桜の葉の香り、川のそばで暮らす人びとの力強さ、川の暴力、晩年の父露伴の姿、変わりゆく街。繊細で優しいかと思えば、クジラ漁の風景や岩場の崩壊の様子が大胆に描かれていて、なんとも面白いです。季節感や香りを想像させてくれます。 ◆印象に残ったお話 「流れる」花を見ながら、まぶたの裏には故郷が浮かぶ。 「廃園」ある名家の庭にあった松。みんなが「**様のもの」と思っていたが、同時にみんなでそれを楽しんでいた、という在り方が面白いと思った。けれどその家は没落、廃園に松だけが残っていたが、新しくやってきた商家はすべてを作り変えてしまった。 「みずばち」”おまえに水がこしらえられるか”。 「あだな」船頭芳の喜びや別離の悲しみ、そして老い、人生をよくこれだけ描いたなと思う。近所のおじさん的な桶屋の新さんがまたいい。父のあだ名のことを話され成長した芳の息子の気持ちが手に取るように伝わる。 「湿地」”いい土地”ではない湿地に暮らす人びとの力強さ 「鯨とり」クジラ漁の大胆さ。そして殺すことへの感覚、それは職業や商売を超えた感情なのだと思う。 「濡れた男」繁殖行為を終えぼろぼろになったサケに出会った男が、それを看取る場面が印象に残った。不思議な縁。 「地しばりの思い出」発展を急いだ結果自然を失い、いままた自然を取り戻そうと急いでいるという見方が面白い。自然への愛着と畏怖。

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2011/03/21

教訓めいたことは一切ない散文だけれど、自然と生活は一体で、どちらかが一人歩きしてもいけないんだということを思う。

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2011/01/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

人生の局面のように様々な表情を見せる川。 私は東京の土地勘がありませんが、ある人は向島、新川、柳橋など今の風情と重ね合わせて読むことができるのでは。 幸田文の随筆はふと思い出すと読みたくなる魅力があります。

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