土と兵隊・麦と兵隊 の商品レビュー
この小説は、同氏の「兵隊物」の三部作のうちの二作品が収録されています。小説と言う読みもの他に著者の目線から見た「戦争」と言うものが解ります。
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私は戦記文学の存在や、この本の2作品の文学性自体は否定しない。しかし、2作品の根底に見える“偽善”が、どうにも引っかかる。戦中派の方々には青臭いと思われるかもしれないが、寛恕のうえ私の感想を読んでほしい。 私には、2作品にある“敵”と“味方”との二元的な視点が目触りで仕方ない。...
私は戦記文学の存在や、この本の2作品の文学性自体は否定しない。しかし、2作品の根底に見える“偽善”が、どうにも引っかかる。戦中派の方々には青臭いと思われるかもしれないが、寛恕のうえ私の感想を読んでほしい。 私には、2作品にある“敵”と“味方”との二元的な視点が目触りで仕方ない。 同じ日本人のうちに流れる“同胞意識”は、戦場での様々な場面でこれでもかと描かれる。しかし一方で「我々の同胞をかくまで苦しめ、かつ私の生命を脅かしている支那兵に対し、激しい憎悪に駆られた。私は兵隊とともに突入し、敵兵を私の手で撃ち、斬ってやりたいと思った。」という記述が私を戸惑わせる。(「麦と兵隊」P217) この記述のあとに「私は死にたくないと思った。死にたくない。」という独白が続き、それ自体は、死地に置かれた人間の心の底からの描写として傾聴したいが、その一方で、中国人であっても、同じように赤い血が流れ、同じように家族を残して戦地に臨み、同じように「死にたくない」という強い感情に支配されているのは自明の理であり、そこを抜け落として語られていることに大きな欺瞞を感じる。 私のなかでは、先の中国兵への殺意を読んだあと、中国兵捕虜を処刑する場面を見た主人公が「私は眼を反らした。私は悪魔になってはいなかった。私はそれを知り、深く安堵した。」(「麦と兵隊」P275)と言っても素直に聞けない。 アメリカ人作家が、日本人への殺意をむき出しにして日本を爆撃し多くの日本人の生命を脅かしながら、それでも私は悪魔にはなっていなかった、と独白するような米国兵が主人公の小説を書いたら、普通の日本人なら違和感を感じるはず。それと同じだろう。 検閲が支配する当時、素直な心情の吐露が自分の身にどういう形で返ってくるかは同情的に考えてあげないといけないが、私にはどうしてもこの2作品には、作者が内地の日本人に対し、戦地での一種のヒロイズムを伝えようとした意図しか見えない。 (2011/12/31)
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こういう文学を、反戦だとか好戦だとか分類することに意味があるとは思えない。ここに書かれているのは、その時代、その場所で、実際に泥にまみれて戦った兵隊が、前線をどう見ていたかという記録だ。むしろ、歴史的高所に立った後世の視点に「汚染」されていない点が貴重だ。その時代その場所で人々が...
こういう文学を、反戦だとか好戦だとか分類することに意味があるとは思えない。ここに書かれているのは、その時代、その場所で、実際に泥にまみれて戦った兵隊が、前線をどう見ていたかという記録だ。むしろ、歴史的高所に立った後世の視点に「汚染」されていない点が貴重だ。その時代その場所で人々が何を考えていたか知らずに、歴史から学ぶことなんかできない。 兵隊への同情が語られる。国への一体感と、義務感と、敵兵への憎しみも語られる。ついつい引き込まれる。そして、無残なエピソードも語られる。撃たれて瀕死の重傷を負い、腕の中の赤子をあやしながら死んでいく中国人の母親。殺害される捕虜。それを見、心を痛めながら、何をすることもない兵隊たち。国のため、という大義名分が消え去ったときに(それは実際に起きた)、彼らはどのようにその記憶を「消化」したのだろう? そんなことができたのだろうか? いままた戦争が起きれば、ぼくらはまた同じことを繰り返すのだろうか?
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戦争体験記。 反戦でもなく、戦争礼賛でもなく、実際に戦地に行った著者が淡々と戦場での日常を書き記した。という感じの内容です。 戦場の悲惨さも書かれていれば、思いがけずのんびりとした情景もあり、にこやかに談笑する兵隊たちの姿も書かれています。
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大学院のゼミで使用した本。内容は、筆者の戦地における手記である。果たしてこれは反戦小説か、あるいは戦争賛美の小説か?という視点で読んだら面白い。ちなみに、私はどちらでもないと思う。ただ、読後は戦争は悲惨であるなと感じた なお、この本は現在絶版?であり、一般の書店では手に入らなか...
大学院のゼミで使用した本。内容は、筆者の戦地における手記である。果たしてこれは反戦小説か、あるいは戦争賛美の小説か?という視点で読んだら面白い。ちなみに、私はどちらでもないと思う。ただ、読後は戦争は悲惨であるなと感じた なお、この本は現在絶版?であり、一般の書店では手に入らなかった(私は市立図書館で入手)。しかし、戦争を考える際に、実際の戦場の現場を綴った手記は非常に重要な史(資)料となる。出版社には是非再販をお願いしたい。その際は戦後世代の評論家による解説、可能なら海外の評論家による解説(米中など)もつけたら非常に面白くなると思う。
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シナ戦線における「バンド・オブ・ブラザーズ」。これを読んで、シナ戦線について具体的には殆ど知らない自分に気づいた。調べてみると、徐州の占領は5/20。そういう背景を知ってこの作品への理解が一層深まった。 検閲や圧力があったに違いないが、本書は戦争賛歌などではなく、当時の一市民が...
シナ戦線における「バンド・オブ・ブラザーズ」。これを読んで、シナ戦線について具体的には殆ど知らない自分に気づいた。調べてみると、徐州の占領は5/20。そういう背景を知ってこの作品への理解が一層深まった。 検閲や圧力があったに違いないが、本書は戦争賛歌などではなく、当時の一市民が兵隊としていかに戦争に関わったかを知る事が出来る貴重な一冊。その点からは、「麦と兵隊」よりも「土と兵隊」の火野伍長の視点の方が、本当のシナ戦線の姿に肉薄していると思う。 先の戦争についての批判が根本的に欠けるとの意見もあるが、戦中に書かれたと言う背景からも、当時の兵隊の偽らざる姿がここにあると思う。読み継がれるべき一冊。
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戦記日記(戦記小説)の代表作。1938年の徐州会戦に参加した著者の従軍記。史料講読に飽きた歴史系学生はこれを読め。
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