神の子どもたちはみな踊る の商品レビュー
少し古い村上春樹の短編集だが、既読だったが、無性に読みたくなって。 本書は2000年の出版で、1995年に発生した阪神・淡路大震災と同年の地下鉄サリン事件を背景にしている。だから小説の中でも地震の話が度々登場する。昔読んだときは、登場人物や物語が何かのメタファーとしていた部分が...
少し古い村上春樹の短編集だが、既読だったが、無性に読みたくなって。 本書は2000年の出版で、1995年に発生した阪神・淡路大震災と同年の地下鉄サリン事件を背景にしている。だから小説の中でも地震の話が度々登場する。昔読んだときは、登場人物や物語が何かのメタファーとしていた部分が分からなくて、今読めば、もしかしたら何か分かるかもと思ったのだが、結局、よく分からなかった。 フロイト的と言って良いのか、そうした震災や事件に遭遇した人が眠って夢を見たらもしかしたらこんな世界観かもしれない。登場する「かえるくん」が何を意味するのか、深く考えても無理だと思った。単にシーンが地底の怪物と戦う寓話なので、地下鉄サリン事件やそのトラウマの克服っぽいという印象でしかない。 村上春樹独特の喪失からの再生を、様々なシーンで寓話化しているもの、その切ないサイクルが震災や事件と偶々、重奏した物語みたいな感じだろうか。ただ、物語に何かの意味づけをしなくても、幻想的なストーリーや描写が齎す雰囲気は至高であり、単純にそれを味わえば良いのだとも思った。踊って踊って表現し、希望を乞う。色褪せない小説だ。
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推しが声優出演しているアニメーション映画『めくらやなぎと眠る女』の元ネタだと思うので読んだ。 もともと村上春樹のファンタジーとリアルが絶妙に混じり合った世界観好きだけど 今作はかなり気に入った。 なんでこの人の文体ってこんな独特かつ安心感があるのだろう。読むと心が落ち着く。
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初の村上作品。地震にまつわる6篇の物語。最初は何が言いたいのかよく理解できなかったが、後半になるにつれどんどん読みやすくなっていき、最終的には理解できないながらも楽しむことができていた。全篇を通して窺える不思議な雰囲気は独特でよかった
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面白かった、短編集の中ではレキシントンの幽霊と並んで好き。 蜂蜜パイって題名がかわいくていいなぁ 神の子どもたちはみな踊るの雰囲気が好き
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遠い地で起きた阪神大震災を残響として聞きながら、人はしかし日常生活の中に戻っていかなければならない。その場合、とりあえず「今ここ」に存在する日常生活と「遠く」にある異常事態が共存したカオスのような世界を私たちは生きることになる。春樹がこの短編集で目指したのはそうした、「社会」の底...
遠い地で起きた阪神大震災を残響として聞きながら、人はしかし日常生活の中に戻っていかなければならない。その場合、とりあえず「今ここ」に存在する日常生活と「遠く」にある異常事態が共存したカオスのような世界を私たちは生きることになる。春樹がこの短編集で目指したのはそうした、「社会」の底が抜けた「世界」を晒すということではなかったか。春樹らしいセックスやスノッブな細部も控えめに綴られたこの作品集はそうした「世界」の崇高さ、神秘を指し示していると思った。真っ向から描くだけが震災のアクチュアルな表現になるとは限らない
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阪神淡路大震災の影響で書かれた物語。10数年ぶりに再読。前回と変わらず、あまりよくわからないが、蜂蜜パイが面白い。村上春樹は、男性の感傷的な心情を書くのがうまい。
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これが村上春樹...これが村上春樹、なのか? 読みやすくて驚いた。磁石の入った水を飲んでるみたい。飲みやすいけど何か異物も存在する、不思議な感じ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
短編。 問題はないと思っていた夫婦関係の破局と、訪れた北海道での出来事。UFOが釧路に降りる 海辺の町で焚き火をしていた絵描きのおじさんと会話したこと。アイロンのある風景 信仰深い母のことと、偶然見かけたはずなのに消えた父親らしき人の残像。神の子たちはみな踊る ドクターが休暇で訪れたタイでの日々と震災のこと。タイランド 忍耐強い銀行員が出会ったかえるくんと東京を襲う地震を救うために戦ったという、現実が幻想かあやふやな出来事。かえるくん、東京を救う 男友達と女友達との壊したくなかった関係と、静かに変化していった三角関係。蜂蜜パイ 阪神淡路大震災の災害がすべての短編に出てくる。 最後の蜂蜜パイ、なんだか泣きそうになったなあ。 村上春樹さんの影響を受けている他の小説家の人たちが頭に浮かんだ。 それにしても毎回彼の小説を読むのに苦労して、彼の作品のどこらへんがそんなにも魅力なのだろうと疑問に思っていた記憶があるのだけど 今回はとても読みやすかった。 単に読みやすい文章?だったのか、私の読む力がついたのか、純粋に、面白かったなあ。
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神戸淡路震災の後をモチーフとした連作、というか六編それぞれは何も関連性はない。 何かしらの棄損や悲しさは共通するが、結果希望を持たせるのは書下ろしの最終話のみといっていい。が、何らかの変換の後人生は進んでいくところは共通だ。 震災と地下鉄サリン事件を経て書かれているはずだが、オウ...
神戸淡路震災の後をモチーフとした連作、というか六編それぞれは何も関連性はない。 何かしらの棄損や悲しさは共通するが、結果希望を持たせるのは書下ろしの最終話のみといっていい。が、何らかの変換の後人生は進んでいくところは共通だ。 震災と地下鉄サリン事件を経て書かれているはずだが、オウム的な事象を少しでもモチーフに取り入れているのは表題作くらい。オウムについては「アンダーグラウンド」にすべて入れ込むということなのだろう。 短編集としては一番自分にハマったように思う。
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短編6編の連作、久しぶりの春樹作品だけど やっぱりメタファー満載なので読み易い文章なのに考え考えしながら読了。毎度ながら読み手に色んなことを投げてきて答えはあなたが考えなさい!で終わりますね♪ 阪神淡路大震災の5年後に出された「地震のあとで」連作。
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