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フェリシアの旅 の商品レビュー

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2010/03/03

フェリシアの言動のみをみていると、とてもこれが現代の物語とは思えないほど。物語の最後で、“自分はまだ何かを選択できる”とつぶやく彼女が、やっと現代にはまってくる感じで、皮肉というか、苦さを感じさせる。題名にフェリシアの名が冠されてはいるが、彼女と出会うヒルディッチ氏の孤独と心の闇...

フェリシアの言動のみをみていると、とてもこれが現代の物語とは思えないほど。物語の最後で、“自分はまだ何かを選択できる”とつぶやく彼女が、やっと現代にはまってくる感じで、皮肉というか、苦さを感じさせる。題名にフェリシアの名が冠されてはいるが、彼女と出会うヒルディッチ氏の孤独と心の闇に、より強い印象を受ける。それにしても、文庫版のカバーの後ろにある、「家出娘たちを捜し出し、・・・助けの手をのべ・・・殺す。・・・彼女を追いつめていく」といった、まるで、サイコキラーもののようなあおり文句は腹立たしい。ペーパーバックでもサイコパスといった言葉を使っているけど、余計なお世話。映画が先行していたので、仕方ないのかもしれないが・・。殺すといっても、原作では、最後の方のヒルディッチ氏の回想のなかで暗示され、フェリシアの直感として描かれているにすぎず、追いつめられたのは、むしろ氏の方。そういう先入観なしに、作品で最初に描写されたままの(母亡き後、自分のお気に入りの小物で部屋を飾り、こぎれいに暮らし、食べることが何より好きで、町工場の食堂責任者としても人望がある)平凡な中年男としてヒルディッチ氏をとらえ、読み進めていくほうが、どんなに面白かっただろうと、残念に思う。――Felicia's Journey by William Trever

Posted byブクログ