光源 の商品レビュー
近頃の新型コロナ禍のせいで、図書館で本を借りることができなくなってしまった。図書館が臨時休館しているからではなく、心理的に、不特定多数の人が触れたものを手に取ることに躊躇うようになったのだ。 仕方がなく、本棚から、かつて読んだ本を引っぱり出して読む。桐野夏生『光源』の奥付を見ると...
近頃の新型コロナ禍のせいで、図書館で本を借りることができなくなってしまった。図書館が臨時休館しているからではなく、心理的に、不特定多数の人が触れたものを手に取ることに躊躇うようになったのだ。 仕方がなく、本棚から、かつて読んだ本を引っぱり出して読む。桐野夏生『光源』の奥付を見ると平成12年9月とある。札幌に越した年の秋、まだ独身だった僕は何の気兼ねもなく、気になる作家の新刊が平積みになっていたら買っていた。映画を撮る側の、それもシナリオを書く若い藪内、撮影監督の有村、女性プロデューサーの玉置。20年前にこの本を読んだ時は、若い藪内にシンパシーを感じていた。もう50も半ばとなると、藪内の青さが鼻につく。どうにか、周りを懐柔して、その場を収めようとする玉置の視点が近いのかもしれない。 学生映画はスタジオやセットなどないから、どのシーンもロケだが、低予算の劇場公開映画もオールロケで、その様が詳しく書かれている。アメコメが原作で、SFXを駆使すれば、なんでも可能なハリウッド映画より、人の手で丁寧に紡いだような、低予算映画の質感が好きな僕にはたまらない。物語を追っている間だけ、20年以上前に時間が遡った気になる。しばらくは本棚を漁ってみよう。
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この世界のことはよく知らないけど、これってあるある話っぽい。 桐野さんらしからぬあっさり感で、拍子抜けした。 やっぱり桐野作品には、日常を突き抜けた刺激を求めてしまうのです。
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映画を作る個性的な人たちの愛憎人間模様を生々しく描くドラマです。過去の苦い思い出を引きずるヒロインの女プロデューサー、その元恋人の一流カメラマン、駈け出しの新人監督、元はヤクザ映画の冴えない脇役からヒロインのお蔭で今をときめくスター男優。そして元アイドルが今やヘアヌード写真集で話題を狙うぶりっ子女優。ヒロインの夫(元映画界の大監督)とその別れた老妻、男優の異母妹もからみ、それぞれが持つ心の傷を浮き彫りにしていく。ある男性の死という事実に魅せられた人々が集まって、彼を主人公とした映画を作るという設定の下で、その死と虚しさ、そして漠然とした罪悪感を意識せざるをえないという重いテーマのフィクションでした。映画を作る環境がリアルでよく分かり興味深いものがあります。
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映画を作るうえでのお話でした。 カメラマン、プロデューサー、監督、助監督、脚本、俳優、プロダクション。 最初は、全く知らない映画界のお話で浸透するのに時間が かかるが、中盤から味が出はじめる。 出はじめるんですが!! 納得できないフィニッシュに個人的には残念でした。 人間的な弱...
映画を作るうえでのお話でした。 カメラマン、プロデューサー、監督、助監督、脚本、俳優、プロダクション。 最初は、全く知らない映画界のお話で浸透するのに時間が かかるが、中盤から味が出はじめる。 出はじめるんですが!! 納得できないフィニッシュに個人的には残念でした。 人間的な弱い部分と夢へ向かい人生を切り開こうとする 想いと行動が描写されている・・・ でもなぁ・・・・・・
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桐野さんの書くものは基本全部興味深く読むのだけど、これはちょっとだけ退屈感が…。 特に最後のその後のはなし。 他にも書いてるかたがおられたけど、 私も要らないと思った派。 あの二人にそれほど興味が無かったのも確かだし、知りたくなかった感じもある。
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一つの映画を作り上げていく過程に、それぞれの立場の思惑を絡めた作品。 いい映画を作りたい、と集まった人間たちだが、 それ以上に、裏ではプライド、出世欲、色恋、孤独、嫉妬、羞恥心、損得勘定、が渦巻いている。 当然と言えば当然のこと。 みんなが自分を出せば、絶対に成立しない世界。...
一つの映画を作り上げていく過程に、それぞれの立場の思惑を絡めた作品。 いい映画を作りたい、と集まった人間たちだが、 それ以上に、裏ではプライド、出世欲、色恋、孤独、嫉妬、羞恥心、損得勘定、が渦巻いている。 当然と言えば当然のこと。 みんなが自分を出せば、絶対に成立しない世界。 誰を「立てる」かで方向性も変わってくる。 映画製作ってこんななんだ!て言うのも面白かったけど、 うまいこと隠していた裏の感情が噴出し始めてからが、 さらに面白かった。 しかし、最後の主演俳優の隠された物語は、蛇足感があったな・・・
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「いい映画を作る」 そのことに妄執を燃やす人間たちの物語 ミステリでもなく、サスペンスでもない。 衝撃もない え?これ、桐野夏生作品だよね?って確認しちゃいました。 誰も死なないしw ただ、たんたんと話が進み 人それぞれの「映画への想い」が絡まりあう話。 なのに、いつのまに...
「いい映画を作る」 そのことに妄執を燃やす人間たちの物語 ミステリでもなく、サスペンスでもない。 衝撃もない え?これ、桐野夏生作品だよね?って確認しちゃいました。 誰も死なないしw ただ、たんたんと話が進み 人それぞれの「映画への想い」が絡まりあう話。 なのに、いつのまにか引き込まれてしまう そんな不思議な作品でした。
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映画の世界なんて興味ないなあと思ってたのに 出勤前の5分から寝る直前まで手が出てしまった。 まるではまってしまったロープレ。 もう、桐野夏生さんすごい。
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この人の作品を読むとなんだかいつも「微妙なんだよなあ…」などといった感想を抱いてしまうような気がする。 ミステリなどをよく読んでいる向きにとってはひょっとしたらちょっと物足りないんじゃないかとも感じられる、時系列に従った一本道を真っ直ぐ進んでいるかのような構成。 「OUT」然り、...
この人の作品を読むとなんだかいつも「微妙なんだよなあ…」などといった感想を抱いてしまうような気がする。 ミステリなどをよく読んでいる向きにとってはひょっとしたらちょっと物足りないんじゃないかとも感じられる、時系列に従った一本道を真っ直ぐ進んでいるかのような構成。 「OUT」然り、「柔らかな頬」然り、そこには何ら強い伏線も叙述トリックもなく、いわばロードムーヴィー風に、ある意味破滅へと不可逆的に進行する物語が綴られるのみ。 それでいて、読者を鷲掴みにして離さぬのはその筆力の成せる業。 今作は映画撮影の現場が主な舞台となっているが、私は近い立場にいる仕事柄、一層強い関心と共感を持って読むことになり、おそらく甘めの評価になっていることと思う。 正直、中盤までは若干退屈な印象もあったが、井上佐和がトラブルを運んできたあたりから俄然面白く回り出したと感じた。 業界における生身の人間のやりとりも充分にリアルで、特に新人監督が陥る煉獄などはまさにかつての我が身を思い起こさせ、身震いすらしてしまいそうじゃないか。 最後、“後日談”のくだりは個人的には不要と断じたい。
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奴隷の集まり。つまり主人しか頭にない、主人意外を知らない、主人だけが自分のすべて。そんな人たちの集まりだから、衝突は避けられないのだろうし、その構図はどの業界でも変わらない。 それでも最後まで面白く読めたのは、私にはなじみの薄い業界の話だったからなのかもしれない。
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