趣味の問題 の商品レビュー
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この本を読んだきっかけは、人から紹介された作中の食事描写が美味しそうだったから(後にこの食事がとても恐ろしい行為とわかるけれど) 訳がとても読みやすい。これが翻訳ということを忘れてすらすらと読めてしまう美しい文章。原作の物語を一層魅力的にしてくれていると思う。 大企業の社長で豪邸に住んでいるフレデリックと、金のないギャルソンのニコラという対照的な二人が「試食」を通して、他人であるはずの二人が依存し合い、最後には破滅してしまう。 この二人がどう考えても良くない方向に向かっているのに魅力的に見えてしまうのは、二人に向けられる脇役たちの冷淡な目があるからだ。秘書は彼らを軽蔑しているし、ヴァンサンはニコラが次第に入れ込んでいく「試食」について価値を見出さない。ニコラの彼女ベアトリスも、フレデリックの元妻イザベルもフレデリックの異常性を指摘している。ニコラないし読者に示されるはっきりとした異常性は読み手の疑問を代弁し、きちんとした理性を自覚させつつも、フレデリックとニコラのある種の愛情の存在をより引き立たせている。 訳者あとがきにあったようにこれは一種のラブストーリーだ。しかしこの愛は健全で一般的なものとはかけ離れているし、二人の間だけで通じる閉鎖的なもので、嫌悪感を催すものだろう。 この本の主人公二人は物語の吸引力も相まって、どこまでも突き抜けて進み、あのラストに昇華するまでに至ったので読むこちらをとても楽しませてくれた。 他人を支配し作り変える、恐ろしいことをやってのけたフレデリックほどの人物が外界に怯える矮小な臆病さを持つ側面と、異常なのは分かっているのに他人から多大な信頼を寄せられてそこに自身の価値を見出してしまったニコラの依存心は受け入れがたいとはいえ、本書で綴られる細やかな内心に人として共感してしまうのも事実だ。この二人の強烈で危うい関係は今後もそうそう見ることは無いと思う。 最初は耽美小説だと思っていたのに、読み進めるうちに二人の分かち難い関係を本の中で築き上げられつつ、恐ろしい展開にハラハラさせられるサスペンス小説だった。はっきり言って異常な人物たちだ。けれどこの本を読めて良かった。
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おそろしく気持ち悪い作品です。 依存関係を描いた作品ですが ひょんなことから一人の男が 軽い気持ちで受けることになった「試食係」は 思わぬ形で狂気に満ち溢れていくのです。 そして最終的にそれは確殺兵器のごとく フレデリックの心、体を蝕んでいくのです。 その死は何もできなくなったが故の… ぞっとする作品です、読書注意。
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生活のありとあらゆるものを"試食"させなければ生きられない男と、その男のそばで"試食"しなければ生きられない男の狂気的で濃密な関係がどこまでエスカレートしていくのか、不穏極まりない雰囲気のなか一気に読み進めた。迎えたラストにはゾッとしたよ...
生活のありとあらゆるものを"試食"させなければ生きられない男と、その男のそばで"試食"しなければ生きられない男の狂気的で濃密な関係がどこまでエスカレートしていくのか、不穏極まりない雰囲気のなか一気に読み進めた。迎えたラストにはゾッとしたようなほっとしたような、何とも言えない気持ちになって好みの読後感。二人は恋愛関係ではないけれど恋愛以上の相手への執着心と依存心があり、どうしたって離れられないのだろうな…と思った。面白かった!
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本人に先立って味見をする「試食係」という秀逸な思いつきが、だんだん狂気を帯びてくるのに、その渦中の二人はこの上なく楽しんでいて、どんどん加速していく。眩暈がしそう。真っ当な愛が一瞬試食係を正気に戻しそうになるけれど、自分からすすんで囚われた呪縛は解けない。 共依存の関係は、悲しい...
本人に先立って味見をする「試食係」という秀逸な思いつきが、だんだん狂気を帯びてくるのに、その渦中の二人はこの上なく楽しんでいて、どんどん加速していく。眩暈がしそう。真っ当な愛が一瞬試食係を正気に戻しそうになるけれど、自分からすすんで囚われた呪縛は解けない。 共依存の関係は、悲しいけれど、他人には分からない密やかな幸せもあるのか。
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この、主人公うらやましい ―と思ってしまった。 物語の前半で結果はどちらかしかないな、と察したけど、この結末も納得できるものだと感じました。 こういう愛もありなんだろうな。。。とも ただ一人のために尽くすことができる そんな対象に出会えるのは、幸せなことなのかも。とも感じまし...
この、主人公うらやましい ―と思ってしまった。 物語の前半で結果はどちらかしかないな、と察したけど、この結末も納得できるものだと感じました。 こういう愛もありなんだろうな。。。とも ただ一人のために尽くすことができる そんな対象に出会えるのは、幸せなことなのかも。とも感じました。 DVD見ようか、迷いますね。
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小説でも映画でもそうだけど、設定だけでもうワザアリっていうこと、あります。 図書館でこの本を手にとって、表紙の折り返しにあった、 「人生の美食を追及する富豪。それを完璧にする試食家。二人が辿る奇妙で危険な関係。」という売り文句に、設定の勝利の匂いを感じて借りてきました。 バ...
小説でも映画でもそうだけど、設定だけでもうワザアリっていうこと、あります。 図書館でこの本を手にとって、表紙の折り返しにあった、 「人生の美食を追及する富豪。それを完璧にする試食家。二人が辿る奇妙で危険な関係。」という売り文句に、設定の勝利の匂いを感じて借りてきました。 バイトを転々としているギャルソンのニコラは、 客として来店した、大企業の社長フレデリックに、試食係として雇われることになる。 フレデリックは魚とチーズが嫌いで、予期せずにそれらを口にしてしまうことを嫌っていた。 そんなアクシデントを避けるために試食係が必要なのだ。 しかし、フレデリックのニコラに対する要求は徐々にエスカレートしていき――というお話。 専制君主のようでありながら魅力あるフレデリックに対して、 異常さを感じつつも離れられないニコラ。 フレデリックの「ありえない!」というリクエストに結局は応えてしまうニコラ。 次は一体何を「試食」させるつもりだろう?と思いつつ、 二人の奇妙な関係に異様な感じを受けつつ、実は結構楽しんで読めました。 このくせのある感じ。とてもフランスっぽい。 あとがきによると、映画にもなったそうです。2000年に日本でも公開されたらしい。 うーん、記憶にない。
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「ぼくが教えてあげます……」 あらすじを読むとニコラが愛想をつかして、フレデリックの許を去るのかと思っていたけれど…。 嫌いになれるなら、憎めた方がいっそ楽になるのではないかというような共依存の関係性をもつ2人。 自分の人生を充実させるために、人にあらかじめ試食させるなんて、狂...
「ぼくが教えてあげます……」 あらすじを読むとニコラが愛想をつかして、フレデリックの許を去るのかと思っていたけれど…。 嫌いになれるなら、憎めた方がいっそ楽になるのではないかというような共依存の関係性をもつ2人。 自分の人生を充実させるために、人にあらかじめ試食させるなんて、狂っている。 でもお互いに相手が自分を必要としていることで得られる満足感は離しがたいものであり、また2人ともこの異常な関係に陶酔しているのではないかと思う。 ニコラはフレデリックの人生の終結さえも、試食してしまった。 最後まで許可を乞うニコラが痛々しい。
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素敵に気持ち悪い。自分の人生から不快なものを締め出すために、まず誰かに試食してもらうっていう発想からしてクレイジー。でも誰でもちょっとずつやってることなんだろう。 相手の中で自分がどの程度の「地位」を占めているか、これからどの程度相手の中で「昇進」できそうか、という思考とか、相...
素敵に気持ち悪い。自分の人生から不快なものを締め出すために、まず誰かに試食してもらうっていう発想からしてクレイジー。でも誰でもちょっとずつやってることなんだろう。 相手の中で自分がどの程度の「地位」を占めているか、これからどの程度相手の中で「昇進」できそうか、という思考とか、相手を思い通りに動かそうとして実際かなりうまいことやっちゃうとか(そしてその徹底ぶりと規模 が)。 文章は軽やかで整っていてすごく良かったからさらっと読めるけど、内容はかなりおおっぴらにドロドロ。 お前らちょっと落ち着こうよ!落ち着こうね!と半笑いで心配してしまう。 この二人は・・・ある意味運命の相手に出会っちゃったので、ニコラがもうちょっと冷静でなかったら、それなりに仕合せだったのかもしれない。 依存しあうのも大変ですねという。
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大富豪とその試食係の愛憎劇。自己同一性ではなく他者同一性?二人には破滅しか無かろうと思って読んではいたが、ここまで突き抜けた幕引きだとは。表紙がおしゃれ。
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