復活の日 の商品レビュー
災厄の只中に身を置く私たち日本人にとって、これはいつ起きてもおかしくないリアリティを持つ、空想の域を超えた物語として受け取る事しかできないと思います。小説の構成としては、もっと少ないページで片付けられる内容かもしれません。でも、カットしても問題なさそうなこの部分こそがこの作品の血...
災厄の只中に身を置く私たち日本人にとって、これはいつ起きてもおかしくないリアリティを持つ、空想の域を超えた物語として受け取る事しかできないと思います。小説の構成としては、もっと少ないページで片付けられる内容かもしれません。でも、カットしても問題なさそうなこの部分こそがこの作品の血であり骨であり、決して贅肉などではないと言えるでしょう。人間の傲慢さとちっぽけさを壮大なスケールで描き、それでも作者の人類に、生命に持つ信頼のようなものを感じるこの作品には、今、こんな時代だからこそ注目を浴びて欲しいと願います。
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『日本沈没』での人々の死、滅亡の激しい描写もリアリティがあり興奮を覚えたが、本作での静かな世界の終わり方も怖いぐらいの現実味があった。まさか、風邪で人類が滅ぶなんてことが…ほとんど全ての人がそう思いながら少しずつ事態は深刻さを増し、ついには南極の僅かばかりの人間を残し世界は滅亡す...
『日本沈没』での人々の死、滅亡の激しい描写もリアリティがあり興奮を覚えたが、本作での静かな世界の終わり方も怖いぐらいの現実味があった。まさか、風邪で人類が滅ぶなんてことが…ほとんど全ての人がそう思いながら少しずつ事態は深刻さを増し、ついには南極の僅かばかりの人間を残し世界は滅亡する。内容を圧倒的に占めるのは滅亡編だが、人類の復活をタイトルとしているところからも、最後に人間の力強さを感じさせる作品だった。少々前置きが長い気がするが、パンデミック発生から人類の復活までは息つく暇のない面白さだった。
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「果てしなき流れの果てに」から続けて読んだが、この人は、いったいどれだけの知識量があるのだろう・・・もちろん専門家が読めば色々穴があるのだろうが、素人目にはまったく破綻が無いようにみえる(専門用語の羅列で、煙に巻かれている、というのもあるだろうけど)。 第一部は終わりを迎える世...
「果てしなき流れの果てに」から続けて読んだが、この人は、いったいどれだけの知識量があるのだろう・・・もちろん専門家が読めば色々穴があるのだろうが、素人目にはまったく破綻が無いようにみえる(専門用語の羅列で、煙に巻かれている、というのもあるだろうけど)。 第一部は終わりを迎える世界を描いている。 なんの救いもなく死にゆく人々の描写。不覚にも涙が出そうになった。 災厄に見舞われた日本の姿を、3.11の当時に重ね合わせた。 暴動も起きず、黙々と出来ることをし死んでゆくその姿。日本人は現実でも同じように行動できるのだなと思った。 (作者自身が、戦争という災厄を乗り越えてみた姿だったからこそ描けたのかもしれない) 第二部は生き残ることができた人間が、世界の再生を目指す。 第一部に比べて短いが、十分に読み応えがあった。 SFではあるけれど、全編を通じて「人間」をテーマにし、人間の傲慢さ醜さ、そして同時に美しさや尊厳といったものが描かれていると感じた。 娯楽作品にとどまらない、重厚な作品。
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細菌兵器の流出で人類が滅びていく、でも世界中の人が「たかが風邪」と油断して手遅れになっていきます。なんと執筆して50年になるんですね。いま読み直しても迫力で、ラノベを中心にする最近のSFがほんと薄っぺらく見えてきます。
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も、未読やったらいっぺん読んでみ、ですよね〜! なぜ私は今の歳まで小松作品に出会わなかったのか…。ハルキ文庫が田舎の本屋には置いてなかったとか、知的レベルが追い付いてなかったとか… はまあ置いといて。 以下ネタバレもあります*印象に残ったとこ。 物語は南極で幕を開けるんですね〜 ...
も、未読やったらいっぺん読んでみ、ですよね〜! なぜ私は今の歳まで小松作品に出会わなかったのか…。ハルキ文庫が田舎の本屋には置いてなかったとか、知的レベルが追い付いてなかったとか… はまあ置いといて。 以下ネタバレもあります*印象に残ったとこ。 物語は南極で幕を開けるんですね〜 「南極大陸」放映中でタイムリー。後半で「南極は象徴だ」ていうのが出てきて、あ〜うまいこと言う。パンが行き渡った世界で人間はどう生きるか。これ先進国ではまさに皆の問題。 テレビ講座最終回で哲学の役割を一章まるまる使って話す教授の言。 学問が人類のためにできること、やらなければならないこと。東日本大震災を思う。 そして無人の世界での核兵器の応酬という悪夢。 核酸だけで増殖するウイルスが、細菌を隠れ蓑にして人体を破壊する、というアイディアも刺激的。しかも元々は宇宙産でCB兵器の研究から漏れたやつ。 あとがきで出てくる、「有限性」というキーワード。がんばらないとこれを意識できない昨今の若者たる私。死はそばにあるのに…見えてない。 繰り返し出てくるイメージ… 宇宙、地球、人類の儚さ。あの大地震も津波も、ほんのちょっと皺がよったりゆらめいたりする程度のことなのだという感覚。 語りだすときりがないな。これが昭和39年に書かれてるんやね…。インターネットとか出てこないのに、古くないんだよな、ふしぎ。
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小松左京先生の代表作で、細菌兵器を題材にしており70年代の東西冷戦の緊張感が伝わってくる。また、最近の新型インフルエンザ等の報道をみると細菌兵器では無いにしろ現実感がある。 映画は小説とは少し異なる内容であるが、現在の日本映画にはないスケールの大きさ、キャストの素晴らしさがあり、是非みていただきたい。まさに小説、映画とも最高傑作です。
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もうン十年前に読んだ本ですが、本屋で見つけて即買い。昔の表紙もよかったけど、これもいいね。初めて読んだときにはもうすごく興奮して怖いやら面白いやらで夢中になった覚えがあります。
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ユージン・スミノフ教授の最後の講義が印象的。 いかなる天才も、万能ではありえない- -専門をこえての対話と協同をしていく。 自分の枠を拡げることの大切さを痛感した。
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数年前、新型インフルエンザのパンデミック騒ぎのあたりにその内容を思い出していました。 新型の細菌兵器、そして大国による核兵器の使用。人類は効率や効果を追い求めるばかりに、その扱いが手に余るような事態が起きたときのことを考えていないのではないか…原発のことも想起されます。 ...
数年前、新型インフルエンザのパンデミック騒ぎのあたりにその内容を思い出していました。 新型の細菌兵器、そして大国による核兵器の使用。人類は効率や効果を追い求めるばかりに、その扱いが手に余るような事態が起きたときのことを考えていないのではないか…原発のことも想起されます。 それでもタイトルのとおり、人類が欠点や過ちを乗り越えて復活していこうとする一歩が感動的です。 人類がすでに滅びてしまったプロローグから、何故そうなってしまったのか、との理由を遡って行くストーリー展開は、ウイル・スミスの「アイ・アム・レジェンド」を彷彿とさせます。 悲壮なテーマのオープニングから、世界各地で少しずつ広がって行く出来事の数々が、まるで繊細なタッチで演奏される交響曲かのよう。やがて人類復活の日を目指す最終楽章まで、人類文明への哲学的アプローチを包括しながら進んで行きます。
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パニック小説、スパイ小説、アクション小説などの要素がふんだんに盛り込まれた贅沢な本。原作は映画と違って恋愛エピソードがほとんどないのだけど、「互いにほんの少し気になる間柄」で終わってしまうのもそれはそれでいい感じです。 ウィルス学の蘊蓄も(40年前のものとはいえ)面白かった。 イギリスの研究所から盗まれた生物兵器MM-88が、輸送中の事故で外部に漏れだした。それ自体は無害でありながら、内部に致死性の核酸を隠し持つという奇妙な球菌MM-88は、瞬く間に世界中に拡がり、半年たらずのうちに人類を含む陸上温血動物を全滅させる。生き残ったのはただ一カ所、寒冷の壁に阻まれた南極だけだった…。 病気が流行りはじめる初夏から人類がほぼ絶滅する9月までを描いた中盤のなかで、特に圧巻なのは人類があきらめモードに入る直前、まだ辛うじて社会が形を保っている6月あたりの章です。 「なんとかしてこの異常事態が終わるまで持ちこたえよう」と必死になって治療にあたる医療従事者、社会の維持に力を注ぐ行政、人々を孤立させまいと励ましの言葉を送りつづける報道、死体処理に明け暮れる自衛隊、各種ボランティア、そして祈りを捧げる人々… 同じ人類滅亡ネタでも、たとえば核戦争勃発とか巨大隕石激突のようにある日突然人々の日常が一変する話と違って、「新型インフルエンザ流行」というありふれた異変から始まる崩壊劇には、どこまでが日常の範囲内でどこから非日常になっていったのかがはっきりしないジワジワした恐怖を感じました。 これでもかこれでもかとばかりに虚しい努力が描かれるのだけど、最終的な読後感はすごくいいです。 どういうわけか何年かおきに突発的に読みたくなる本。
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