デッドアイ・ディック の商品レビュー
ヴォネガットの作品は皮肉と温情の闇鍋である。ある部分だけをつまみ出せば、それはあまりに口汚い世間への罵りであり、またある部分を切り取れば、まるで宗教の説話のような訓辞になっている。しかし全体として作品を見れば、どうしようもなくひどい世界でも愛してやまない作者の理想主義である。 こ...
ヴォネガットの作品は皮肉と温情の闇鍋である。ある部分だけをつまみ出せば、それはあまりに口汚い世間への罵りであり、またある部分を切り取れば、まるで宗教の説話のような訓辞になっている。しかし全体として作品を見れば、どうしようもなくひどい世界でも愛してやまない作者の理想主義である。 この『デッドアイ・ディック』でも、ライフル銃で妊婦を撃ち殺してしまった少年の人生を、かばい立てすることなくえがいいている。兵器、銃器というものは、使用者の善意・悪意・無為を問わず、使用すれば人を傷つける他はない。中性子爆弾にしてもそうである。見かけがきれいに残っていれば、それは破壊ではないのか。居抜きで占領者が殺戮後の都市を使用するとする悪魔のような所業を、ライフル銃で人を誤って殺した少年の罪と並べたのではないか。
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初めて読んだカート・ヴォネガット作品。 なんだろう、隅から隅までユーモアと皮肉?? 人生を悲観的に過ごしてはいるのだけど、それを楽しんでいる様な感じを受ける主人公。 がっつかない、こういう人物像が魅力的なのだよな、と思います。
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「デッドアイ・ディック」の主役は銃であり、ドラッグであり、中性子爆弾であり、人々の偏見だ。 これらがたくみに物語の中で影響を及ぼしてくる。その主役たちの周りで、 へんてこなダンスを踊らされているのがルディ・ウォールツであり、 ルディの父であり、母であり、兄であり、ドウェイン・フー...
「デッドアイ・ディック」の主役は銃であり、ドラッグであり、中性子爆弾であり、人々の偏見だ。 これらがたくみに物語の中で影響を及ぼしてくる。その主役たちの周りで、 へんてこなダンスを踊らされているのがルディ・ウォールツであり、 ルディの父であり、母であり、兄であり、ドウェイン・フーヴァーとその妻だ。 途中途中にさし挟まれるレシピ、これがまたいい。 そして、人生は演劇だ、ときどき台本までもが登場する。 「デッドアイ・ディック」は「ジェイルバード」のあと、1982年に書かれた小説で、 名前から「ジュニア」が取れた『近年の作品』の範疇に入るのではないかと思うが、 「デッドアイ・ディック」のヴォネガットはとにかく調子がいい。 油が乗っている。職人芸だ。上手い。翻訳もすこぶる調子がいい。 コトバが血肉になっている印象すらある。 あとがきを読めば、どのくらい調子がいいかがさらに伺える。いいタイミングで訳されたと思う。 どの世界にも原理主義者って言うひとたちがいて、 Genesisならピーガブが脱退する前までしか認めないとか、そんな類の主義なんだけど、 ヴォネガットもご多分に漏れず、「猫のゆりかご」や「タイタンの妖女」の評価がめっぽう高い。 しかし、わたしは職人の熟練した腕で生み出された作品がものすごく好きだ。 わたしにとっての最初のヴォネガットは「スローターハウス5」で、何度も読んだ本だし、 おそらく一番好きな本は?と問われれば、これを指すだろう。 けれど、ほんとうにそうだろうか、とふと思う。 ヴォネガットのよさは、熟練の妙味だ。 これがなければ、すべてのヴォネガットを読み続けることなんてなかった。 その妙味のある作品といえば、70年代後期〜80年代に生まれた作品群にあたるのではなかろうか。 それにしても、「チャンピオンたちの朝食」は、もしかしたら「猫のゆりかご」以上にヴォネガットにとって 重要な1冊なのではないかと思った。「チャンピオン」と「青ひげ」、「デッドアイ・ディック」は 三兄弟のような作品だ。こんな本が読めて嬉しい。 もっと読まれていい一冊だと改めて思う。
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爆笑問題太田の好きなヴォネガットやらを読んでみようと読んでみたわけだが、あかん。何が面白いのか全然分からない笑!!映画で観たら面白いかもと思ってしまったよ。
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なんかいろいろあって気持ちがあっちこっち行くけど最終的には心があったかくなる。 結局しみじみといい話だなあと思う。
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2007/12 新刊本屋で買う。東京行きの新幹線で、半ば以上を読む。まだ、時系列がてんやわんやじゃない方。
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