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私小説 の商品レビュー

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12件のお客様レビュー

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2024/07/25

2024.6.27 市立図書館 吉原真里『不機嫌な英語たち』を読み終えたいま芋づる式に読むほかあるまいと思ってた一冊(彼女が自らの境涯と重ねて読んだという若き日の愛読書で、『不機嫌な英語立ち』もそれに触発されて構想しオマージュを込めて書かれたと聞けば…)。『不機嫌な英語たち』を返...

2024.6.27 市立図書館 吉原真里『不機嫌な英語たち』を読み終えたいま芋づる式に読むほかあるまいと思ってた一冊(彼女が自らの境涯と重ねて読んだという若き日の愛読書で、『不機嫌な英語立ち』もそれに触発されて構想しオマージュを込めて書かれたと聞けば…)。『不機嫌な英語たち』を返しにいったらちょうど本棚にあったので迷わず借りてきた。 十代で渡米し滞在20年目を迎えた大学院生の主人公美苗とその姉奈苗の英語日本語混じりの長電話でつづられていく[本邦初の横書きbilingual長編小説]。 初出は「批評空間」第7号(1992)〜第12号(1994)、「批評空間」第II期第1号〜第3号(1994)連載「日本近代文学 私小説 from left to right」。1995年、新潮社より単行本化。 読めば読むほど、なるほど『不機嫌な英語たち』はこの作品の世代をかえた語り直しのようなところがあると合点がいく。ただ、マリは一人っ子だったが、こちらは性質の違う姉妹がセットでその二人の長電話と妹の問わず語りで展開していく。親に連れられてアメリカで教育を受けるうちに日本に帰れなくなってしまったが完全にアメリカ人になりきれるわけでもないどちらつかずのアイデンティティ、時代が古い分、黒人やアジア人の立場もまだまだ十分ではなく、そういう(劣位に置かれた)者同士の感情も一筋縄ではない、そんな感覚がこまやかに伝わってくる。「大人になったというのに、姉妹という以上に親密な人間関係を結ぶことができなかった二人の異邦人」をとりまく孤独はちょっと他人事とは思えなくもあり・・・ 借りた本は読み切れないまま返す期限がきてしまったので、続きを読むためにちくま文庫版を本屋さんで取り置き依頼してから返した。

Posted byブクログ

2013/02/10

これは「私」という人間について書いた小説。 水村美苗の小説は、読み応えがある。これは横書きで、日本語と英語が混ざって書かれたものだが、だからこそ「美苗」という人物が、「私」をつづったものという形をしている。まさに「私」について書いた「小説」である。 海外で暮らした時の、「日本...

これは「私」という人間について書いた小説。 水村美苗の小説は、読み応えがある。これは横書きで、日本語と英語が混ざって書かれたものだが、だからこそ「美苗」という人物が、「私」をつづったものという形をしている。まさに「私」について書いた「小説」である。 海外で暮らした時の、「日本」が「私」になる気持ち、そしてその違和感、孤独感がすごくよくわかる。長期間滞在すればなおのことだろう。 そして言葉のこと。何語で書くのか。日本語でしかつむげない世界がある。でも、日本語で書く限り、英語で書くことには比べものにならないほどの力の差がある。そもそも、日本語で書けるのか。でも「美苗」が書きたいのは、日本語でしか描けない世界。でも、それは本当に日本語の中に存在するのか。英語の中には存在しないのか。片方を切り落としてしまえば、それはまったく違うものになってしまう、「美苗」ではなくなってしまう。 「美苗」という「私」が書くのは、溝に隔てられた「日本語の中の私」と「英語の中の私」が存在する二つの「私」について書かれた小説。それが、この、英語と日本語を混ぜて、横書きで書かれている『私小説』なのではないか。

Posted byブクログ

2011/06/21

中学生でアメリカにわたりそれ以来20年間アメリカに暮らす美苗と姉。日本人が外国で生きるとはどういうことかを私小説の形で書いた小説。アメリカ暮しを経験したことのある人には全く切実で悲しい物語である。長く外国に住んでいる人たちのプライドと疲れの入り交じった姿を思い出さずにはいられない...

中学生でアメリカにわたりそれ以来20年間アメリカに暮らす美苗と姉。日本人が外国で生きるとはどういうことかを私小説の形で書いた小説。アメリカ暮しを経験したことのある人には全く切実で悲しい物語である。長く外国に住んでいる人たちのプライドと疲れの入り交じった姿を思い出さずにはいられない。

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2010/06/28

私が就職活動をしていた頃は就職難が叫ばれて久しかった。まだ学生だった私には、働いている大人はみな、安定しているように見えて羨ましかった。自分で選んだ仕事について、居場所があって、必要とされて、お金をもらえる幸せを世の大人たちはもっとしっかり噛み締めるといいと思っていた。  本書を...

私が就職活動をしていた頃は就職難が叫ばれて久しかった。まだ学生だった私には、働いている大人はみな、安定しているように見えて羨ましかった。自分で選んだ仕事について、居場所があって、必要とされて、お金をもらえる幸せを世の大人たちはもっとしっかり噛み締めるといいと思っていた。  本書を読むと、その頃の気持ちを切実に思い出す。不安と焦りと、自分がどこにもコミットしていけないような孤独感を。「水村美苗」とその姉が、日本にもアメリカにも居場所がないと感じ、職もなく、将来の展望も開けずにいた、その不安や孤独が読む者をものみこんでいくのだ。そういうときに私はいつも思い出す。楽しいことばかりじゃないし、落ち込むこともあるけれど、学生時代にもっと噛み締めればいいと思っていた幸せを、自分が手にしているということを。そうして、「また明日も仕事をしよう!」と思うのだ。

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2010/05/17

親の都合で米国に暮らすことになった姉妹。 成年に達し、日本へ戻る選択もあるなかで、米国に留まり、 どこにも属さない状況に、自己同一性が揺らぐ。 米国になじめず、日本に焦がれ続けた妹だけでなく、 うまくやりすごしてきた姉にも、歪みが生じる。 高い壁に囲まれた袋小路に佇むような閉塞...

親の都合で米国に暮らすことになった姉妹。 成年に達し、日本へ戻る選択もあるなかで、米国に留まり、 どこにも属さない状況に、自己同一性が揺らぐ。 米国になじめず、日本に焦がれ続けた妹だけでなく、 うまくやりすごしてきた姉にも、歪みが生じる。 高い壁に囲まれた袋小路に佇むような閉塞感。 望みを失い、もはや煙さえ立たない自棄。惰性。 傍目には、憧憬の異国生活ではあるけれど。 朧な一条の灯り。 ******* だって文学などというものは、つきつめれば、今ここに見えないものへ あこがれる心の深さで書くものなのではないのだろうか。あこがれる心 の深さだけなら、私は山を動かすくらい持ち合わせているように思えた。 ******* 『私小説』の原動力。

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2009/12/12

うじうじしないで早く日本に帰ればいいのに、と思いながら読んだ。でも特殊な環境の下で作られた姉妹のしがらみは容易に断ち難いのだろう。 アメリカにも日本にも違和感を感じる境遇に共感はできないが、そんな人のアイデンティティはどこに落ち着くのだろう。

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2009/10/07

2009/04/06- 天神 ちょっと読みにくそうではある 2009/04/18- 返却期限が過ぎたので借り直し アメリカにも、日本にも帰属を見出せない姉妹の不安と諦めが露になって面白くなってくる。 東側の話というのも親近感が沸く。 私もあのままアメリカで大人になったらこんなこと...

2009/04/06- 天神 ちょっと読みにくそうではある 2009/04/18- 返却期限が過ぎたので借り直し アメリカにも、日本にも帰属を見出せない姉妹の不安と諦めが露になって面白くなってくる。 東側の話というのも親近感が沸く。 私もあのままアメリカで大人になったらこんなことを考えるようになったのだろうか。 やはり日本人は韓国・中国人に間違われると不快がるし、西洋人ぽく見られると喜ぶ。 ましてや自分たちが黒人と同じ分類に見られているだなんて、夢にも思わない。 日本というシャボン玉から分裂した小さなシャボン玉で守られて欧米社会に入る、という表現は非常に的を射ている。

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2009/10/04

 これは何だかんだいって西欧における東洋だとか、言語民族国家を問題にして言えるように見せかけて単に家族がうざいと言いつづけるだけの話。  に見えました。  アメリカに一家で移住した姉妹を中心に話は展開していきます。有色人種だからとかアメリカになじめなかったとかが今の姉妹の人生が上...

 これは何だかんだいって西欧における東洋だとか、言語民族国家を問題にして言えるように見せかけて単に家族がうざいと言いつづけるだけの話。  に見えました。  アメリカに一家で移住した姉妹を中心に話は展開していきます。有色人種だからとかアメリカになじめなかったとかが今の姉妹の人生が上手く行っていない理由として登場するのですが、読んでいるとそんな人のせいにしてばっかりで全然自分の頭で冷静にものを考えないから駄目なんだろうという苛立ちに苛まれました。  いやきっと日本で生まれ育って環境に恵まれてるから全然そう思うんだろうけれども。  駄々をこねても仕方ないのですよ。と登場人物にいってやりたい。

Posted byブクログ

2009/10/04

海外で日本人・東洋人を意識する瞬間などといった頷ける場面と、そりゃお前だけだろって部分の混ざり具合が面白い。というより単純にバイリンガル&横書きってところが新鮮。

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2009/10/04

ちょっと暇だったから借りてみた。バイリンガル小説。会話にしょっちゅう英語がでてくる。その度にその意味が気になる。異郷の地で長い期間暮らすことは、きっときっととてつもなく寂しいのだろうし、同じ志を持つ人間が沢山沢山まわりにいないとダメになっちゃいそう。日本は、狭くてみみっちくていい...

ちょっと暇だったから借りてみた。バイリンガル小説。会話にしょっちゅう英語がでてくる。その度にその意味が気になる。異郷の地で長い期間暮らすことは、きっときっととてつもなく寂しいのだろうし、同じ志を持つ人間が沢山沢山まわりにいないとダメになっちゃいそう。日本は、狭くてみみっちくていいとこもあるけど結構どうしようもない国だと思ってるけれど、横着して生きてゆくには、結構いい国なのかなって。 でも、結局保守的な人間は、どこに行ってもそうなのかなって。

Posted byブクログ