猫の帰還 の商品レビュー
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私には、おもしろかったとは言えない。 猫のロード・ゴートのとてつもないロード。それも戦時下の。 空軍パイロットの主人の後を追い、疎開先の気に触る喧騒から逃れるように旅する黒猫ロード・ゴート。 でもその旅は、あまりにも人々の恐怖の匂いがつきまとっていた。 …凄まじいストーリーテリング。飼い主のジェフリーと、残された妻フローリーだけでなく、 猫が各地で出会う、餌とあたたかな屋根を与えてくれる、猫好きな人たちの物語があった。 監視所に一人で働くストーカー、兵たちのために、家を貸し、食事の世話をするスマイリー夫人、そしてスミス軍曹。。 お腹に子をどもをはらんだロード・ゴートが目指した馬屋と、荷馬車屋のオリー。このオリーとの日々は、戦争の悲惨さを本当に物語っていた。村が空襲を受け、焼け野原と化してしまう。荷馬車を引いて、いつしか避難してきた人々を連れて歩いたあの日々、何百人という人々を、村外れの農場に住まわせたオリー爺さん。 子猫のうち、一番身体の大きい子どもだけを連れて、北へ旅した。夫が戦死し、生きる気力もなかった作家のスーザン。 スーザンの元に子猫をおいて、また主人の匂いを求めたロード・ゴートは、不発だんに吹き飛ばされ、爆撃機乗りの飛行機で暖をとる。そしてトミーの膝の上で、なんとドイツ軍の空軍を撃ち落とす手伝いまで… 行く先々て、黒猫は幸運をもたらすと歓迎されるが、ロード・ゴートはただただ、愛する人の膝を探し旅しただけ。。 猫が去る時には、死の影が必ずあるのです。計り知れないほどの人々の死が。 それでも、彼女の強さになんとか旅を続けたけれど、 わたしは本当にこの本がおもしろいとは言えないし、できれば二度とこれを読まずに済む世界にいたい。。
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本格派旅猫日記。擬人化されない猫の描写から猫への敬愛の念があふれている。 猫の目を通して世界大戦下の英国の「日常」がオムニバス形式で切り取られていくロードムービー。ウェストールの他の作品同様、とりあげる素材一つ一つは現実の重い手触りがあるので、読み進めるのが時に苦しくなるが、猫...
本格派旅猫日記。擬人化されない猫の描写から猫への敬愛の念があふれている。 猫の目を通して世界大戦下の英国の「日常」がオムニバス形式で切り取られていくロードムービー。ウェストールの他の作品同様、とりあげる素材一つ一つは現実の重い手触りがあるので、読み進めるのが時に苦しくなるが、猫は勝手気ままに旅を続けていくところが何とも飄々として見事。そして時代や土地を超越して胸に せまってくるほど鮮やかだ。 もし映像化できたら、本以上に魅力が伝わるのかも・・
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ヤングアダルトコーナーにあった本だけど、大人向けな気もする…? 軍曹とスマイリー夫人のつかの間の愛と、老馬車屋・オリーが難民達のモーゼになる話が素敵だった。
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第二次世界大戦中、イギリスがドイツに劣勢だった頃の物語であり、放浪の物語という点で『海辺の王国』に並ぶ作品だと思う。こちらが先に書かれている。 ウェストール初心者には『海辺』をおすすめする。読みやすい。少年が語る物語だから。こちらは猫が主人公とはいえ、安易に語らせたりはしない。よ...
第二次世界大戦中、イギリスがドイツに劣勢だった頃の物語であり、放浪の物語という点で『海辺の王国』に並ぶ作品だと思う。こちらが先に書かれている。 ウェストール初心者には『海辺』をおすすめする。読みやすい。少年が語る物語だから。こちらは猫が主人公とはいえ、安易に語らせたりはしない。より読解力を要する。 これを小六の推薦図書にしている教科書もあるけど、『海辺の王国』が教師に嫌われるのは、性行為を暗示する描写があるため。 ゴート卿という戦争の英雄の名をつけられた雌猫は猫らしい賢さと愛情とクールさを併せ持つ最高にかっこいい猫。 猫にわかりやすさを求めない人にぴったり。
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主人を探してさすらう猫が、第二次世界大戦、ダンケルクでの敗戦後、ドイツの侵入に怯えるイギリスでいろいろな人間たちと出会う。 戦争が、普段の日常生活を変えていくさまを豊かな切り口で描いていく。 日常生活を送る市民と非日常そのものである戦争が邂逅するすぐれた小説。ただし短篇集なのでち...
主人を探してさすらう猫が、第二次世界大戦、ダンケルクでの敗戦後、ドイツの侵入に怯えるイギリスでいろいろな人間たちと出会う。 戦争が、普段の日常生活を変えていくさまを豊かな切り口で描いていく。 日常生活を送る市民と非日常そのものである戦争が邂逅するすぐれた小説。ただし短篇集なのでちょっと展開が急かな。軍隊が戦争で恐怖や無秩序をもたらすだけでなく、秩序と救済をもたらす場面も出てくるのがリアルな戦時体制という感じ。
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猫好きなら読んで楽しめる、猫の主人への愛。 主人を捜し求めて旅をする猫。 結構悲惨でしんどい道中なのに、 エンディングはゆっくりと物語が終わります。 猫はその波乱万丈の生涯も、しなやかに淡々とのりきり、 スマートに旅を終えます。 犬が題材だと、さもお涙頂戴の演出が そこかしこに...
猫好きなら読んで楽しめる、猫の主人への愛。 主人を捜し求めて旅をする猫。 結構悲惨でしんどい道中なのに、 エンディングはゆっくりと物語が終わります。 猫はその波乱万丈の生涯も、しなやかに淡々とのりきり、 スマートに旅を終えます。 犬が題材だと、さもお涙頂戴の演出が そこかしこに挟まれそうですが、 本書では、とても上品なご主人様への愛が物語られています。
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猫もの、児童文学を選んで読んでいた頃知りました。 見つけたのは、図書館の児童書コーナーの本棚 いずれにせよ、優れた作品というのは 読み応えがあり、読後の余韻も響いています。 これもそうした一冊。 第二次世界大戦下のイギリスで、疎開先から、出征した飼い主を探して 黒猫ロード・ゴー...
猫もの、児童文学を選んで読んでいた頃知りました。 見つけたのは、図書館の児童書コーナーの本棚 いずれにせよ、優れた作品というのは 読み応えがあり、読後の余韻も響いています。 これもそうした一冊。 第二次世界大戦下のイギリスで、疎開先から、出征した飼い主を探して 黒猫ロード・ゴートの長い旅は始まります。 行く先々で様々な出会いがあり、新たな飼い主たちとの束の間のふれあい、 別れを重ねて旅を続けるのですが、緊迫した情勢の中で、それぞれの 人々の心と生活に希望と救いを灯し、確かな足跡を残していきます。 児童文学の定石というか、結局は 邦題タイトルのとおり、帰還する猫の物語なのですが 長い深い道中の出会いと別れのひとつひとつが、 心に強く響く傑作だと思います。
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あらすじを聞いて猫版名犬ラッシーかな? と思ったがさにあらず。猫と犬くらいは違う。なんだかんだタフなロード・ゴート。知り合った人間たちは勝手にがんばったりふっきれたり。猫ってそういうもんかも。
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第二次世界大戦中のイギリスのお話。 日本からすればイギリスって敵国で、そして戦勝国で、さぞかし余裕ぶっこいていたんだろうと思いきや、本国はナチスドイツからの空襲にさらされ、食糧は配給制で、男たちが次々と戦争に取られて死んでいくのは日本とまるで同じ。日本は自分の国についての戦争教育ばかりを問題にしているが、そのときよその国がどうだったのかはあまり学んでこなかったと、自分の学生時代を振り返って思う。 奔放なロード・ゴートがかわいい。国境とか、敵味方とか、名前とか、人間の決めるものはわりかしどうでもいいものばかりだということに気がつく。 原題:Blitzcat
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1940年、第二次世界大戦中のイギリス、黒猫のロード・ゴートは不思議な第六感に導かれ、出征した飼い主を追って旅を始める。ロード・ゴートは様々な人々と出会い共に生活し、戦争で傷ついた人々の心に希望を与える。 戦争の真実がよく現れていて読みやすい本だと思います。
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