ピクニック、その他の短篇 の商品レビュー
過去を向いているな、と思う。凡庸な言い方をするが、それこそ「記憶を生き直す」ことが試みられていると。だから言ってみれば、思いつくままに書くとプルーストやゼーバルト、ナボコフが書いたような作法で自分の記憶と批評的に向き合いそこから哲学的とも言える思索・思弁へと至る。そこに官能という...
過去を向いているな、と思う。凡庸な言い方をするが、それこそ「記憶を生き直す」ことが試みられていると。だから言ってみれば、思いつくままに書くとプルーストやゼーバルト、ナボコフが書いたような作法で自分の記憶と批評的に向き合いそこから哲学的とも言える思索・思弁へと至る。そこに官能というスパイスがまぶされることで(だが、ことごとく書かれる男たちがこれまた「凡庸」な人間たちばかりに見えるのは私だけだろうか?)独自の世界が形成される。観念的・哲学的な思考とエロティックでフィジカルな描写のアマルガム、と言えると思われる
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「家族アルバム」驚いた。こういうの、書くのか。目白の長編がこんな感じなのかな。 短編の、昔話を語る「母」と「伯母」に安心感を覚える…
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幻想的な世界観を現実に見せてくれる短編集です。素敵過ぎです。 『窓』の主人公の感覚は特にフィットするものがあって好き。『月』『木の箱』『ピクニック』 暖かくて詩的です。最後でいい意味ではずしてくれるのに、違和感無くキレイにまとまっている。 『鎮静剤』はがらっと文体が変わ...
幻想的な世界観を現実に見せてくれる短編集です。素敵過ぎです。 『窓』の主人公の感覚は特にフィットするものがあって好き。『月』『木の箱』『ピクニック』 暖かくて詩的です。最後でいい意味ではずしてくれるのに、違和感無くキレイにまとまっている。 『鎮静剤』はがらっと文体が変わって、初期の村上龍氏を思い起こさせますね。 金井美恵子さんの描写は上品に少しエロいです。 『桃の園』と『既視の街』は特につやっぽい。 一人称と三人称、倒錯してますがそれが逆にこういう世界を作り出す良いエッセンスになってます
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堀江敏幸の編む金井美恵子の初期短編集。 鮮烈な色彩感覚で絵画的な美しさすら湛えた作品や、詩的イメージに富み「書くこと」そのものを問い直すボルヘスを想起させる作品、また後続する目白を舞台にした連作群に通ずる短編など多様な作品が収められている。 いずれの諸作においても、詩的感覚に律せ...
堀江敏幸の編む金井美恵子の初期短編集。 鮮烈な色彩感覚で絵画的な美しさすら湛えた作品や、詩的イメージに富み「書くこと」そのものを問い直すボルヘスを想起させる作品、また後続する目白を舞台にした連作群に通ずる短編など多様な作品が収められている。 いずれの諸作においても、詩的感覚に律せられた美しい文体を自在に駆使し、時に時空が混在し混濁して極度の抽象性を帯びた幻想性と、ぬめぬめとぬめらかで体液の匂いすら感じさせる身体感覚とが同居している。白昼夢のさなかで彷徨う、薄明と黄昏のあいだのエクリチュール。 “列車が轟音を立てて鉄橋を通過し、黄昏の最後の淡い白さが夜のなかにのみこまれ、丸い桃色がかった月が昇りはじめる。”
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タイトルと表紙にひかれて衝動買い。結果は大正解。金井美恵子さんの作品にはまるきっかけになった1冊です。本にも運命の出会いってあるんですね。収録作品はどれもお勧めですが、思考の流れを直接読むような「鎮静剤」という作品がお気に入り。
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