完全なる人間 の商品レビュー
マズローは、「欲求の5段解説」を教科書的に知っているだけで、それはなんとなくそんなものかなという感じはするものの、実証データはないわけだし、そんなに深いものとは思っていなかった。 むしろ、「自己実現」を強調することで、一種の労働強化への誘導というディスコースを作っているんじゃな...
マズローは、「欲求の5段解説」を教科書的に知っているだけで、それはなんとなくそんなものかなという感じはするものの、実証データはないわけだし、そんなに深いものとは思っていなかった。 むしろ、「自己実現」を強調することで、一種の労働強化への誘導というディスコースを作っているんじゃないかと思うくらいだった。 が、マズローの本を読まずに批判するわけにもいかないと思って、この「完全なる人間」を読んでみると事前のイメージとは違う感じで、かなり深い。 まずは、人間性心理学、そしてその始祖の一人マズローは、性善説と言われていて、この本の冒頭も「人間の本性は善である」という宣言から始まっている。 こう書かれると、そもそも人間に「本性」はあるのか?とか、善とはなにか?とか、いろいろ突っ込みたくなるんだけど、本を読み進めていくと、そんな単純な話しをしているわけではなく、哲学的にとても深いところから考えていることがわかる。 人間性心理学のベースには、実存主義や現象学があるのは、なんとなくわかってきたのだが、マズローも基本、それらをベースとしている。 そして、マズローは「悪」の存在を人間の外部に位置付けるのではなく、本性かどうかは保留しつつ、人間の内部に位置付けている。そして、この善と悪の二元論の超越みたいなことを考えているようだ。 こうなってくると、ほとんどユングの対立物の結合に近い感じ。 なんだ、そんなことだったのか、だったら、マズローは私とは、わりと近いところにいたんだな〜と。 私自身としては、「社会的構築」的な考えのほうが、しっくりしていて、マズローの本質論的だったり、西洋中心的な部分に違和感を持つんだけど、自分の考えを整理するときに対峙すべきテキストだと思った。 とはいっても、ちょっと文章が難しかったり、「昔」の議論もあるので、なかなかすべてを理解するのは難しいかな? ちなみに、「完全なる人間」の元タイトルは、"Toward a Psychology of Being"でかなりニュアンスが違う。本文にでてくる「完全なる人間」に一番近いのは、「完全なる人間性」で、原文では、"full-humanness"。 ここでのfullは、充分というか、満ち足りたというか、その可能性がしっかりと発現された、とか、そんな感じで、訳は難しいなと思うけど、「完全」ではないような気がする。 あるいは、本文中ででてくる「完全なる人間性」とか、「完全な人間性」とか、「人間」というより、「人間性」にフォーカスした表現のほうがいいのかなとか思った。
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この本の題名「完全なる人間」とは、「人類に特有な部分をすべて備えた人、よく発達をとげ、完全にはたらく人間の能力をすべて備え、どんな種類の明白な疾病、特に中心的、決定的で、人間として必要不可欠の特徴を傷つけるかもしれないような病気にもかかっていない人びとを、とりあげることができる」...
この本の題名「完全なる人間」とは、「人類に特有な部分をすべて備えた人、よく発達をとげ、完全にはたらく人間の能力をすべて備え、どんな種類の明白な疾病、特に中心的、決定的で、人間として必要不可欠の特徴を傷つけるかもしれないような病気にもかかっていない人びとを、とりあげることができる」(p229)人のことである。著者の主張は、病気を中心とした心理学から健康な人をも含めた心理学の拡張にある。 有名なマスローの欲求段階は、この本では詳しく触れられない。しかし、その最終段階である自己実現の段階については、完全な人間に到達した人の特徴として、詳しく触れられている。ただし、この自己実現というのは一般にいわれていることとは大きく異なっている。自己実現というと、「医者や弁護士になりたい」とか理想の実現のことを指すことが多い。しかし、著者は「ショッキングにいえば、自己実現する人は、自己を受け容れ、洞察力を持つ神経症者ということさえできると思う。というのは、こういういいかたは、『本質的な人間状況を理解し、受け容れる』こと、つまり、人間性のもつ『欠陥』を否定しようとするのではなく、これと立ち向い、勇気をもって受け容れ、これに甘んじて楽しみさえ見出すというのと、ほとんど同じである。」(pp162~163)とさえいう。 マスローは、フロイトと同じ神経症者の治療から理論を組み立てた、ということも興味深い。それはフロイト批判であるばかりでなく、アメリカ人からヨーロッパ文化への批判としても読み取れるように思う。
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どっちつかずの自分にマイナスの感情を持つことが多かったが、この本のおかげで解放された。 ただ、とても長い。 集中が何度も途切れた。 しかし人生を変えるような言葉がいくつも詰まっていたので…やっぱり読んでよかった。
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"瞬間を生きる哲学 <今ここ>に佇む技法"で紹介されていた、B認識の部分を拾い読み。 ノンデュアリティーに通じる至高体験の分析がおもしろかった。
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【人が何を目指して生きるのかを考える】 マズローの欲求5段階説と聞けば、誰でも一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。本書はそれに続くもので、より自己実現欲求と基本的な欲求(愛情や安心、安全など)を区別して論じたものである。 マズローは、基本的な欲求を求める行動を『欠乏動機...
【人が何を目指して生きるのかを考える】 マズローの欲求5段階説と聞けば、誰でも一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。本書はそれに続くもので、より自己実現欲求と基本的な欲求(愛情や安心、安全など)を区別して論じたものである。 マズローは、基本的な欲求を求める行動を『欠乏動機』、自己実現を求める行動を『成長動機』と名付け、両者を比較しながら話を展開していく。 面白い点は、欠乏動機と成長動機の関係性が、欠乏動機が満たされてこそ、成長動機が発生すると説いている点。また、成長動機における自己実現が天才的な人だけにもたらされるものではなく、万人にも一時的ではあるものの『至高経験(peak-experience)』を通して達成されうるものだとしたところだろう。 『自己実現』『至高経験』がどういう定義なのかは、各自検索をすれば出てくると思うので、そちらに任せたい。また、その定義はマズローのものが完全に正しいとは思えず、議論の余地はあるのだと思う。 しかしながら、例えば日常生活で、なぜ子供が一人で公園で遊んでいて、突然転んで怪我をするとすぐに母親の元に帰ってくるのか。なぜある人が自己実現に向かって進もうとせず、殻にこもったきりになっているのか。なぜ突然、自分が満たされるような感覚を覚える時があるのか。そういう理由がわかるのが、この本の面白いところである。 全ては欠乏動機と成長動機の関係性であり、また成長動機内にある至高経験に関係があるのである。 この知恵は仕事やプライベートで活かせることは間違いないであろう。人は何らかの共通したものがあって、そういうことを解き明かし、実用化していくことこそ、私は人間を知り人種・国籍・宗教・性別などに関係なく共存するには必須であると考えている。そういうものを学ぶ手段としての心理学や遺伝子学は非常に有効であるのではないだろうか。
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いわゆる人間性心理学の中心人物、欲求五段階説で有名なマズローの50~60年代の講演をもとに書籍化されたもので、近代科学主義への対抗概念は、時の主流を形成していた精神分析、行動主義ばかりでなく、サリヴァンの関係性理論の相対主義まで敵に回す威勢のよさで、やがてこれはトランス・パーソナ...
いわゆる人間性心理学の中心人物、欲求五段階説で有名なマズローの50~60年代の講演をもとに書籍化されたもので、近代科学主義への対抗概念は、時の主流を形成していた精神分析、行動主義ばかりでなく、サリヴァンの関係性理論の相対主義まで敵に回す威勢のよさで、やがてこれはトランス・パーソナルやオリエンタリズムへの展開を示唆するものでもあるのだから、唯物論などは軽く一蹴だが、どうも欠乏欲求と成長欲求の二層構造がマルクスのそれにだぶついて仕方がない。貧困や不安全や孤独がますます身近な世界。それにすらとらわれることのない実存は可能か?問題は常に刷新される。
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読んでみると、 なかなかにそうだな~と気づかされる言葉がある。 しっくりする言葉である。 目次を眺めてると気になる言葉が在ったら、 そこから目を通してみるのもいいだろう。 気に入った言葉を少し。。。 ○安全は不安と喜びの2つを持っている ○成長にも不安と喜びがある ○大人に...
読んでみると、 なかなかにそうだな~と気づかされる言葉がある。 しっくりする言葉である。 目次を眺めてると気になる言葉が在ったら、 そこから目を通してみるのもいいだろう。 気に入った言葉を少し。。。 ○安全は不安と喜びの2つを持っている ○成長にも不安と喜びがある ○大人にとっては、子どもの場合ほど、他人が重要ではなく、また重要であるべきではないのである ○知ろうとする欲求と知ることの恐れ ○安全の哲学、宗教、科学は、成長の哲学、宗教、科学よりも盲目であることが多い ○無関心や学習不振や偽ってバカを装うのは一種の防衛 ○愛情は盲目ではない ○至高経験はそれ自体目的 ○人はどうしても、罰することと罰しないこと、許すことと咎めることとを、共に持っていなければならない ○人間はさらに完全な存在になろうとするよう作られている ○人間の弱さを理解しなければ、決して人間の力を完全に理解できず、助けることもできない などなど。。。 どうだろうか・・・ 読み切れないところや、入ってこないところも多々あったが、 見直してみると、読めたりするわけで、 また、この先に今一度読み直したい一冊。
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これも読みづらい本でした。本書の言わんとしていることが理解できるレベルに私が至っていないのが現状のようです。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
沖国 1130借 マスローは『動機と人格』をはじめ多くの著書、論文を出しているが、一貫してみられるのは、精神的に健康で自己を実現しつつある人間の研究である。とくに本書においては、これまでのかれの論ずるところを、もっとも総合的、集約的に要領よくまとめあげたもので、心理学者、教育者はいうまでもなく、その他人間科学を追求しつつある学究、あるいは実際に人間の問題ととりくんでいる人びとの一読に価するものとなっています。 目次情報 第1部 心理学領域の拡大(緒言健康の心理学へ心理学が実存主義者から学び得るもの) 第2部 成長と動機(欠乏動機と成長動機防衛と成長 ほか) 第3部 成長と認識(至高経験における生命の認識激しい同一性の経験としての至高経験 ほか) 第4部 創造性(自己実現する人における創造性) 第5部 価値(心理学のデータと人間の価値価値、成長、健康 ほか) 第6部 今後の課題(成長と自己実現の心理学に関する基本的命題)
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私はこの本を三度ほど読だが、その度に勇気づけられる思いだった。論文であるにもかか わらず、人間にはこのような精神の可能性があるのかと、読む度に感動させられた。 彼はロジャーズと並んで人間性心理学の創始者であるが、この書の中にはすでに後に出現 するトランスパーソナル心理学の...
私はこの本を三度ほど読だが、その度に勇気づけられる思いだった。論文であるにもかか わらず、人間にはこのような精神の可能性があるのかと、読む度に感動させられた。 彼はロジャーズと並んで人間性心理学の創始者であるが、この書の中にはすでに後に出現 するトランスパーソナル心理学の萌芽も確認できる。 マスローによれば、人間は心理的な健康に向かって成長しようとする強い内的傾向を持っ ている。そうした可能性を完全に実現し、人格的に成熟し、到達しうる最高の状態へ達した と思われる人々のことを、彼は「自己実現した人間」と呼んだ。 彼は、たとえばアインシュタイン、シュバイツァー、マルティン・ブーバー、鈴木大拙、 ベンジャミン・フランクリン等の著名人を含む、多くの自己実現したと思われる人々を研 究した。その結果、 高度に成熟し、自己実現した人々の生活上の動機や認知のあり方が、 大多数の平均的な人々の日常的なそれとはっきりとした違いを示していることに気づいた。 彼は、そうした自己実現人の認識のあり方をB認識と呼んで、その特徴を列挙する。 彼はまた、ごく少数の「自己実現した人間」の研究だけでなく、平均人の一時的な自己実 現とでもいうべき「至高体験」の研究をも同時に行った。 両者を比較して論ずることで研 究全体を学問的に説得力のあるものにしたのである。 「至高体験」とは、個人として経験しうる「最高」、「絶頂=ピーク」の瞬間の体験。 それは、ちょっとした日常的交流のなかでも、深い愛情の実感やエクスタシーのなかでも、 芸術的な創造活動や素晴らしい仕事を完成させたときの充実感のなかでも体験される。一人の人間の人生の最高の瞬間であると同時に、その魂のもっとも深い部分を震撼させ、その 人間を一変させるような大きな影響力を秘めた体験で、予想以上に多くの人がこういう体験をもっている。 至高体験の特徴をもなすB認識のあり方について、マスローの詳細にな論述を追うこと自 体が、人間の精神の最高度の可能性を指し示され、勇気づけられる結果になる。そんな魅力 に満ちた本だ。 第2版では,「人間の成長や自己実現の研究を深めるため、より高い立場からみた「悪」 の心理学の必要性を強調している」とのこと。 私は、自分のサイトの「覚醒・至高体験事例集」を作るにあたり、マスローの研究に大き な影響をうけている。その点を「覚醒・至高体験とは?」という一文にしてサイトに掲載しているので合わせご覧いただきたい。
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