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怪奇探偵小説集(2) の商品レビュー

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6件のお客様レビュー

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蘭郁二郎の傑作、「魔…

蘭郁二郎の傑作、「魔像」を読めるのがうれしい、シリーズ第2弾。

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江戸川乱歩の「踊る一…

江戸川乱歩の「踊る一寸法師」をはじめ、甲賀三郎、角田喜久雄、橘外男らによる、日本探偵小説界に咲いた異形の花の世界。名アンソロジスト・鮎川哲也が贈る、怪奇と幻想の16篇―。

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質的などうかと思う作…

質的などうかと思う作品が多いですが、ある意味それも魅力なのかもしれません。

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他では読めない、完全…

他では読めない、完全な無名作家の作品も読める貴重なシリーズです。

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第一巻と比べると、幻…

第一巻と比べると、幻想的な作品が多く収められている。江戸川乱歩の「踊る一寸法師」は今の世の中では書けないだろうなと思う。

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2021/05/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

前作はエログロ趣味の作品が多かったような印象があり、正直、途中で辟易したが、今回はその傾向は減じられており、「皮肉な結末」ものとでも云おうか、ちょっとしたスパイスを加えたものが多かった。 収められた作品について傾向別に以下に述べていこう。 第1集によく見られたエログロ趣味・フリーク趣味の作品は今作品集では乱歩の「踊る一寸法師」、「赤い首の絵」ぐらいしかなかった。前者を読むのは2回目だが、乱歩はやはり乱歩であるという認識を強くした次第。後者は剥ぎ取った顔を使って整形した女の執念を描いた作品で、ちょっと趣味じゃなかった。 皮肉な結末とでも云うべき一捻り加えた結末を備えた作品は「悪戯」、「決闘」、「魔像」の3作。 ポーの「黒猫」のオマージュとも云うべき「悪戯」、最後に泥沼の略奪愛劇が一大詐欺事件に変わる「決闘」、最後はありきたりだが、個展に必要な最後の写真のおぞましさが怖くていい「魔像」。これらはどれも出来はよく、好感が持てた。「決闘」は怪奇小説ではないかも? 幻想味が強く、観念的な趣向の作品は「幻のメリーゴーランド」、「壁の中の男」、「喉」、「蛞蝓妄想譜」。 この中では「壁の中の男」が今になってみると怖く感じる。かつての自分の恋人と同棲した親友を祝福するために最後の命の灯火を全て投じ、自分でデザインした家をプレゼントするがそれが恋人の気持ちを引き戻すことになり、嫉妬に狂う親友は恋人を殺してしまうという話だが、この建築家の体育会系の爽やかな口調、竹を割ったような性格が後に及ぼす悲劇から考えると、それと感じさせない悪意が秘められているようであとでゾクッとした。 このカテゴリーでは他に比べると一番レベルが低いように思い、他の3作品は語るに及ばざるといった感じ。 純然たる怪異譚は「底無沼」、「葦」、「逗子物語」。 この中では短編集の末尾を飾る「逗子物語」が秀逸。趣向で云えば使い古された幽霊譚であるが、文章が格段に素晴らしいため、描写に寒気を感じさせる力があり、読んでいる最中に背筋が寒くなった。しかし、もっとも優れているのは最後の最後で幽霊に救いの手が差し伸べられるところ。逃げるように逗子を発つ主人公に付き纏う子供の幽霊。それに対し、あんな優しい言葉をかけるとは。本当にいい意味で裏切られ、胸を熱くした。 また淡々とした文体が雨中の出来事を語る「底無沼」もいい。 「葦」は素人が書いたような敬体と常体が入り混じった文章に最初は嫌悪を示したが、ありきたりながらも最後では少し感動した。結構このカテゴリーはレベルが高かった。 最後は奇妙な味とでも云うべき作品。「恋人を喰べる話」、「父を失う話」、「霧の夜」、「眠り男羅次郎」の4編。 「恋人を喰べる話」はまた人喰ものかと思ったがさにあらず、殺した恋人を埋めた庭から生えた無花果の実を恋人の血肉として食する、観念的だがストレートではないところに好感が持てた。 「霧の夜」は昔小さい頃に読んだ怖い話に似ている。浮気をする妻を標的にナイフ投げするうちに縮んで消えてしまったと話す男は自分の娘もポケットに入れて持ち歩いているというのだ。それを取り出そうとするが、同行する男は恐ろしさのあまり、逃げてしまうという正に奇妙な話。 「眠り男羅次郎」は羅次郎という男が常人とは違うスピードの世界で生きているという設定が特殊。このアイデアから誰にも見えない衆人環視の中での殺人事件を描いた。 そして本作品集でもっとも怖かったのが「父を失う話」。文字通り突然父がいなくなる話なのだが、わずか7ページで繰り広げられるある日の出来事。朝、父は髭を剃ると息子に船を観に連れて行ってやるという。愉しい遠足だったはずだがやがて父は見たこともない帽子を被ったり、メガネをつけたりして風貌が変わっていく。それにつれ、言葉遣いも変わり、息子を忌み嫌うようなことをしゃべりだす。とうとう父親は船に乗り込み、息子を置き去りにするのだった。置き去りにされた息子は税関の役人に事情を訊かれるが、どうしても父の顔が思い出せないのだ。 突如父親に捨てられる、それも理由も解らずに。これほど怖いことがあるだろうか?この理由が解らない所、これは現代の怪奇小説に通じるものがあった。 こう並べてみると第1集に比べ、格段にヴァラエティに富んでいるのが判る。しかもレベルも高いものがそろっており、粒ぞろいといってもいいだろう。 あと残るは第3集のみ。さてどんな物語を読ませてくれるのだろうか。

Posted byブクログ