日本社会の歴史(上) の商品レビュー
「日本列島に生きた人…
「日本列島に生きた人々の歴史」とでもいうべきユニークな通史.暗黙の前提にしてしまいがちな「日本(国)」「日本人」という色眼鏡をはずして,日本列島に生きた人々のダイナミックな歴史を描き出す.その史実の新しい見方には目からウロコ.
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たまたま入れた奈良の豊住書店で見つけた新古本。著者自身が「むすびにかえて」で書かれているが、社会の歴史というよりは政治の歴史が主な内容になってしまっている時代もある。さらに、江戸時代の後半からは展望という形で軽く触れられているだけだ。としても、自分の中では多くの学びがあった。だい...
たまたま入れた奈良の豊住書店で見つけた新古本。著者自身が「むすびにかえて」で書かれているが、社会の歴史というよりは政治の歴史が主な内容になってしまっている時代もある。さらに、江戸時代の後半からは展望という形で軽く触れられているだけだ。としても、自分の中では多くの学びがあった。だいたい、そんなことは当たり前のことなのだろうが、日本という国ができたと言っても、きっとそう思った人がいたというだけで、多くの日本列島に住む人々は、そんなこと関知せずに生きていたのだろう。時間的にも空間的にもずいぶんとあいまいなわけだ。いまのように、ここからここまでが日本国であるとか、誰が日本人であるとかはっきりしていたわけではないのだろう。それから時代区分にしてもそうだ。語呂合わせとかで年台を覚えていたとしても、そこからはっきり鎌倉時代や室町時代が始まるわけでも終わるわけでもないのだろう。だいたい、京都で元号を変えたとしても、他の場所ではそれに従わないで、自分勝手に決めていたというようなことも、何度もあるようだ。そんなこと、日本史の勉強をちゃんとしている人は分かっているのかもしれないが、僕にとってはとても新鮮な話だった。さて政治の歴史を読んでいても事実の羅列で頭をかすめていくだけなのだけれど、大河ドラマで見ている時代だけは立体的に浮き上がってきた。道長の時代、鎌倉殿の時代、真田丸の時代(真田という名前は本書には登場しなかったと思うが)。西郷どんの時代はさらっとしか触れられていないので立ち上がっては来なかったが。明治についてはかなり批判的に書かれている。いろいろな仕組みを西欧から取り入れて、追いつけ追い越せとやってきたように言われることが多いが、たとえば経済についての用語など、市場とか手形とか株式とか全く翻訳語がなく、日本で独自にそういう考え方をしていたのだ。こういう点は梅棹忠夫もよく言っていた。大陸の西の端と東の端で同じように歴史は進んでいったと。それから、海上を通してのいろいろなやりとりが早い時代から頻繁に行われていたという。また、百姓というのは農業をする人のみを指すというわけではなかったという。このあたりは網野善彦の他の著書でも読んでいた内容だが、復習になった。そして今回一番の疑問点として出てきたのが、定子や彰子の読みについてである。「さだこ」「あきこ」とふりがながある。それはどこまで一般的なのであろうか。先日、源氏物語を専門にされている先生が、大河ドラマ「光る君へ」で「さだこ」「あきこ」と呼んでいるが、そんなことはあり得ないです、とはっきりおっしゃっていた。次に会ったときに質問する材料としておこう。いやあ、まだまだ知らないことがいっぱいあっておもしろい。当たり前だけれど。
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久しぶりに日本史の通史を読んでいます。それも,網野史学です。 網野さんの本は,さすがに視点が違います。それは初っぱなからわかります。網野さんは「はじめに」で次のように述べています。 「日本社会の歴史」と題してこれからのべようとするのは、日本列島における人間社会の歴史であり、...
久しぶりに日本史の通史を読んでいます。それも,網野史学です。 網野さんの本は,さすがに視点が違います。それは初っぱなからわかります。網野さんは「はじめに」で次のように述べています。 「日本社会の歴史」と題してこれからのべようとするのは、日本列島における人間社会の歴史であり、「日本国」の歴史でもないし、「日本人」の歴史でもない。これまでの「日本史」は、日本列島に生活をしてきた人類を最初から日本人の祖先ととらえ、ある場合にはこれを「原日本人」と表現していたこともあり、そこから「日本」の歴史を説きおこすのが普通だったと思う。いわば「はじめに日本人ありき」とでもいうべき思い込みがあり、それがわれわれ現代日本人の歴史像を大変にあいまいなものにし、われわれ自身の自己認識を、非常に不鮮明なものにしてきたと考えられる。 そして,そのことば通り,まだ日本ではなかったころの日本社会の歴史を,東アジア全体の歴史的地理的観点から書き進めてくれています。だから,もう40年以上前に習った教科書で学んだだけの断片的なできごとでできあがっているわたしの中の日本の歴史が,世界とつながりながらつながっていく楽しさがありました。 本著作は上中下の3部作ですが,第3部の最後までいっても17世紀前半までらしいです。どんな話題が展開されるか,続編がたのしみです。
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さすがに網野氏の書く歴史は、表層だけではなく、社会の深層からの分析が多く、新鮮な感覚で読むことが出来る。この巻は、有史以前の日本列島の成り立ちから当時の人類の動きにまで話が及ぶ。しかし、逆に人物像としては、大化の改新後の中大兄皇子が自ら天皇位に就かず、対立する古人大兄王子、蘇我倉...
さすがに網野氏の書く歴史は、表層だけではなく、社会の深層からの分析が多く、新鮮な感覚で読むことが出来る。この巻は、有史以前の日本列島の成り立ちから当時の人類の動きにまで話が及ぶ。しかし、逆に人物像としては、大化の改新後の中大兄皇子が自ら天皇位に就かず、対立する古人大兄王子、蘇我倉山田石川麻呂、孝徳天皇などを排斥していく過程の描写は詳しく、天智天皇は陰湿な人物との印象を受けた。日本の古代は8世紀に多く登場した女性天皇の存在に見られるように女性の社会的地位が外国と比べて相対的に高かったとの説明は現在と比べて、皮肉なことである。
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中世を主要なフィールドとして、従来の「日本史」の枠組みの見なおしをおこない、「網野史学」と称される新しい観点を提出したことで知られる著者による日本通史の試みです。ただし17世紀の後半から現代にかけては、「展望」というかたちで著者の問題意識が示されるにとどまっています。上巻では、古...
中世を主要なフィールドとして、従来の「日本史」の枠組みの見なおしをおこない、「網野史学」と称される新しい観点を提出したことで知られる著者による日本通史の試みです。ただし17世紀の後半から現代にかけては、「展望」というかたちで著者の問題意識が示されるにとどまっています。上巻では、古代から平安時代初期までがあつかわれています。 著者は「はじめに」で、従来の日本史のとらえかたが「はじめに日本人ありき」というべきものになっており、そのことがわれわれの歴史像をあいまいなものにしてきたと述べています。著者は、古代から日本列島とその周辺の地域とのあいだに切り離しがたいつながりがあったことに注目するとともに、日本列島の西と東、あるいは東北・北海道や沖縄の歴史のあゆみにも目くばりをおこない、日本の歴史がまさにその展開を通じてしだいにかたちづくられていったものであることを論じています。
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網野善彦さんの日本の歴史概説書。 従来の日本史では捉えられなかった事象にスポットを当てるという意味を込めて、タイトルを「(日本列島の)日本社会の歴史」にしたそうである。 上中下巻に分かれており、上巻は人類誕生〜9世紀の弘仁貞観の頃まで。 古墳や鉄器などへの朝鮮半島や大陸の影...
網野善彦さんの日本の歴史概説書。 従来の日本史では捉えられなかった事象にスポットを当てるという意味を込めて、タイトルを「(日本列島の)日本社会の歴史」にしたそうである。 上中下巻に分かれており、上巻は人類誕生〜9世紀の弘仁貞観の頃まで。 古墳や鉄器などへの朝鮮半島や大陸の影響、中央に従わない東北地方への遠征など、周辺への視点が多いのが網野さんらしい。 高校日本史的な知識が多いので、日本史を復習したい方にもおすすめである。
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古代から九世紀まで。 それにしても、古代社会の歴史をこんなに断定的に言い切るのも凄い。最近の研究で根底から覆される記述は多いのでは?
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有史以前から平安初期まで。 日本の歴史ではなく、日本社会の歴史というタイトルにするだけあり、社会の運用と展開に焦点が当てられ、記述が進められている。日本社会と稲作の深い結びつき、それを基盤とした朝廷の統治形態について言及しつつも、決してそれだけでは片づけられない多様な要素の集合体...
有史以前から平安初期まで。 日本の歴史ではなく、日本社会の歴史というタイトルにするだけあり、社会の運用と展開に焦点が当てられ、記述が進められている。日本社会と稲作の深い結びつき、それを基盤とした朝廷の統治形態について言及しつつも、決してそれだけでは片づけられない多様な要素の集合体が古代日本であったことも意識的にしっかりと書き出している。
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日本人でも日本国でもなく、“日本社会“に関する通史。上巻は9世紀末、宇多天皇の治世まで。文化や技術、制度がどのよう変遷してきたかがよくわかる。
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☆☆☆☆ この程度の深さで、日本の成り立ちから平安時代初期までを振り返れたこの一週間は貴重な時間だった。 「日本」という国の成り立ち、大陸(中国)や半島(朝鮮)との関係やその力関係による緊張感に影響される日本のありようは、昔に学んだ学校での歴史とは違った種類の知識を与えてくれた...
☆☆☆☆ この程度の深さで、日本の成り立ちから平安時代初期までを振り返れたこの一週間は貴重な時間だった。 「日本」という国の成り立ち、大陸(中国)や半島(朝鮮)との関係やその力関係による緊張感に影響される日本のありようは、昔に学んだ学校での歴史とは違った種類の知識を与えてくれた。 また、国の型ができ、その組織が作られ、複雑になっていく過程では、権力闘争が繰り返されていく。穏やかな時代の印象持っていた平城、平安時代においても、どの時代、どの国の歴史同様の血生臭い権力欲をみせられた。 この本が優れているのは「日本社会」の歴史を描いているところで、歴史のメインストリームに主眼が置かれているわけではなく、読んでいると「社会」の動き、そのそれぞれの時代を暮らす人々の姿が想像できるところが良い。(これはゆっくりと時間をかけて読んだために得られたのかもしれない) でも、次に『日本社会の歴史』(中)・(下)を読むのはいつになるかはわからないなぁ。 網野善彦氏は、この膨大な歴史のなかから、よく社会を見つめるための筋を提供してくれている。 2017/04/22
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