東西交渉史論 の商品レビュー
著者の歴史的論文が一冊で読める!ということで、全集を読破していれば必要ないかもしれないけれども、東西交渉史というテーマで抽出された文章をまとめて読めるのはとても良いこと。今となっては文体やらなにやら古臭く感じるかもしれないが、史料を収集して丹念に読みといていく過程は普遍的なもので...
著者の歴史的論文が一冊で読める!ということで、全集を読破していれば必要ないかもしれないけれども、東西交渉史というテーマで抽出された文章をまとめて読めるのはとても良いこと。今となっては文体やらなにやら古臭く感じるかもしれないが、史料を収集して丹念に読みといていく過程は普遍的なものです。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
1998年刊。言わずと知れた東洋史学の大家が、1935年から50年頃までに叙述した、東西交流史に関する論考13編。戦時中、この大家にして満州国・蒙彊政権等の成立を当該地域の民意の反映とする陥穽に囚われているのは、少々驚くが、過去の事象分析は鋭い。特に東西交流の影にある南北対立の視角には唸らされる。また、北宋時代から元・明と続く時代に、①物産購入のため銀が西から東へ移動し、中国が銀保有国化した点、②石炭使用が西よりも早期に実施され、鉄生産が増大するといった、当時の東洋の優勢ぶりの根拠が示される点も興味深い。
Posted by
今日のシリアの状況を、そこが都市文明発祥地だとする著者の論から考えれば感慨一入、また、南沙諸島の問題についても本著の華僑についての言及は極めて有益だと思う。華僑は果たして「中国人」と言えるのか、という問題。
Posted by
古本で購入。 宮崎市定の著した、東西交渉史に関する論説を収めた本。 礪波護の編集した文庫オリジナルで、全13篇の文章が以下のようなグループで選ばれている。 1.1950年代の概説類 2.1940年前後の学術論文 3.1943年刊行の『支那周辺史』(白揚社)収録の講座的文章...
古本で購入。 宮崎市定の著した、東西交渉史に関する論説を収めた本。 礪波護の編集した文庫オリジナルで、全13篇の文章が以下のようなグループで選ばれている。 1.1950年代の概説類 2.1940年前後の学術論文 3.1943年刊行の『支那周辺史』(白揚社)収録の講座的文章 4.1947年・1965年発表の読みやすい学術論文 読んでいて特に印象的なのは、第2グループとして収められている「条支と大秦と西海」だ。 後漢は和帝の時代、西域都護の班超により遠くローマへと派遣された甘英は、シリアに辿り着くも地中海を前に引き返してしまう―という、世界史の教科書に当たり前のように載っているこの「事実」が、実は宮崎市定によって「通説」とされたものだとは、不勉強にして知らなかった。 すなわち「条支=シリア」「大秦=ローマ」「西海=地中海」という比定を、先行研究を下敷きにしつつ史料検証によってその誤りを指摘していくという論文なのだ。 本人も「生涯の傑作」と自負する論文だったそうで、綿密な検証と1937年の西アジア旅行の体験を活かした、何ともパワーのある文章。 ちなみにこの西アジア旅行について記した『西アジア遊記』(中公文庫)も、抜群におもしろい。 本書のテーマは、「十字軍の東方に及ぼした影響」にあるこの部分だろう。 「世界が一つだといえば昔から一つであり、一つでないといえばいまだに一つになっていない。凡て事物は量的に観察さるべきである。古代には古代的な、中世には中世的な、近世にはまた近世的な東西関係の発展がある。東西は互いに影響し、影響されつつ発展してきたのであって、問題はその仕方、その程度にあるというべきである」
Posted by
- 1